1. 洗濯機の「水抜き」とは?
洗濯槽や給排水ホースに残っている水を抜く作業のことを水抜きという。日常において洗濯機を使う分には必要ない作業だ。だが引っ越しなどで洗濯機を移動させる場合、運搬中に水が垂れて作業員やほかの荷物、床や荷台などが濡れてしまわないよう水抜きをするのが一般的である。
2. 洗濯機の水抜きをするタイミングと所要時間
水抜きをするタイミングは大きく2パターンある。それぞれ詳しく見ていこう。
引っ越しや買い替えなどで洗濯機を移動する前日
引っ越しにともなう移動や、買い替えにともなう処分の際など、洗濯機を移動する必要があるときは水抜きをする。たとえば引っ越し業者などから「前日までに」済ませておくよういわれることがある。当日では水が垂れることがあるためだ。なお水抜きをしたあとは洗濯できないため、数日前など早くやりすぎるのもNGだ。
冬場などで水道管が凍結しそうなとき
外気温が氷点下になる時期は水道管の凍結に注意が必要である。水道管が凍結すると水が使えなくなるうえ、水道管そのものが破裂してしまうこともある。解氷作業や修理を業者に依頼しようにも、近所で多発していれば長時間待つこととなるし、それなりに費用も発生する。そうならないためにも、凍結が予想されるときはあらかじめ水抜きをしておくとよい。
水抜きにかかる時間はどれくらい?
所要時間はさほどかからない。引っ越しにともなうごく普通の水抜きなら30分もあれば十分終えられるだろう。ただし慣れていない方や初めての方は手間取ることも想定し、余裕をもって1時間ほど見ておくとよい。
3. 洗濯機の水抜きをする前の確認事項と必要な道具
洗濯機の水抜きは難しくはないが、作業するにあたっていくつか確認しておいたほうがよいことがある。準備しておきたい道具とあわせて解説しよう。
水に濡れて困るものはないか確認する
水抜きをしている最中などに、水が垂れることがある。引っ越し前はとくに多くのダンボール箱が部屋中に積まれているはずだ。うっかり濡らさないよう、移動させておくとよい。同様に電化製品なども洗濯機の周辺に置かないように気をつけよう。
取扱説明書を確認する
洗濯槽や給排水ホースの水を抜くという作業自体は同じだが、手順や操作方法などはメーカーあるいは洗濯機の型番などによって異なる場合がある。故障や思わぬトラブルを避けるためにも、取扱説明書は事前に必ず確認しておこう。
タオルや洗面器、養生テープを用意する
給排水ホースには水が大量に残っているわけではない。そのため蛇口をしっかり閉めておけば深刻な浸水被害を被ることはないはずだ。だが少量とはいえ水が垂れるおそれはある。バスタオルなどやや大きめのタオルや、洗面器あるいはバケツなどは用意しておこう。また外した給排水ホースや細かいパーツなどを留めておくための養生テープもあると便利だ。
必要に応じてドライバーを用意する
ネジで固定するタイプの給水ホースだった場合、外す際にドライバーが必要になる。お使いの洗濯機の給水ホースと蛇口の結合部分を確認し、必要に応じて用意しておこう。
4. タテ型洗濯機の水抜き方法
それでは、洗濯機の水抜き方法を解説していく。本稿では一般的な手順を紹介するが、上述のようにメーカーや機種で異なる場合がある。先に必ず取扱説明書を確認し、本稿で紹介する手順と異なる場合は取扱説明書に従って作業してほしい。
タテ型洗濯機の水抜き方法
- 洗濯槽を空にする
- 給水ホースがつながっている水道の蛇口を閉める
- 洗濯機の電源を入れ、標準コースでスタートボタンを押す
- 30秒〜1分ほど回したところで一時停止し、電源を切る
- 洗面器(バケツ)を下に置き、給水ホースを蛇口から取り外す
- 洗濯機側の給水ホースも取り外す
- 再び洗濯機の電源を入れ、最短コースで脱水をする
- 洗濯機を止めてコンセントから電源プラグを抜く
- 洗濯槽内に残っている水分をタオルなどで拭き取る
- 給水ホースやネジなどはまとめて洗濯槽に入れてテープで固定する
- 洗面器(バケツ)を置き、排水口から排水ホースを抜く
- 排水ホースの中の水を出し切る
- 排水ホースの先端をタオルで包み、養生テープで洗濯機の側面に固定する
給水ホース・洗濯槽・排水ホースの順に水を抜いていくという流れだ。やや手順は多いが、難しい作業ではないので安心してほしい。
水抜きに失敗しないためのコツ
洗濯機の給水ホースがつながっている蛇口は、普段開きっぱなしにしている方も多いだろう。蛇口を閉めずに給水ホースを抜いてしまうと大惨事になりかねないため、必ず閉めることだ。また給水ホースを外す際、中に少量の水が残っていることも想定して洗面器を下に置くとともに、タオルを添えて取り外そう。排水ホースは蛇腹(ジャバラ)状のため中に水分が残りやすい。可能であれば洗濯機を少し傾けるなどして、できる限り中の水を出すとよい。
水抜き後、洗濯機を持ち上げるとチャプチャプ音がすることがある。これは洗濯機のバランスを取るための「液体バランサー」や「バランスリング」と呼ばれる水だ。洗濯機になくてはならない水なので気にする必要はない。
水抜き後、洗濯機を持ち上げるとチャプチャプ音がすることがある。これは洗濯機のバランスを取るための「液体バランサー」や「バランスリング」と呼ばれる水だ。洗濯機になくてはならない水なので気にする必要はない。
5. ドラム式洗濯機の水抜き方法
ドラム式洗濯機の場合も、基本的な流れは同じと考えてよい。ただしタテ型洗濯機と異なるのは糸くずフィルターの水も抜く必要がある点だ。
ドラム式洗濯機の水抜き方法
- 洗濯槽を空にする
- 給水ホースがつながっている水道の蛇口を閉める
- 洗濯機の電源を入れ、標準コースでスタートボタンを押す
- 30秒〜1分ほど回したところで一時停止し、電源を切る
- 洗面器(バケツ)を下に置き、給水ホースを蛇口から取り外す
- 洗濯機側の給水ホースも取り外す
- 再び洗濯機の電源を入れ、最短コースで脱水をする
- 糸くずフィルターの中の水を取り除く
- 洗濯機を止めてコンセントから電源プラグを抜く
- 洗濯槽内に残っている水分をタオルなどで拭き取る
- 給水ホースやネジなどはまとめて洗濯槽に入れてテープで固定する
- 洗面器(バケツ)を置き、排水口から排水ホースを抜く
- 排水ホースの中の水を出し切る
- 排水ホースの先端をタオルで包み、養生テープで洗濯機の側面に固定する
8番目の手順に「糸くずフィルター」の水抜きが加わっただけだ。フィルターのつまみを緩めると水が垂れてくるので、洗面器などを用意して受けよう。また必ず給水ホースと排水ホースの水抜きの間に行うようにと覚えておいてほしい。
6. 凍結防止のための洗濯機の水抜き方法
続いて、水道管の凍結を防止するための洗濯機の水抜き方法を見ていこう。北海道や東北、北陸など水道管凍結のおそれがある地域では「水抜き栓」が設置されているのが一般的だ。その場合、以下の手順で水抜きできる。
凍結防止のための洗濯機の水抜き方法
- 給水ホースがつながっている水道の蛇口を閉める
- 水抜き栓を、水抜きができる位置にくるように操作する
- 給水ホースを外し、蛇口を開けて水道管の中の水を排出する
- 蛇口を閉める
以上が凍結防止のために行う洗濯機の水抜き方法だ。水抜き栓の種類によってやや変わるが「レバーを水抜き用の方向に倒す」「ハンドルを水抜き用方向に回す」などとすればできるはずだ。給水ホースを外す際は、水が出てくることがあるため洗面器やタオルを用意しておくとよい。
なお蛇口の先端につまみ(逆止弁)が付いているときは、水道管の水抜きの際につまみを押し上げると水が出てくるので気をつけよう。洗濯槽内や排水ホースの水も気になるようであれば、上述した手順で水抜きをしてこう。
なお蛇口の先端につまみ(逆止弁)が付いているときは、水道管の水抜きの際につまみを押し上げると水が出てくるので気をつけよう。洗濯槽内や排水ホースの水も気になるようであれば、上述した手順で水抜きをしてこう。
水道管やホース内の水が凍結していた場合の対処法
凍結した水道管に直接熱湯をかけると破裂などのおそれがあり大変危険だ。タオルを被せてからかける、あるいは沸騰後しばらく経ってからかけるなどしよう。給水ホース内の水が凍結することもある。その場合、まずは水道の蛇口を閉めて給水ホースを取り外す。次に給水ホースをぬるま湯などに浸しゆっくり解凍させるとよい。凍結したままの給水ホースを曲げると破損するおそれがあるので気をつけよう。排水ホースが凍結したときは、ドライヤーなどで温風を当てるなどして溶けるのを待とう。
7. 水抜きした洗濯機を新居に持ち込む際の注意点
洗濯機の水抜きをするということは、引っ越しなどで移動する必要があるケースだ。せっかくなので、新居に洗濯機を搬入する際の注意点もお伝えしておこう。
洗濯機が通れる搬入経路か
エントランスは問題ないかもしれないが、エレベーターや共用廊下の幅、玄関から洗濯機置き場までの幅は、洗濯機が問題なく通れる幅になっているか確認しておこう。階段を使う際も、障害物がないかなど忘れずに確認しておくことだ。搬入経路が確保できない場合クレーンで吊り上げるといった方法もあるが、数万円かかる場合もある。年式によっては買い替えを検討したほうがよいかもしれない。
洗濯機パン(防水パン)のサイズは合うか
洗濯機と床の間に設置し、水漏れや結露などから床を守るためのものが洗濯機パンまたは防水パンと呼ばれるものだ。64cm四方の正方形のほか、幅74×奥行64cm、幅80×奥行64cmといったサイズがある。念のためお使いの洗濯機がのせられるか確認しておこう。
排水口や蛇口の位置は問題ないか
排水口の位置によっては、排水ホースが折れてしまい正常に排水できない場合がある。水漏れの原因となるため、位置は必ず確認しておこう。洗濯機の真下などに排水口がある場合は、洗濯機をかさ上げするためのゴムなどを設置するとよい。
付属品はきちんとそろっているか
給水ホース、ナットやネジ、糸くずフィルターやホースバンドなど細かいパーツはすべてそろっているか確認しておこう。一箇所にまとめて箱に入れる、洗濯槽に入れて養生テープで固定するなどしておくと紛失のリスクを低減できる。
洗濯機は水平に設置しているか
洗濯機が斜めになっていたりガタついたりしていると、故障や水漏れなどを招く場合がある。引っ越し業者に設置してもらった場合でも、念のため水平になっているか確認しよう。
8. 引っ越し先で自分で洗濯機を取り付ける方法
引っ越し業者ではなく自分で洗濯機を取り付けることもあるだろう。買い替えたときなども想定し、手順を覚えておくとよい。
洗濯機の設置方法
- 洗濯機置き場に洗濯機を設置する
- 排水ホースを洗濯機に取り付ける
- 排水ホースと排水エルボをつなぎ、排水口に取り付ける
- コンセントにアース線を取り付ける
- 給水ホースを蛇口と洗濯機に取り付ける
- 蛇口を開けて試運転し、問題ないことを確認する
一般的にはこの手順で洗濯機を設置できる。ただし先に必ず取扱説明書を確認し、上記と異なる手順の場合はそちらに従ってほしい。とくに給水ホースと蛇口はしっかり結合しているか、排水ホースは折れ曲がっていないかなどはきちんと確認しておこう。
9. 洗濯機の水抜きや設置を業者に頼んだ場合の費用
引っ越しや買い替えなどにともなう洗濯機の水抜きを業者にお願いした場合、あるいは取り外しや新居での設置をお願いした場合などはいくらかかるのだろうか?
数千〜1万円程度が目安
業者によって異なるほか、タテ型かドラム式かなどによっても変わってくるが、おおよそ数千円から1万円程度を見ておこう。なお水抜きは引っ越しの際に無料で行ってくれ業者も多いので、事前に確認しておくとよい。
10. 洗濯機を新居に持っていくべきか迷ったとき
今お使いの洗濯機を水抜きして新居に持っていくべきか、処分あるいは買い換えるべきかなどで迷うこともあるだろう。
洗濯機の寿命は?
洗濯機には「設計上の標準使用期間」が定められていることがほとんどだ。7年としているメーカーが多い。平均寿命は10.8年ともいわれているが、7年を超えるとメーカーが部品を保有していないことも考えられる。そのため7年を目安にするとよいだろう。
新居に持っていくべきかどうかの判断基準
お使いの洗濯機が6年や7年など設計上の標準使用期間に近いときは、引っ越しついでに買い替えを検討してはいかがだろうか?せっかく苦労して運んでも、すぐに故障などで寿命を迎えてしまえばまた処分(搬出)や設置といった手間および費用がかかってしまうことになる。心機一転して新しい洗濯機で新生活をスタートさせるのもおすすめだ。
洗濯機を処分する場合の費用は?
洗濯機は家電リサイクル法に則って処分する必要がある。その際リサイクル料金がかかるので覚えておこう。料金はメーカーや型式などによって変わるが、おおよそ2,500円程度が目安となる。ただしこれ以外に運搬費用なども発生する。業者によって変わるが数千円程度を見込んでおくとよいだろう。また使えそうな洗濯機であれば、リサイクルショップに買い取ってもらったり、フリマアプリを使って売却したりといった方法もある。
結論
洗濯機の水抜きが必要になるのは多くが引っ越しや買い替えのときだ。また寒い地域などでは冬場の凍結対策として行う場合もある。とくに引っ越しや買い替えにともなう水抜きは、頻度がそれほど高くないため分からないという方も多いだろう。いざというときに困らないためにも、本稿で紹介した水抜き方法はぜひ覚えておくとよい。