目次
- 1. 混紡とは
- 2. 種類が異なる繊維を混紡する理由とメリット
- 3. 混紡に用いられる主な繊維とその特徴
- 4. 混紡されている繊維の注意点も把握しておこう
- 5. 混紡生地の洗濯に失敗しないためのポイント
- 6. 混紡生地は繊維の特徴を把握した上で取り扱おう
- ※1:洗濯表示(平成28年11月30日まで) _ 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash.html - ※2:新しい洗濯表示 _ 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/laundry_symbols.html
1. 混紡とは

まずは「混紡」という生地について詳しくなっておこう。
異なる2種類以上の繊維を混ぜて紡績したもの
混紡とは、種類が異なる2つ以上の繊維(短繊維)を混ぜ合わせ、紡績した(つむいだ)生地の総称だ。衣類は大きく、混紡していない生地のものと混紡している生地のものに分かれる。
混紡の組み合わせパターンはさまざま
詳しくは後述するが、混紡に用いられる繊維はさまざまだ。したがってその組み合わせパターンも豊富にある。天然繊維同士であったり、化学繊維と天然繊維であったり、3〜4種類の繊維を混ぜ合わせたりといった具合だ。ひとくちに混紡といっても、組み合わせる繊維によって風合いなどが変わってくる。
洗濯表示を見れば各繊維の「割合」が分かる
衣類を購入する際など、ぜひ洗濯表示をチェックしてみよう。混紡生地であれば、どういった繊維がそれぞれ何%の割合で使用されているかといったことが読み取れる。上述のように、組み合わせる繊維やその割合などで質感も変わるため、お手入れや保管などの際の参考にもなるだろう。
2. 種類が異なる繊維を混紡する理由とメリット

そもそも、なぜ種類が異なる2つ以上の繊維を混ぜ合わせるのだろうか?それによるメリットなどを交えて解説する。
混紡する理由とそのメリット
複数の繊維を混紡することによって得られるもっとも大きなメリットといえば「単体で使用した際のデメリットを補える」点だろう。Aという繊維の弱点を補えるBという繊維を組み合わせれば、両方の「いいとこ取り」をしたような生地が完成するというわけだ。
【機能性が向上する】
単純に弱点を補えるだけではない。たとえば「速乾性があるがシワになりやすい」繊維に「速乾性はないがシワになりにくい」繊維を混ぜ合わせた場合「速乾性がありシワにもなりにくい」といった生地に仕上がる可能性がある。機能性が追加されるというわけだ。
【お手入れがしやすくなる】
「着心地がよいが水には弱い」繊維に「着心地は普通だが水にはめっぽう強い」繊維を多めに組み合わせた場合「着心地がよく水にも強い」繊維になることもある。水に弱い繊維はお手入れが大変だが、これなら洗濯なども楽になるだろう。
【質感・肌触りがよくなる】
たとえばコットンとポリエステルを組み合わせれば、肌触りがよくシワになりにくい生地になる。ウールとナイロンであれば保温性と光沢が両立できる。組み合わせによって質感や肌触りなども変わってくるのだ。
【生産コストを抑えられる】
高級な天然繊維と大量生産できる化学繊維を組み合わせれば、生産コストが大きく下げられる。たとえばウールとポリエステル、レーヨンとシルクなどを混紡すれば、安価な値段で高級な質感を楽しめる。
3. 混紡に用いられる主な繊維とその特徴

お伝えしたように、混紡にはさまざまな繊維が用いられる。繊維ごとの特徴を把握しておくと、購入する前にお手入れなどのイメージが湧きやすいだろう。
コットン
木綿の種から採れる繊維だ。熱に強いためアイロンがけしやすく、かつ丈夫で長持ちしやすい。柔らかい触感と肌への優しさが魅力である一方、シワになりやすいといった欠点もある。
シルク
美しい光沢と滑らかな触感の天然繊維だ。吸湿性や保温性に優れ快適に着用できる反面、デリケートでお手入れが難しいといったデメリットがある。また縮みやすくシワもできやすいため、混紡しても洗濯しにくい繊維とされている。
レーヨン
シルクに似せて作られた化学繊維で、ひんやりした触り心地や、スベスベした手触りが特徴だ。シワができやすく縮みやすいといったデメリットがあるが、混紡することで補うことができる。
ポリエステル
石油から作られる化学繊維がポリエステルである。耐久性が高く速乾性にも優れていることから洗濯しやすい。ポリエステルと組み合わせることで、耐久性が増したり、シワの防止機能が向上したりする。
ウール
羊の毛を元にした天然繊維で、柔らかさと高い保湿力といった特徴がある。空気を含んでいるため暖かく質感も美しい。型崩れしにくく汚れもつきにくいが、虫食いや毛玉といったデメリットもある。
アクリル
一見ウールに似ているが、質感や吸湿性はやや劣る。だがアクリルは化学繊維の一種なので、虫食いの心配がなくお手入れもしやすいといったメリットがある。
4. 混紡されている繊維の注意点も把握しておこう

上述のように、混紡といっても用いられる繊維はさまざまであり特徴も異なる。混紡する繊維や割合によっては「縮みやすい」「熱に弱い」など注意すべきポイントもあるので覚えておこう。
縮みやすい繊維
【ウールやコットン】
ウールやコットンは縮みやすいことから、洗濯にはひと工夫が必要だ。とくにウールはデリケートなので、混紡している場合は洗濯方法に気を使おう。また、ウールやコットンは摩擦や洗濯で繊維がフェルト化(毛羽立ち、収縮等)したり、硬くなったりする性質がある。手洗い洗濯の際はもちろん、普段も極力、こすったり揉んだりしないように心がけよう。
洗濯しにくい繊維
【レーヨンやシルク】
レーヨンやシルクなどの繊維が使われている混紡生地の場合、洗濯ができないことが多い。もちろん洗濯できる衣類もあるが「おしゃれ着」「手洗い」「ソフト」といった弱水流モードに設定するのが基本だ。ウールとの混紡だった場合、ウールの混紡率が高いと洗濯できないことがあるので覚えておこう。
熱に弱い繊維
【ポリエステルやナイロン、ウールやシルク】
これらは熱に弱いため、混紡に使われている場合はアイロンに関する洗濯表示を必ず確認しよう。またお湯で洗濯するとダメージを受けるおそれがある。洗濯機はもちろん、手洗いをするときでも温度に注意が必要だ。こちらも、洗濯表示で使えるお湯の温度をチェックしておこう。
5. 混紡生地の洗濯に失敗しないためのポイント

適切な洗濯方法は、どの繊維を混紡したかによって大きく変わってくる。失敗しないためにも、次のようなポイントを押さえておこう。
洗濯表示は必ず確認する
混紡生地は、使われている繊維やその割合で洗濯方法が変わる。また同じ組み合わせの混紡でもお手入れの方法が異なるケースがある。そのため洗濯表示は必ず確認するクセをつけておこう。
【洗濯できる混紡生地の見分け方】
その混紡生地が洗濯(水洗い)できるかどうかは、洗濯表示を見れば一目瞭然だ。「洗濯機」のアイコンもしくは「洗濯桶」のアイコンがあれば水洗いできる。「手洗イ」の文字あるいは「洗濯桶に手」のアイコンだったときは手洗い指定だ。いずれもバツがあればご家庭では水洗いできない。
【液温や水流の強さも分かる】
洗濯機や洗濯桶の中に「30」「40」といった数字が書かれていた場合、それは液温の上限を意味する。また洗濯機に「弱」といった文字、あるいは洗濯桶の下に「横線」が引かれていた場合、水流の強さを意味する。
【タンブル乾燥の可否や干し方についても確認を】
新洗濯表示にしかないのが「乾燥方法(タンブル乾燥)」の可否に関するアイコンだ。「正方形の中に丸、さらにその丸の中に黒ポチ」といったアイコンがあればタンブル乾燥OKという意味になる。
また干し方は新旧いずれの洗濯表示でもアイコンが用意されており「吊り干し」「濡れ吊り干し」「平干し」「濡れ平干し」といった方法が分かるように記されている。
【アイロンや漂白に関する指定が確認できることもある】
洗濯表示では、そのほかにもアイロンの可否および温度に関する情報、あるいは漂白処理の可否および漂白剤の種類といった情報が読み取れることもある。おしゃれ着などとくに大切な衣類が混紡生地だったときは、こうした部分もぜひチェックしておこう。
【洗濯表示に載っていないときは?】
「洗濯」と「漂白」に関するアイコン以外は掲載が必須ではない。そのため衣類によっては洗濯表示を見ても分からないことがある。基本的に、省略されている処理については「もっとも厳しいもの(アイロンなら高温など)」が適用されるという解釈でよいが、心配なときや迷ったときは、メーカーのホームページなどで確認するか問い合わせると安心だろう。
【洗濯表示には新旧がある】
洗濯表示は新旧あり、まだまだ混在している状況だ。消費者庁のホームページに詳しく掲載されている。よく分からないという方は、ぜひこの機会に一度目を通しておくとよいだろう。(※1)(※2)
水洗い不可だったときはクリーニングに出す
混紡生地は、組み合わせている繊維の種類によって洗濯(水洗い)できないこともある。無理に洗濯してしまうと、縮んだり色落ちしたりするリスクがあるためやめたほうがよいだろう。大切な衣類を無駄にしないためにも、ご家庭で水洗いできないときはクリーニングに出すことをおすすめする。
6. 混紡生地は繊維の特徴を把握した上で取り扱おう

お伝えしたように、ひとくちに「混紡」といっても使われる繊維はさまざまだ。繊維にはそれぞれ異なる特徴がある上、組み合わせパターンも多く割合によって取り扱い方なども変わってくる。混紡生地の衣類などを購入する際は、使われている繊維の特徴などを確認し、適切に取り扱いおよび洗濯をするよう心がけてほしい。
結論
異なる2種類以上の繊維を混ぜ合わせて紡績したものが「混紡」だ。それぞれの繊維が持つデメリットを補い、メリットを引き立てるといった効果がある。またコストダウンにより、高級な質感の衣類などが安価で手に入りやすくなるのも混紡のメリットだ。洗濯方法や注意点などは商品によって異なるため、洗濯表示をしっかり確認するクセを身につけておこう。
(参考文献)