1. アセテートとはどんな繊維?
アセテートは、ポリエステルやコットンなどと違いそれほどメジャーではない繊維だ。まずは簡単に、どういったものなのかを解説しよう。
アセテートは「半合成繊維」
繊維は天然繊維と化学繊維に分かれる。アセテートは化学繊維の一種である「半合成繊維」だ。半合成繊維は天然の原料を化学的に処理することで合成しており、一般的な化学繊維とは違う。ちなみに半合成繊維は植物由来のセルロース系と動物タンパク質系の2種類があるが、アセテートはセルロース系に分類される。
原料と製造方法
アセテートの原料は、木材パルプが原料のセルロースと石油由来の酢酸である。この2つを反応させることでできたアセテートフレークというものを、溶かしたり漉(す)いたりして糸状にしたものがアセテートなのだ。原料は天然のものを使っているが化学の力を使って製造されているため、半合成繊維と呼ばれている。
アセテートの特徴
アセテートの特徴は「絹のような光沢とドレープ感」「撥水性」「環境に優しい」ということだ。艷やかで光沢があり、見た目の美しさとなめらかな肌触りはシルク(絹)のようである。さらに撥水性があり水を弾くため汚れにくい。植物由来のアセテートは自然と分解されるため、環境に優しいのだ。
一方で「熱と摩擦に弱い」といった特徴もある。強度が低い素材だというとマイナスに聞こえるかもしれないが、これは反対に加工しやすい素材だということだ。
一方で「熱と摩擦に弱い」といった特徴もある。強度が低い素材だというとマイナスに聞こえるかもしれないが、これは反対に加工しやすい素材だということだ。
トリアセテートとの違い
アセテートとトリアセテートの原料に違いはない。アセテートよりも酢酸の含有量が多いものが、トリアセテートだ。質感や特徴にもあまり違いはないが、トリアセテートのほうが吸湿性や吸水性がやや低い傾向がある。つまり、乾燥が早くシミになりにくいということだ。
2. アセテートが使われているアイテムとは?
環境に優しい繊維といわれているアセテートだが、具体的にどういったアイテムに使われているのだろうか?代表的なものを紹介しよう。
和服地や裏地、レインコートや小物など
アセテートの光沢や肌触りを生かして、スーツやスカートの裏地や女性用の下着に使われることがある。適度な保湿性もあるので、ポリエステルなどに比べると静電気が起きにくい。アセテートは熱による加工がしやすく、プリーツスカートで重用される。
ほかにも見た目の美しさや発色のよさを生かせる、スカジャンやワンピース、スカーフ、ネクタイ、カーテン、和装小物にも使用される。アセテートの撥水性があるため、レインコートや傘にも使われることが多い。
ほかにも見た目の美しさや発色のよさを生かせる、スカジャンやワンピース、スカーフ、ネクタイ、カーテン、和装小物にも使用される。アセテートの撥水性があるため、レインコートや傘にも使われることが多い。
粘着テープや絶縁テープなど
アセテートは粘着テープや絶縁テープにも使用される。柔軟性があり、デコボコとした場所にも貼りやすいのが特徴だ。手だけで簡単に切れるため作業がしやすいく、ビニールテープと比較すると熱に強い。
メガネのフレームにもアセテートが使われている
アセテート樹脂を使用したメガネのフレームは多い。自然由来の植物繊維なので、かけたときにアレルギーになりにくいといった特徴がある。透明度がとても高く、発色がとても美しいのが魅力だ。熱に弱く加工がしやすいため、さまざまなデザインが楽しめる。
3. アセテートのメリット・デメリット
アセテートがさまざまなアイテム、とりわけ衣類など身につけるものに多く使われているのは次のようなメリットがあるからだ。デメリットとあわせて見ていこう。
アセテートのメリット
- シルクに似た美しい光沢がある
- 保温性と放湿性、吸湿性がある
- 撥水性があり汚れに強い
- 染色性がよくキレイに染まる
- 熱可塑性(ねつかそせい)がありプリーツ加工に向いている
- 弾力性によってシワができにくい
シルクと似た質感とウールのような柔らかな風合いが楽しめるが、アセテートはより安価に購入できる。また、熱可塑性とは、熱を加えると成形しやすくなり、冷えるとまた固くなる性質だ。
アセテートのデメリット
- 耐熱性が低く摩擦に弱い
- 強度が低い
- 排気ガスで変色することがある
- シンナーや除光液で溶ける
- アルカリ洗剤が使用できない
アセテートにアルカリ洗剤を使うと、化学反応で光沢がなくなるので注意しよう。整髪料やマニュキュア、シンナーが付着すると、溶けたり変色したりする可能性がある。
4. アセテートの洗濯方法
デリケートな繊維であり摩擦にも弱いアセテートは、洗濯する際にコツがある。注意点とあわせて解説するので覚えておこう。
用意するもの
- オシャレ着洗い用の中性洗剤
- 洗面器や洗濯桶など(手洗いをする場合)
- 約30~40度のぬるま湯(手洗いをする場合)
- バスタオル(手洗いをする場合)
- 洗濯ネット(洗濯機で洗う場合)
手洗い洗濯する方法
- 洗面器にぬるま湯をはり、所定の量の洗剤を入れる
- 洋服をお湯に入れ、優しく押し洗いする
- 水を交換して、泡がなくなるまですすぐ
- バスタオルで洋服を挟んで、水分を移すようにする
洗濯機で洗う方法
- 洗濯用ネットに洗いたい洋服を入れて、洗濯機に投入する
- 洗濯機に所定の量の洗剤をセットして、「オシャレ着コース」や「手洗いコース」を選択する
- すすぎを1回する
- 脱水は1分だけ行う
アセテートを洗濯する際の注意点
アセテートは水に触れるとシワになりやすいので、手早く洗濯をするように気をつけよう。傷むのを防ぐためにも、洗濯機よりも手洗いで洗濯するのがおすすめだ。洗濯する前に洗濯表示の洗濯桶マーク(※1)を確認することで、トラブルを防げる。
また、熱や摩擦に弱いため、洗濯機で洗うときは必ず洗濯用ネットを使用する。乾燥機の使用も避けたほうがよい。漂白剤はアセテート生地を傷めることがあるので、使わないほうが無難だろう。日光に当てると傷む可能性があるため、風通しがよい場所で陰干しをしてほしい。
また、熱や摩擦に弱いため、洗濯機で洗うときは必ず洗濯用ネットを使用する。乾燥機の使用も避けたほうがよい。漂白剤はアセテート生地を傷めることがあるので、使わないほうが無難だろう。日光に当てると傷む可能性があるため、風通しがよい場所で陰干しをしてほしい。
アイロンをかけても大丈夫?
アセテートは摩擦に弱く耐熱性が低い繊維だ。高温でアイロンがけをすると傷む可能性がある。また、湿った状態で熱を加えると、変色する可能性があるので注意しよう。
カイロンがけするときは必ず低温(80~120度)に設定して、あて布を使用するのがポイントだ。スチームの使用は避けたほうがよいだろう。洗濯表示のアイロンマーク(※1)を確認しておくと安心だ。
カイロンがけするときは必ず低温(80~120度)に設定して、あて布を使用するのがポイントだ。スチームの使用は避けたほうがよいだろう。洗濯表示のアイロンマーク(※1)を確認しておくと安心だ。
5. アセテート製品でよくあるトラブル
アセテート製品は洗濯やアイロンの熱などに注意する以外にも、取り扱いに気をつたほうがよいポイントがある。思わぬトラブルを防ぐためにも覚えておこう。
酸化窒素ガスにより変色することがある
酸化窒素ガスとは物質の燃焼で発生するガスだ。車の排気ガスに含まれており、ストーブを使うときにも発生する。アセテート製品がこの酸化窒素ガスを吸着することで染料分子が分解され、まだらに変色する可能性があるので注意が必要だ。
アセテートの変色を防ぐために、ストーブの近くで保存をするのは避けてほしい。また、水分を多く含んだ状態だと酸化窒素ガスを吸着しやすくなる。乾燥させてから保管することが重要だ。汗や汚れが付着したら正しい方法で洗濯をして、久しぶりに着用する場合は着用する前に軽く干しておこう。
アセテートの変色を防ぐために、ストーブの近くで保存をするのは避けてほしい。また、水分を多く含んだ状態だと酸化窒素ガスを吸着しやすくなる。乾燥させてから保管することが重要だ。汗や汚れが付着したら正しい方法で洗濯をして、久しぶりに着用する場合は着用する前に軽く干しておこう。
除光液など薬品により溶けることがある
アセテートは薬品に弱いといった性質がある。アセトンやシンナーが付着すると、溶けてしまうので注意しよう。マニュキュアを落とす除光液を使った場合も同様のことが言える。
さらにマニュキュアやペンキによるシミはプロでも落とすのが難しい。自分でシミ抜きしようとすると逆に生地を傷める可能性がある。もし付着させてしまったらまずクリーニング店に相談しよう。
さらにマニュキュアやペンキによるシミはプロでも落とすのが難しい。自分でシミ抜きしようとすると逆に生地を傷める可能性がある。もし付着させてしまったらまずクリーニング店に相談しよう。
結論
アセテートはシルクのような光沢と質感が魅力の半合成繊維だ。衣服や粘着テープ、メガネのフレームなど、さまざまなものに使われている。上手に使いこなすためにメリットとデメリットを確認しておこう。アセテートの衣類はデリケートなので、洗濯するときはオシャレ着用の中性洗剤を使用する。酸化窒素ガスや薬品に弱いため、取り扱いや保管の方法には注意してほしい。
(参考文献)
※1:消費者庁「洗濯表示(平成 28年12月1日以降)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash_01.html