1. 「梅見」の意味と由来とは?

まずは日本人として知っておきたい梅見の基礎知識を紹介する。詳しい意味や由来、開花の時期など、役立つ知識を詳しく解説しよう。
梅見の意味と由来
梅見とは名前の通りに梅を見ることだ。同じ意味がある言葉として梅を鑑賞する「観梅(かんばい)」がある。現在だと花見は桜を楽しむという使い方が一般的だが、昔は花見といえば梅を鑑賞する梅見を指すものだった。梅はもともと中国の花であり、梅見の行事も中国から日本に伝来したとされている。奈良時代の貴族の間では、梅を鑑賞する梅見が主流だった。
梅から桜の花見へと変化
桜の花見が注目され始めたのは平安時代になってからとされる。中国文化の輸入を目的とした遣唐使が廃止されたことで、日本独自の文化が発展。嵯峨天皇が開催した「花宴の節」で桜の花見をした記録に残っている。平安時代までは貴族の楽しみだった桜の花見だが、鎌倉時代や安土桃山時代に町人や武士の間でも広まり、現在の花見の原型になったという。
梅見の時期は?
1月下旬~5月上旬までが梅の開花時期だ。日本は縦に長い形をしているので、開花時期も地域によって大きな差がある。さらに気象条件によっても左右されるので、梅見をしたいなら適した時期をチェックしておくことが重要だ。気象庁では都道府県別の梅の開花日が確認できるため、梅見を検討している方は参考にしてほしい(※1)。
2. 「梅見」以外の早春の季語は?

梅見は早春の季語に分類できる。梅見以外にどのような春の季語があるのか詳しく解説しよう。
早春(そうしゅん)
早春は春が始まった頃を指す季語だ。同じ意味を持つ言葉として「初春(はつはる)」「浅春(せんしゅん)」もある。2月いっぱいくらいが早春という考えが一般的だ。
春来る(はるきたる)
二十四節気の一である立春を表している。立春は太陽の黄経が315度になった時点のことで、毎年違いはあるがだいたい2月4日くらいだ。春の始まりや兆しを感じさせる季語とされる。
梅見月(うめみづき)
梅見月とは月の満ち欠けを基準にする「陰暦」2月の別名だ。時候のあいさつとして「梅花の候(ばいかのこう)」と使われるように、梅は2月を象徴する花とされている。「梅津月(うめつつき)」「梅月(うめつき)」という呼び方もあるので、ぜひ覚えてほしい。
梅東風(うめこち)
春に吹く東の風を梅東風という。東風は条件によっていろいろな名前に変化するため、同じ春に吹く東風として「桜東風」や「雲雀東風」もチェックしておこう。桜が咲く季節に吹く桜東風、立春が過ぎた頃に吹く雲雀東風など、咲いている花や時期によって名前が変化する。
薄氷(はくひょう)
薄氷とは薄く張った氷のことだ。「うすらび」や「うすらい」といった読み方もできる。早春は冷え込むことも多く、朝に水たまりなどが凍った様子を表している季語だ。
3. 「梅見」が使われている俳句4選

梅見や梅見に関係する季語が使われている俳句や和歌をまとめた。有名な歌を学ぶことで、当時の情景や先人の感情を知るきっかけになるだろう。
とふ人もなき古郷の梅見月風のなさけを袖にしるかな
室町時代の歌学書である「蔵玉集(ぞうぎょくしゅう)」にある和歌だ。蔵玉集では草木や鳥獣、月の異名などを詠んだ歌を収集して考証を加えている。
御秘蔵に墨を摺らせて梅見哉
江戸前期の俳人である「宝井其角(たからい きかく)」が詠んだ梅見の俳句だ。御秘蔵(ごひぞう)とは大切にかわいがって育てた人という意味がある。
大空のおとや知るらん梅津月いづくに聞くも風匂ふころ
陰暦二月の異名である梅津月を使用。室町前期に執筆された著者不明の歌学書「莫伝抄(ばくでんしょう)」に記載されている。
わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れくるかも
梅見の風景を歌っており「集う園に梅の花が散り、天から雪が流れてくるようだ」という意味がある。古代の和歌集である「万葉集(まんようしゅう)」に収められた歌だ。
結論
梅見は奈良時代から始まった風習だ。現在では花見といえば桜だが、昔は梅を見て楽しんでいたとされる。控えめで美しい梅の花を鑑賞して、昔の花見に思いをはせてみよう。春の訪れを知らせてくれる梅の花を鑑賞しつつ、日本の歴史を感じてほしい。また、梅見と同じ春の季語である、梅見月や梅東風を確認すれば知識を深められる。先人が残した俳句や和歌を詠んでみて、当時の風景を思い浮かべてみるのも面白いだろう。