1. ヌバックとは?

まずはヌバックとはなにか、基本的なところから解説しよう。
牛の皮を使った起毛革がヌバック
ヌバックとは革製品によく用いられる素材で、牛の皮をサンドペーパーなどでやすりがけして毛羽立たせた、いわゆる「起毛革(きもうかく)」と呼ばれる加工皮革だ。牡鹿の皮を使う「バックスキン」と呼ばれる素材があるのだが、こちらは希少かつ高級品であることから、その代用に作られたのが始まりといわれている。
ヌバックの特徴
毛羽立たせてはいるものの、毛足が短いので手で触れると柔らかいうえしっとりしている。マットな質感で生地も厚みがあるため、落ち着きや上品さ、あたたかさを感じられる素材だ。数ある皮革製品の中でもとくに、秋冬モノの定番といった位置づけだろうか。ほかの皮革製品と同じように、使い込むほど色が濃くなり光沢も生まれるなど味が出てくる。
2. ヌバック以外の起毛革の種類と特徴

起毛革にはいろいろな種類がある。代表的なものとその特徴を紹介しよう。
起毛革の種類と特徴
- ヌバック:牛革(表)で毛足は短め
- スエード:子牛、羊・ヤギ革(裏)で毛足は長め
- ベロア:牛革(裏)で毛足はスエードよりも長め
- バックスキン:鹿革(表)で起毛したものとなめしただけのものがある
- セーム革:カモシカ革(両面)で主に貴金属を磨くのに使われる
このように商品によって使用している革の素材や使用面・毛足の長さなどが異なる。たとえば表面を使用しているのはヌバックやバックスキン、裏面を使用しているのはスエードやベロアであるが、セーム革は両面ともなめしてある。また毛足はヌバック、スエード、ベロアの順に長くなる。なおバックスキンは鹿の革を使っているものすべてを指し、中には起毛していないものもある。
3. ヌバックとスエードの違いとは?

ヌバックはスエードと似ているが、使用部位や厚み、高級感や耐久性などが大きく異なる。違いを知ることで起毛革製品を選ぶ際の基準になるだろう。
使用部位と素材の違い
前述の通り、スエードは革の裏側(床面)、ヌバックは革の表側(銀面)にヤスリをかけて毛羽立たせている。表側を加工するヌバックの方が丈夫だ。
厚みの違い
ヌバックは十分な厚みがあるため耐久性が高い。一方、スエードは割と薄いのが特徴だ。またスエードは裏面から削っているため、薄くなる傾向がある。キレイに起毛させるにはより薄く削る必要があるためだ。
毛足の長さと質感の違い
ヌバックは表面を起毛させているため毛足が短い。これにより手触りがさらりとしつつもなめらかで高級感がある。また光沢があるのもヌバックの特徴だ。
価格の違い
起毛革は使用している素材の違いによって価格が大きく変わる。ヌバックはほかの素材よりも高級な牛革を、スエードはヤギや羊・子牛の革を使うためヌバックの方が高額であるのが一般的だ。
4. ヌバックを長く使うためのお手入れ方法

基本的にはスエードなどほかの起毛革と変わらないので、ヌバック以外の起毛革製品を持っている方もぜひ参考にしていただきたい。
必要なアイテム
ヌバックなど起毛革のお手入れに必要なアイテムはブラシ・防水スプレー・栄養補給用の専用スプレーやローションだ。ブラシには起毛させるためのワイヤーブラシと、汚れを取るための天然ゴムのブラシがある。
ブラシなどで汚れを落とす
ホコリや砂が起毛の間に入っているため、ワイヤーブラシや豚毛、馬毛などのブラシを使って汚れを落とす。汚れが取れにくいときは天然ゴムのブラシを使おう。スエード用のブラシは両面あるいは4面がそれぞれ異なる素材になっているので1つ持っておくと便利だ。
しつこい汚れにはクリーナーを
泥汚れなどのしつこい汚れは、スエード・ヌバック専用のクリーナーを使う。泡立てながらブラシでこすっていき、最後は泡を拭き取ってから乾かす。擦り傷にはレザー専用の消しゴムを使おう。
防水スプレーは必須
ブラッシングで汚れを落としたら、防水スプレーを吹きつけて水濡れや泥汚れ対策を講じておこう。スプレータイプだけでなく、手にとって使うジェルタイプも便利だ。
専用スプレーやローションなどで栄養補給
最後に、乾燥を防ぎ革に栄養を与えるためスエード・ヌバック専用スプレーやローションなどをすり込む。防水効果のある商品も売られているため、防水と栄養補給を1本でまかなうこともできる。
毎日のお手入れの基本はブラッシング
日々のお手入れの基本はブラッシングだけで問題ない。ホコリを落とし、毛を立たせる効果がある。
5. ヌバックが使われるアイテム

ヌバックは厚手で丈夫なので、さまざまな用途で使われている。以下の製品を買うときにはヌバックかどうか、チェックしてみるとよいだろう。
財布・バッグ・キーケース
もっとも購入しやすい価格帯のアイテムといえば財布やキーケースだろう。小さいながらも高級感あふれる質感が魅力だ。バッグはやや大きめなものが多い。いずれも日々のお手入れを忘れずに行えば長く使える。
靴・スニーカー
革靴はもちろん、ヌバックが使われているスニーカーもある。革靴ならフォーマルにもカジュアルにも使えるし、スニーカーなら普段履きにできる。足元のオシャレにこだわりたい方におすすめだ。
システム手帳のバインダー
システム手帳のバインダーでもヌバック製のものがある。プライベートで使ってもオシャレだし、仕事で使うとセンスのよさと上品さをアピールできる。
ジャケット
ヌバックジャケットにはさまざまタイプがある。テーラードジャケット、ダウンジャケットなどが代表的なアイテムだ。経年による風合いの変化を楽しむためにも、やはりお手入れをきちんと行おう。
野球のグローブ・手袋
手袋だけでなく、野球のグローブでもヌバックが使われている。高級感があり柔らかくしなやかなので、手が動かしやすいといわれている。
結論
ヌバックはスエードと似ているが、素材や毛足の長さ、使用面などが異なる。高価だが、厚く丈夫で見た目も上品さがあり、手触りもなめらかだ。長く使うためにも毎日のお手入れは欠かさないようにしよう。小物から靴・ジャケットまで選べるのも魅力である。ぜひヌバック製のアイテムを手に入れて楽しんでほしい。