目次
1. 御香典・御仏前・御霊前の違いとは?

実際に分かりにくい「御香典」「御仏前」「御霊前」はどのような違いがあるのだろうか。御香典・御仏前・御霊前はそれぞれ意味や使用するタイミングに違いがある。また、宗派によっても状況が変わってくるため、それらの表書きを正しく使う場合には、故人の宗派や宗教をあらかじめ確認できるとなおよいだろう。
御香典の意味
香典とは「香」が線香を指し、「典」はお供え物を指す。つまり、故人を偲んで線香の代わりに供えるものといった意味があるため、葬儀の際に持参する香典(現金)だけではなく、花なども指す言葉である。そういった言葉の成り立ちから、御香典は御仏前・御霊前と違い、故人の仏教の宗派が分からなくても表書きに使用できるという便利な面がある。
御仏前の意味
御仏前は故人が仏となった四十九日後から使用する。そのため、基本的に新盆や一周忌法要、三回忌法要などの法事の際に使うと覚えておこう。「仏」の字は「佛」と書かれる場合もあるので知っておきたい。こちらも亡くなった後に仏になるとされる仏教のみに使われる表書きなので、キリスト教や神道での葬儀では使わない。
御霊前の意味
御霊前は文字通り、故人の霊の前に供えるという意味がある。仏教のほとんどの宗派では亡くなると霊となり、仏になるための修行を終えた四十九日後に仏になるとされる。そのため、通夜や葬儀・告別式など四十九日を済ませるまでの期間は「御霊前」を使用するのが正しい。ただし、使うことのできない宗教・宗派もあるので注意が必要だ。
2. 宗教別に見る御仏前と御霊前の違い

故人の弔い方は同じ仏教であっても地域や宗派などによって異なる。また、日本では仏教式の葬儀が多いため意識することが少ないが、キリスト教や神道では御香典や御仏前・御霊前の扱いにも違いがある。
仏教の宗派による違い
仏教では基本的に四十九日を終えた後に仏になるとされるため、四十九日後は御霊前ではなく御仏前となる。しかし、浄土真宗や真宗(真宗大谷派)では、亡くなった時から「霊」ではなく「仏」になるとされているので、通夜や葬儀においても御霊前ではなく御仏前を使用するのが正しい。
神道の場合
「寺社仏閣」とひとくくりにされがちな仏教と神道だが、御香典や御霊前といった表書きに関しては大きな違いがある。神道における葬儀は、故人を仏の元や天に送り出すといったセレモニーではなく、子孫繁栄の守護神として故人を奉るための儀式である。仏教の御香典の代わりになるのが、神様に納める「玉串料」である。「玉串」は神様に捧げる榊の枝のことを指し、この玉串に代わりに納める金品のことを指すため、実は葬儀だけでなく七五三やお宮参りなどの慶事にも使われる。不祝儀袋は慶事とは異なり、黒か双銀の結びきりの水引が付いたものに表書きをして使用する。
キリスト教の場合
キリスト教では故人がなくなった時に天に召されると考えられているため、「御霊前」は使用せず、「御花料」という書き方をする。キリスト教でもプロテスタントとカトリックの宗派によって葬儀の進め方の違いがあるが、どちらの宗派でも「御花料」という表書きが使用できる。不祝儀袋はキリスト教専用のものがあるが、なければ白無地の封筒に表書きをしても構わない。
結論
「御香典」「御仏前」「御霊前」の違いについて解説した。訃報の折には何よりも故人を偲ぶ気持ちが一番大切だが、通夜や葬儀など厳粛な場ではマナーも気をつけておきたい。御香典、御仏前、御霊前の違いについても大人の知識として使い分けられるとよいだろう。