目次
1. アクリル絵の具が落ちにくい理由

アクリル絵の具だけでなく、絵の具の汚れが付着してしまったときの落とし方は「いかに迅速に対処するか」が肝心になってくる。これは、絵の具の成分が繊維に深く染み込んで定着してしまうことも原因だが、アクリル絵の具でいえばそれ以外にも理由がある。
時間とともに固まる
アクリル絵の具は付着したばかりなら水に溶けるし、落とし方もある。だが時間が経つと乾燥して固まってしまう。ただ固まるだけではなく、耐水性があるため水には溶けなくなってしまうのである。そのうえ乾燥するまでの時間も短い。アクリル絵の具がついた際の落とし方は、とくにスピードが重要になってくる。
2. 衣類のアクリル絵の具を落とす前の確認事項

たしかにスピード重視ではあるが、衣類の場合はとくに最低限、確認しておきたいことがある。さらなるトラブルを招かないよう、次のポイントを確認しておこう。
洗濯表示と色落ちの有無をチェックする
詳しくは後述するが、アクリル絵の具が付着してしまったときの基本的な落とし方は「浸け置き」だ。また塩素系漂白剤と比べて素材に優しいとはいえ「酸素系漂白剤」も使用する。そのため手洗いがOKかどうかを洗濯表示で確認するとともに、色落ちのリスクはないかといったことも確認しておこう。洗濯表示については消費者庁のサイトに詳しく書かれているので、一度目を通しておくことをおすすめする(※1・※2)。
デリケートな生地、不安な生地はクリーニングへ
手洗いOKだったとしても、デリケートな生地や高級な衣類などで少しでも不安があるときは、無理をせずに最初からクリーニング店に相談することをおすすめする。
3. 衣類についたアクリル絵の具の落とし方

アクリル絵の具が衣類に付着してからそう時間が経っておらず、まだ乾ききっていないときの落とし方を解説しよう。ただし同じアクリル絵の具でもメーカーによって成分が異なる。また衣類の生地によっても汚れのつき方が異なる。そのため、以下の落とし方を実践しても一度でキレイにならないこともあるということはご理解いただきたい。
衣類についたアクリル絵の具の落とし方
- 洗濯桶にぬるま湯(40〜50℃)をはる
- 粉末の弱アルカリ性洗剤を適量溶かす
- 汚れた部分だけを浸し、指の腹でよく揉む
- ぬるま湯を入れ替えて酸素系漂白剤を適量溶かす
- 1時間を目安に浸け置きし、キレイな水ですすぐ
アクリル絵の具が乾燥してしまう前であれば、この落とし方を試してみよう。画材や文具などの製造・販売を手掛けるぺんてる株式会社でも紹介している落とし方だ(※3)。粉末の弱アルカリ性洗剤は「アタック」などがある。なお40〜50℃としたが、洗濯表示に上限の記載があればそれに従おう。また揉み洗いをする際は、汚れを広げてしまわないよう指の腹でやわらかく揉んでいこう。
除光液を使っても落とせる?
除光液を使ったアクリル絵の具の落とし方なども紹介されているが、生地を傷めるリスクが排除できないため本稿では推奨しない。
4. 皮膚や壁、ガラスなどについたアクリル絵の具の落とし方

続いて衣類以外の皮膚やガラス、金属やプラスチック、そして壁などにアクリル絵の具がついてしまったときの落とし方を解説しよう。やはり、いずれの方法でもキレイにならないことがあることを踏まえていただきたい。
皮膚についたアクリル絵の具の落とし方
アクリル絵の具が手や指などに付着してしまったときの落とし方は至ってシンプルだ。石鹸をたっぷりつけ、水でよく洗い流そう。一度に落とせなくても、繰り返すうちに少しずつ落ちてくれる。
ガラスや金属、プラスチックについたアクリル絵の具の落とし方
アクリル絵の具が乾ききってしまう前に、とにかく水でよく洗い流す。または水に濡らした雑巾を固く絞って水拭きする、というのが基本的な落とし方だ。
壁についたアクリル絵の具の落とし方
基本的にはガラスなどと同じように、アクリル絵の具が乾く前に水で流したり水拭きしたりするのが正しい落とし方になる。落ちにくいときは、除光液を布に含ませて拭き取るといった落とし方もある。ただし除光液が使えるかどうかは壁の素材にもよるので、まずは目立たない場所で試してからのほうがよいだろう。またアクリル絵の具がやわらかいと、除光液の作用で汚れが伸びてしまうこともある。少しずつ試しながら落とすなどしてトラブルを防ごう。
5. 乾いてしまったアクリル絵の具の落とし方は?

アクリル絵の具が付着してから時間が経ち、乾ききってしまったときの落とし方はあるのだろうか?
衣類についたアクリル絵の具が乾いてしまったとき
衣類についたアクリル絵の具が乾いてしまった場合、自力ではほとんど落ちないと考えてよい。最後の望みとしてクリーニング店に相談しよう。プロの手でもキレイに落とせるか難しいところだが、たとえ断られても「やれることはやった」と踏ん切りがつけられるはずだ。
ガラスなどについたアクリル絵の具が乾いてしまったとき
アクリル絵の具がついたものがガラスや金属、プラスチックといった色素が染み込みにくい素材なら、カッターナイフなどを使って削ぎ取るのが基本的な落とし方になる。ただし下地に傷がついてしまうおそれがあるため、ケガにも気をつけつつ慎重に作業にあたろう。壁に付着して乾いてしまったアクリル絵の具の塊も、この方法でうまく落とせることがある。
6. アクリル絵の具の汚れを少しでも抑える方法は?

学校の授業などでアクリル絵の具を使うことが事前に分かっていれば、万が一汚れてしまってもショックを少なくできる可能性がある。
汚れてもよい服を選ぶ
最悪落とせなかったら処分しても構わない、あるいは部屋着にしても構わない服などがあれば、アクリル絵の具を使う授業がある日に着て行かせよう。あるいは、汚れても構わないタオルなどをナプキンのようにして使う方法を教えるということもできる。
落とし方を子どもに教えておく
- すぐに汚れた部分を流水ですすぐ
- 石鹸を塗り、指の腹でもみ洗いをする
- 流水でよくすすぐ
- 帰宅したらすぐに洗濯をする
ある程度大きくなった子どもなら、学校でできる応急処置を教えておくのもひとつの手だ。ただし焦って勢いよくゴシゴシとやってしまうと汚れが広がるおそれがある。ご家庭で流れをレクチャーしておくと安心だろう。
結論
アクリル絵の具はそもそも落としにくいうえ、乾いてしまってからではさらに落とすのが難しくなる。とにかく乾ききる前に、迅速に対処することが大切だ。いざというときにスムーズに対応できるよう、ここで紹介した落とし方をぜひ覚えておいてほしい。また子どもにも応急処置を教えておくとよりキレイに落とせる確率が高くなる。可能であればメモなどに書いて渡しておこう。
(参考文献)
- 1:消費者庁「洗濯表示(平成28年11月30日まで)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash.html - 2:消費者庁「洗濯表示(平成28年12月1日以降)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash_01.html - 3:特殊えのぐ|汚れのおとし方|お客様相談室|ぺんてる株式会社
https://www.pentel.co.jp/support/otoshikata/otoshikata03/