目次
1. シルクとはどんな素材?

まずは、シルクという素材の特徴から簡単に解説していこう。
蚕(カイコ)の繭から作る天然素材
シルクは蛾の幼虫である蚕が吐き出した繊維、繭を糸の形に整えて作られた天然素材である。フィブロインとセリシンというたんぱく質からできている。同じようにたんぱく質でできている人間の肌に近いため、シルクが肌に優しく着心地よい素材と感じるのである。
吸湿性・保湿性・保温性に優れている
シルクには繊維と繊維の間に空間があり、吸湿性や保温性に優れている。暑い夏にシルクのインナーを着ても汗でベタつくことはほとんどない。それでいて保温性も高いため、冬には温かさを感じさせてくれる。
ただし摩擦には弱い
優れた素材である一方、シルクにはほかの繊維よりも摩擦に弱いという欠点がある。繰り返し着用するうちに毛羽立ってしまうのはこのためだ。
2. シルクの洗濯が難しいワケとは?

シルクはなぜ、ご家庭での洗濯が難しいといわれているのだろうか?その理由を解説しよう。
色落ちや縮みなどのリスクがある
シルクのたんぱく質は水に溶けやすい。そのため洗濯することで風合いが変わりやすく、また色落ちもしやすい。非常にデリケートな素材であるため、市販の合成洗剤や洗濯石鹸などを使った場合も色落ちしやすい。もちろん、乾燥機にかけてしまうと縮みなどを招くこともある。シルクの洗濯が難しいとされるのはこうしたことが大きい。
日光で変色・退色するリスクがある
もうひとつ、シルクは直射日光に当たってしまうと黄色く変色したり退色したりする場合がある。こうした特徴も、シルクの洗濯が難しいとされる理由のひとつだ。
3. ご家庭で洗濯できるシルクの見分け方

シルクの繊維を樹脂コーティングした製品や、独自加工した製品なども販売されており、そうしたアイテムはご家庭で洗濯できるものも多い。ただし事前に必ず「洗濯表示」をチェックしよう。
ご家庭で洗濯できるシルク
洗濯表示を見たときに「洗濯桶」「洗濯機」のマークがあればご家庭の洗濯機で洗える。ただし「手洗イ」の文字または「洗濯桶に手」のマークだったときは手洗い推奨だ。液温や干し方、タンブル乾燥の有無など洗濯表示にはいろいろな情報が載っている(一部、最低限の情報しか掲載されていないものもあるが)。あまり気にしてこなかった方はぜひ、この機会に目を通しておこう(※1・※2)。
ご家庭では洗濯できないシルク
洗濯桶や洗濯機のマークがあっても、そこに「バツ」が描かれている場合はご家庭での洗濯を控えたほうがよい。この場合は、クリーニング店に持ち込んでプロの手でキレイにしてもらおう。
4. シルクの洗濯に使う洗剤は?

シルク用の洗濯洗剤が販売されている。この先も洗濯する可能性があるのなら購入するのもよいだろう。
オシャレ着用中性洗剤がおすすめ
シルク用の洗濯洗剤がない、買っても使い切らなそうという場合は市販のオシャレ着用中性洗剤を使おう。なお石鹸はアルカリ性なのでシルクの洗濯には向かない。ただし無添加石鹸にはアルカリ助剤が入っていないため、悪影響は少ないだろう。シミになりそうな汚れ部分に無添加石鹸をそっと押し付けて洗ってみよう。
5. シルクを洗濯する前の確認事項

ご家庭で洗濯できるシルクだった場合でも、必ず確認してほしいことがある。「色落ち」のチェックだ。
色落ちの確認方法
目立たない部分に水を少量たらし、白い布(タオル)でそっと押さえてみよう。色が移れば色落ちするおそれがある。OKだったときは、ティッシュにオシャレ着用中性洗剤の原液を少量含ませ、目立たない部分をトントン叩いてみよう。これでも移らなければ安心して洗濯できる。逆に少しでも色移りした場合は、たとえ洗濯OKだったとしてもクリーニング店に依頼したほうがよいだろう。
なお「安心して洗濯できる」とお伝えしたが、100%色落ちしないという意味ではない。たとえ色落ちチェックで問題なかったとしても、洗濯をすれば程度の差こそあれ多少は色落ちする。これはどの素材にもいえることなので「絶対に風合いを損ねたくない」というほどのものであればご家庭で洗濯するのは控えることをおすすめする。
なお「安心して洗濯できる」とお伝えしたが、100%色落ちしないという意味ではない。たとえ色落ちチェックで問題なかったとしても、洗濯をすれば程度の差こそあれ多少は色落ちする。これはどの素材にもいえることなので「絶対に風合いを損ねたくない」というほどのものであればご家庭で洗濯するのは控えることをおすすめする。
6. シルクを手洗いする方法

それでは、シルクを洗濯する方法を解説していこう。まずは手洗いする方法からだ。
用意するもの
- オシャレ着用中性洗剤
- 洗濯桶
- 大判のバスタオル
手洗いする方法
- 洗濯桶に30℃以下の水をはる
- オシャレ着用中性洗剤を適量溶かす
- シルクを浸し、優しく押し洗いする
- 水を入れ替えながら、泡立たなくなるまで2〜3回すすぐ
- バスタオルで包み、タオルドライをする
押し洗いする時間は30秒程度を目安にしよう。摩擦に弱いのでこすり洗いはNGだ。また色落ちなどトラブルの元になるので、お湯を使うのは避けよう。洗濯機での脱水は避けたほうが無難だが、どうしてもというときは洗濯ネットに入れて15秒程度とごく短時間で済ませよう。
7. シルクを洗濯機で洗う方法

続いて洗濯機でシルクを洗う方法を説明しよう。できれば手洗いを推奨するが、洗濯機で洗う方法も覚えておくとよい。
用意するもの
- オシャレ着用中性洗剤
- 洗濯ネット
- 柔軟剤(お好みで)
洗濯機で洗う方法
- シルクを折りたたんで洗濯ネットに入れる
- オシャレ着用洗剤や柔軟剤をセットする
- 「手洗い」「ドライ」など弱水流コースで洗濯する
弱水流コースで洗うのがポイントだ。可能であればすすぎの水は多めにしよう。また脱水は10~15秒程度かけてもよいが、面倒でなければタオルドライをおすすめする。
8. 洗濯したシルクの干し方

上述のようにシルクは直射日光に当ててしまうと変色や退色してしまうことがある。干し方も重要なので覚えておこう。
風通しのよい日陰で平干し
洗濯表示に書かれていればそれにしたがってほしい。不明なときは、軽く振り払って大きなシワをとり、形を整えてから「風通しのよい日陰」で「平干し」をしよう。このとき平干しネットを使うと形が崩れにくい。100均でも手に入るので、ぜひひとつ持っておこう。高温になる乾燥機の使用はNGなのでくれぐれも気をつけてほしい。
9. シルクにアイロンをかけても大丈夫?

洗ったシルクのシワが気になる場合は、アイロンがけをしよう。このとき、まだ濡れている「半乾き」状態であれば失敗が少なくて済む。
シルクにアイロンがけをする方法
- シルクを裏返して当て布をする
- アイロンを低温に設定する
- 中心から放射線状にアイロンをかける
基本的な手順はこの通りだ。乾いてしまったシルクにアイロンをかけるときは、先に霧吹きなどで水を含ませてからにしよう。また、長期保管中などにできたシワは、アイロンではなくクリーニング店にお願いするのがおすすめだ。
10. シルクを洗濯する頻度はどれくらい?

シルクは洗濯しすぎるとゴワついたり毛羽立ったりしてくる。とはいえまったく洗濯しないというのも衛生的ではない。汗や皮脂、垢などが付きやすいインナーおよび靴下などは着用のたびに洗濯しよう。それ以外のパジャマやシャツなどは、汚れがあれば別だが基本的には3〜4日に1回程度がよい。
11. 知っていると役立つシルクを洗濯する際の豆知識

どうしてもゴワついてしまうときや、旅先などでオシャレ着用中性洗剤を使えないときなどに役立つ豆知識を紹介する。
ゴワつきはクエン酸や柔軟剤で防げる
オシャレ着用中性洗剤を使っても、洗濯を繰り返すうちにゴワついてくる。すすぎのあとにクエン酸や柔軟剤を入れてみよう。繊維の間に成分が入り込んで柔らかさを取り戻せるはずだ。
洗剤はシャンプーやコンディショナーで代用できる
シルクは髪の毛と同じたんぱく質で構成されているので、シャンプーでも洗うことができる。コンディショナーで整えればよりキレイに仕上がるはずだ。旅先などで手元にオシャレ着用中性洗剤がない場合の裏ワザなのでぜひ覚えておこう。洗濯方法や干し方は、やはり後述するオシャレ着用中性洗剤を使った場合と同じだ。
12. シルク製品の正しい取り扱い方も知っておこう

最後に、シルク製品を上手に取り扱うためのポイントを解説しよう。
シルク製品を長持ちさせる取り扱い方
シルクは天然のたんぱく質からできているため、虫食いやカビの被害に遭いやすい。そのため汚れたときはその場でサッと手洗いしておこう。また直射日光に当たり続けた髪の毛や皮膚が日焼けするように、シルクも黄ばみや色あせする。そのため直射日光の当たる場所にシルクを保管するのはNGだ。クローゼットに保管する際はよく乾燥させたのち、防虫剤を置いておこう。
クリーニングから返ってきたときにかけられているビニール袋は通気性が悪いので、出しておいたほうがよい。しばらく室内の風通しのよい場所に吊るしてから収納しよう。カバーをかけたいときは、不織布製など通気性があるものにしよう。
クリーニングから返ってきたときにかけられているビニール袋は通気性が悪いので、出しておいたほうがよい。しばらく室内の風通しのよい場所に吊るしてから収納しよう。カバーをかけたいときは、不織布製など通気性があるものにしよう。
結論
取り扱いが難しいシルクではあるが、ご家庭で洗濯できるものも多い。洗濯表示や色落ちチェックなども含め、本稿で紹介した方法でぜひキレイに洗ってみよう。ただし、絶対に風合いを損ねたくない、失敗したくないといった大切なアイテムは、最初からクリーニング店に相談することをおすすめする。
(参考文献)
- 1:消費者庁「洗濯表示(平成28年11月30日まで)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash.html - 2:消費者庁「洗濯表示(平成28年12月1日以降)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash_01.html