目次
- 1. 炊飯器の保温の温度は何度?メーカー別に解説
- 2. 多くの炊飯器の保温温度が約60〜75℃である理由
- 3. 炊飯器の保温の温度は設定変更できる?
- 4. 炊飯器でご飯を美味しく保温できるのは何時間まで?
- 5. 炊飯器の保温にかかる電気代は?
- 6. 炊飯器の保温の温度は「低温調理」にもピッタリ
- 7. 炊飯器の保温は温度や時間が重要!ご飯を美味しくいただこう
- ※1:独立行政法人 国民生活センター|電気ジャー炊飯器での保温によりご飯から腐敗臭が発生
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20180614_3.pdf
1. 炊飯器の保温の温度は何度?メーカー別に解説

保温温度が何度に設定されているかは炊飯器のメーカーあるいは機種・型番などで異なる。そのため一例となってしまうが、各メーカーの例を紹介しよう。
タイガー
シンプルなマイコン式から蓄熱性の高い土鍋釜を採用したモデルまで、タイガーの炊飯器はラインアップが豊富だ。公式サイトによれば保温温度は約72℃である。内ぶたに親水加工が施された「つや艶内ふた」採用モデルでは、水分の膜が保温時のご飯の乾燥を防ぎしっとりさをキープできる。
日立
日立の炊飯器といえば、鉄とアルミを組み合わせることで、お米ひと粒ひと粒に大火力の熱を加える「沸騰鉄釜」が有名だろう。圧力式IHタイプおよびIHタイプの保温温度は「保温低(保温1)」で平均約64℃。炊飯直後は熱いが約50〜55℃まで温度が下がり、以降6時間ごとに約74℃になるよう加温する。一方「保温高(保温2)」は約74℃をキープする。おひつ御前タイプの炊飯器(2号炊き)は、6時間まで約74℃を維持する仕様となっている。
パナソニック
パナソニックの炊飯器は、お米の鮮度や銘柄などによる炊き分けと、炊き分けを可能にする独自の技術を搭載しているのが特徴だ。保温温度は出荷時に60℃に設定されている。とくに役立つのが「スチーム保温」機能だろう。保温ご飯に見られる乾燥や黄ばみ、嫌なにおいなどを抑え、炊きたてに近い美味しさをキープしてくれるという。
シャープ
シャープの炊飯器には「IHジャー炊飯器」「IH炊飯器」「ジャー炊飯器」がある。とりわけIHジャー炊飯器は「匠の火加減」により、"ふっくら"と"しゃっきり"そして"極上"など炊き分けが充実している。保温温度は70℃±3℃(67〜73℃)であるが、IH炊飯器「KS-WM10B」には保温機能が搭載されていない。購入する際は事前にしっかりと確認しよう。
象印
象印の炊飯器といえば、かまどの炎のゆらぎに着目した「炎舞炊き」が有名だ。複雑な対流でお米が勢いよく舞い上がり、ひと粒ひと粒がふっくら炊き上がるのだという。保温温度は「高め保温」で約73℃、「低め保温」で約60℃に設定されている。なお、低め保温に設定して24時間が経過すると、自動で高め保温に切り替わる。
三菱
三菱の炊飯器は、釜に炭素素材を用いているのが特徴だ。IHとも相性がよく、遠赤効果がお米の芯まで火を通してくれる。保温には「たべごろ保温(約60℃)」と「一定保温(約72〜74℃)」という2種類の機能がある。なお、機種によって8〜12時間経過後に自動でたべごろ保温から一定保温に切り替わるものや、一定保温しか搭載されていないものもある。
アイリスオーヤマ
炊飯器とIHコンロの1台2役をこなす「分離式量り炊きIHジャー炊飯器」や、健康に特化した「ヘルシーサポート炊飯器」など、ラインアップが豊富なのがアイリスオーヤマだ。保温温度は80℃弱と、ほかのメーカーと比較するとやや高めである。なお保温時間は、機種によって12時間と24時間がある。
2. 多くの炊飯器の保温温度が約60〜75℃である理由

ご覧いただいたように、多くの炊飯器の保温温度は約60〜75℃あたりに設定されている(アイリスオーヤマはやや高めだが)。このように各メーカーで保温温度がある程度の範囲に収まっているのには、れっきとした理由がある。
雑菌が繁殖するリスクを減らすため
「炊飯器で保温していれば鮮度は落ちない」と安心するのは危険だ。なぜなら保温温度が60℃以下になると、菌が繁殖しやすくなるからだ。温かい状態を保つためだけでなく、菌を発生させないためのひとつのラインが60℃であることも知っておこう。もちろん、炊飯器メーカーもこうしたリスクを知っているため60℃以上に設定されている。
メイラード反応による変色を防ぐため
メイラード反応とは、お米が黄色く変色してしまう現象だ。炊飯器の保温温度が高すぎると、お米に含まれる糖とアミノ酸が結合し黄色く変色してしまう。綺麗なお米の色をキープするためにも、保温温度は高すぎないことが重要になる。上限が75℃程度に収まっているのは、こうした理由によるものだ。
炊飯器の保温は温度が重要
以上のことから「炊いたお米に菌を繁殖させない」「ご飯を変色させない」ための適切な保温温度はおよそ60〜70℃とされている。ただ単に冷めないようにするだけではなく、炊きあがったお米をよい状態で保管するための知識として知っておこう。
3. 炊飯器の保温の温度は設定変更できる?

上述の通り、炊飯器の保温温度はメーカーや機種によって異なる。では、その設定温度は自分で変更できるものなのだろうか?
保温温度を変更できるかどうかはメーカーで異なる
炊飯器の保温温度は1℃ずつ変更するものではなく「高め」「低め」などで調節するものが多い。変更方法は炊飯器のメーカーや機種で異なるので、取扱説明書を確認してみよう。ただしメーカーによっては保温温度があらかじめ決まっており変更できないこともある。
4. 炊飯器でご飯を美味しく保温できるのは何時間まで?

炊飯器の保温機能は確かに便利だが、いつまでも鮮度をキープできるわけではない。美味しく保温できる時間の目安を知っておこう。
美味しく保温できる時間は12〜24時間程度が一般的
メーカーや炊飯器の機種によっても異なるが、保温できる時間は12〜24時間程度が一般的だ。ただし、上述のうるつや保温や極め保温のように、30〜40時間も保温ができる炊飯器もある。
長時間の保温はご飯が腐敗することもある
過去には、24時間保温したことでご飯から腐敗臭がしたというトラブルが報告されている(※1)。24時間を超えての保温は少々注意が必要かもしれない。炊飯器の取扱説明書に書かれていることもあるため、確認しておくとよいだろう。
象印の「うるつや保温」「「極め保温」なら長時間の保温が可能
象印の炊飯器に搭載されている「うるつや保温」は、炊いたお米を約30時間、適切な温度で保温できる。そのうるつや保温よりもさらに長時間、適切な温度で保温できるのが「極め保温だ」。こちらは40時間までご飯を美味しく保温できる。長時間の保温が必要なご家庭は、こうした炊飯器を選ぶとよいだろう。
5. 炊飯器の保温にかかる電気代は?

炊飯器の保温機能は、炊飯よりも高くはないがある程度の電気代がかかる。やはりメーカーや機種、温度設定などによって変わるが電気代の目安もお伝えしておこう。
炊飯器の保温時の電気代を計算する方法
電気代は「消費電力(W)×時間(h)÷1000×電気料金単価(円/kWh)」で算出できる。一例として、象印の炊飯器「NW-LA10(5.5号炊き)」で保温したときの電気代を計算してみよう。
【12時間保温した場合の電気代の目安】
「NW-LA10(5.5号炊き)」の保温1時間あたりの消費電力は「16.4W」である。したがって12時間保温した場合「16.4(W)×12(h)÷1000×27(円/kWh)=約5.3円」となる。なお電気料金単価は、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定める27円としたが、契約しているプランなどにより異なる。
6. 炊飯器の保温の温度は「低温調理」にもピッタリ

炊飯器の保温機能の設定温度は「低温調理」に向いている。
ローストビーフやサラダチキンなどの低温調理が可能
するご家庭も増えている。低い温度でじっくり調理することにより、食材の旨味や水分が無駄に逃げずしっとり仕上がる。炊飯器に食材と水を入れ、スイッチを押すだけの手軽さも人気の理由のひとつだろう。なお炊飯器の機種などによっては低温調理できないものもあるため、必ず事前に取扱説明書をご確認いただきたい。
7. 炊飯器の保温は温度や時間が重要!ご飯を美味しくいただこう

炊飯器の保温機能は、ただ単にご飯を温めておくだけではなく、炊き上がったご飯を少しでも長くよい状態でキープするための機能でもある。雑菌の繁殖やご飯の変色を防ぐための温度に設定されているので、普段は気にする必要はないかもしれない。
だがひとつの知識として、保温の温度が60℃を下回ると雑菌が繁殖しやすくなる、逆に高すぎれば変色するおそれがあるといったことは覚えておこう。また仮に温度に問題がなくても、長時間保温しすぎることで腐敗してしまうこともある。ご飯を美味しくいただくためにも、保温機能の適切な使い方を再確認しておこう。
結論
炊飯器の保温温度はメーカーや機種などで異なるが、おおよそ60〜75℃の範囲内に収まっている。ご飯を少しでも長く美味しく保つためのメーカー側の工夫だ。設定温度の変更方法などについて詳しくは、メーカーの公式サイトや取扱説明書を確認しよう。炊飯器の保温機能を正しく理解するとともにきちんと使いこなし、美味しくご飯をいただこう。
(参考文献)