目次
1. カビにエタノールが効く理由

まずはエタノールについての基礎知識と、カビの除去に効果的である理由を解説しよう。
エタノールとは
エタノールは「エチルアルコール(酒精)」のことで、その名前からも分かるようにアルコールのひとつだ。サトウキビなどの糖質原料および、とうもろこしをもとに作られる。病院などで手指の消毒に使われるアルコールであり、ドラッグストアにもエタノールを含むさまざまな商品が並んでいる。なお「アルコール」は一般的にエタノールのことを指すと思ってよい。
エタノールがカビに効果的な理由
消毒などに使われることからも分かるように、エタノールには強い除菌作用がある。カビに使うとその細胞膜を破壊したり、たんぱく質を凝固させたりする。したがってカビの除去に効果があるというわけだ。
カビの除去というとカビキラーといった漂白剤を思い浮かべる方も多いかもしれない。だが漂白剤が使える場所や素材は限られている。その点、揮発性の高いエタノールはすぐに蒸発するため素材を傷めにくく、さまざまな場所やモノに対して使える。また手指などの消毒に使われることから、通常使用における人体への害もほとんどないことが分かる。
カビの除去というとカビキラーといった漂白剤を思い浮かべる方も多いかもしれない。だが漂白剤が使える場所や素材は限られている。その点、揮発性の高いエタノールはすぐに蒸発するため素材を傷めにくく、さまざまな場所やモノに対して使える。また手指などの消毒に使われることから、通常使用における人体への害もほとんどないことが分かる。
2. 消毒用エタノールと無水エタノールの違い

エタノールには種類がある。「消毒用エタノール」「無水エタノール」そして「エタノール」だ。
「消毒用」と「無水」の違い
これらはエタノールの濃度で分類されている。消毒用エタノールは「76.9~81.4vol%」、エタノールは「95.1~96.9vol%」、無水エタノールは「99.5vol%以上」だ。
「vol%」は「ボリュームパーセント」と読む。体積で考えたときにどれくらい含まれているかを示す値だ。たとえば消毒用エタノールなら、100mlあたり76.9〜81.4%のエタノールが含まれているということになる。
なお無水エタノールが100vol%でないのは、空気に触れた瞬間に、その空気中の水分を吸収してしまうからである。
「vol%」は「ボリュームパーセント」と読む。体積で考えたときにどれくらい含まれているかを示す値だ。たとえば消毒用エタノールなら、100mlあたり76.9〜81.4%のエタノールが含まれているということになる。
なお無水エタノールが100vol%でないのは、空気に触れた瞬間に、その空気中の水分を吸収してしまうからである。
3. カビに効くエタノールは消毒用?無水?

エタノールには消毒作用があるため、普通に考えるとカビの除去にはもっとも濃度が高い無水エタノールが効果的なのでは?と思うかもしれない。だが実際には違うようだ。
カビの除去には消毒用エタノールが効果的
エタノールの消毒効果は濃度80%前後でもっとも高くなる。無水エタノールはそのほとんどがエタノールであり、きわめて揮発性が高い。そのため消毒効果を発揮する前に飛んでしまう。一方、濃度80%前後の消毒用エタノールは、無水エタノールよりもカビに長く留まるため、消毒効果が得られるというわけだ。
では無水エタノールは用途がないのかというとそうではない。その高い揮発性から、水が使えない場所やモノに対する掃除などにはうってつけだ(ただしエタノールや消毒用エタノールで掃除しても十分、効果はある)。
では無水エタノールは用途がないのかというとそうではない。その高い揮発性から、水が使えない場所やモノに対する掃除などにはうってつけだ(ただしエタノールや消毒用エタノールで掃除しても十分、効果はある)。
4. 無水エタノールから消毒用エタノールを作る方法

ドラッグストアなどで無水エタノールを購入し、自分で消毒用エタノールを作ることもできる。
用意するもの
- アルコールに対応したスプレーボトル
- 無水エタノール
- 精製水
念のため換気をしながら作業に当たること、薄めのゴム手袋を着用することをおすすめする。またスプレーボトルに入れやすいよう、漏斗(ジョウゴ)などを用意しておくのもよい。
消毒用エタノールの作り方
エタノールの濃度が80%前後になるよう、精製水で希釈すればよい。100mlのスプレーボトルであれば、無水エタノールを80ml、精製水を20mlという具合だ。普通のエタノールの場合であれば85ml、精製水15mlで作ることができる。
5. カビをエタノールで除去する方法

それでは、実際にカビをエタノールで除去する方法を見ていこう。
消毒用エタノールを含ませた布で拭き取るのが基本
消毒用エタノールを含ませたキレイな布でカビを拭き取る。これが基本である。カビに直接スプレーしたくなるかもしれないが、最初は胞子が舞ってしまうのを防ぐため布で拭き取るようにしよう。一度拭いた面はカビで汚れてしまうため、こまめに面を変えるのもポイントだ。
キッチンやお風呂のカビを除去する方法
消毒用エタノールを含ませたキレイな布でカビを拭き取る。次に、カビに直接消毒用エタノールを吹きかけ、乾くまで放置する。あとは乾いた布で拭けば、カビはスッキリと除去できるだろう。
消毒用エタノールをキッチンペーパーに染み込ませたものと、ラップを使うとより効果的だ。カビの上からキッチンペーパーを貼り付けてラップで覆い、同じように放置しよう。消毒用エタノールが蒸発するのを遅らせ、少しでも長くカビに留まらせるという効果がある。
消毒用エタノールをキッチンペーパーに染み込ませたものと、ラップを使うとより効果的だ。カビの上からキッチンペーパーを貼り付けてラップで覆い、同じように放置しよう。消毒用エタノールが蒸発するのを遅らせ、少しでも長くカビに留まらせるという効果がある。
畳や押入れのカビを除去する方法
基本的な方法はキッチンやお風呂と同じだが、畳や押入れに使うとい草や木材が傷むリスクがある。目立たないところに吹きかけて、拭いた布に色が移るなら使わないほうがよいだろう。畳の目や隅に入ったカビは歯ブラシで優しくかきだそう。
水分が残らないように換気を徹底し、よく乾燥させるのがポイントだ。
水分が残らないように換気を徹底し、よく乾燥させるのがポイントだ。
クローゼットや壁、電化製品などのカビも除去できる
そのほかクローゼットや下駄箱、壁や窓(パッキン)、冷蔵庫や電子レンジといった電化製品など、消毒用エタノールを使ってカビを除去できる場所やモノは多くある。いずれも基本的なやり方は同じなので、ぜひ覚えてしまおう。
なお、目に見える部分以外にも胞子が広がっているおそれがある。消毒用エタノールを使ってカビを除去する際は、やや広めに拭き取っておくことをおすすめする。
なお、目に見える部分以外にも胞子が広がっているおそれがある。消毒用エタノールを使ってカビを除去する際は、やや広めに拭き取っておくことをおすすめする。
6. カビをエタノールで予防する方法

消毒用エタノールを使ってカビを予防することも可能だ。
気になる部分に吹きかける
カビが生えそうなところに、前もってひと吹きしておこう。これだけでも十分、カビが発生するリスクを減らせる。お風呂やキッチン、窓のパッキンなど湿気(結露)が生じやすい場所への対策としよう。定期的に消毒用エタノールを吹きかければ掃除の手間も減らせるはずだ。
キッチンアイテムに吹きかける
エタノールは安全性が高く、食品に直接吹きかけて消毒できるものもある。この特性を生かし、まな板やプラスチック保存容器など、キッチンで使うもののカビ予防にも役立てよう。消毒用エタノールをまな板などに吹きかけ、清潔な布で丁寧に拭くだけでよい。子どもの食器や弁当箱のカビ予防にもおすすめだ。
また冷蔵庫のパッキンも意外とカビが発生しやすい。定期的に消毒用エタノールを吹きかけることで予防していこう。
また冷蔵庫のパッキンも意外とカビが発生しやすい。定期的に消毒用エタノールを吹きかけることで予防していこう。
7. カビの除去にエタノールを使う際の注意点

お伝えしてきたようにカビの除去に有効なエタノールだが、使うときや取り扱い、保管などに関していくつか注意点がある。
危険物であり火気は厳禁
消防法上、濃度60%以上の消毒用エタノールは「危険物」に該当する(※1)。日常生活で大量に取り扱うことはほとんどないはずだが、念のため覚えておこう。またエタノールには高い引火性がある。火には絶対に近づけないようにしよう。ライターやコンロなど、火を使うアイテムには十分気をつけてほしい。
カビを除去する際はマスクとゴム手袋を着用する
カビの胞子を吸い込んでしまわないようにマスクを着用するとともに、カビが直接肌に触れないようゴム手袋も装着しよう。メガネまたはゴーグルといった、目の保護具の着用もおすすめだ。
直射日光が当たる場所や高温になる場所には保管しない
消毒用エタノールが熱せられると可燃性の蒸気が発生する場合がある。目に見えず非常に危険であるため、直射日光が当たる場所や高温になりやすい場所での保管は避けよう。
使用中や詰め替える際は換気をする
消毒用エタノールを使っている間、あるいは詰め替えしているほんの短い時間でも蒸発する。このとき発生する可燃性の蒸気は空気より重いとされている。つまり低い所に滞留しやすいということだ。換気扇を回しながら、あるいは通気性を確保した状態で詰め替えるようにしよう。
消毒用エタノールが使えない場所やモノもある
ニスが塗ってあるものや皮革製品、プラスチックの中のスチロール樹脂製品などへ使用すると、変色などを招くことがある。そうした場所やモノへの使用は避けたほうがよいだろう。
8. カビの色素はエタノールでは漂白できない?

ここまで、エタノールのカビに対する効果や除去する方法、注意点などを解説してきたが、実は消毒用や無水に関わらず、エタノールには「漂白作用」がない。したがって、カビの色素まで取り除くことはできないのである。たとえ消毒できても、色だけが残れば不潔な印象になるだろう。
メラミンスポンジでこすってみる
白カビなど、フワッとしており色素も沈着しないカビならエタノールでキレイに除去できる。だが問題は素材に深く根を張り、黒っぽいシミのようになってしまうことがある黒カビだ。消毒用エタノールで色素が落ちないときは、メラミンスポンジでこすってみよう。
ただし樹皮加工されたプラスチックなど、素材によっては傷つくことがある。その場合は歯ブラシや布を使って優しく落とそう。
ただし樹皮加工されたプラスチックなど、素材によっては傷つくことがある。その場合は歯ブラシや布を使って優しく落とそう。
漂白作用のあるカビ取り剤を使う
消毒用エタノールの代わりに、漂白作用のあるカビ取り剤を使う方法もある。カビキラーなどだ。こちらは使用できる場所や素材、使う際の注意点などが商品によって異なるため、パッケージをよく読んで正しく使おう。なお消毒用エタノールを使ったあとにカビ取り剤を使う場合は、完全に乾燥したのを確認してから塗布しよう。
9. カビ対策におすすめのエタノール4選

カビの除去や予防におすすめのエタノールを4つ紹介しよう。
ドーバー酒造「パストリーゼ77」
手に入りにくくなっているが、エタノール77%と消毒に最適な濃度に調整されている。食品に直接吹きつけてもOKなど安全性も高い。
健栄製薬「消毒用エタノールIPA 500ml」
濃度76.9~81.4vol%なので、希釈などせずにそのまま使用できる。持ち運びに便利な少量ボトルや、スプレーヘッド付きのものもある。
自然化粧品研究所「エタノール」
こちらは濃度95.1~96.9vol%のエタノールだ。やや濃度が高めなので、カビの除去に使う際は精製水で希釈するとよいだろう。
健栄製薬「無水エタノール」
ドラッグストアでも手に入りやすい、無水エタノールである。こちらはもっとも濃度が高いためカビを除去するなら希釈が必要だ。
10. エタノールの特徴を知って上手にカビ対策を

エタノールがカビの除去に有効である理由、エタノールの種類や使い方、注意点などを網羅的に解説してきた。エタノールにはカビの色素を落とす作用はないため、黒カビのシミのようなものは漂白剤を使って落としていこう。キレイに除去できたあとはしっかり予防することも忘れないようにしよう。
結論
カビの除去には消毒用エタノールがおすすめだ。シュッと吹きかけて拭き取るだけで表面のカビを除去できる。キッチンやお風呂、畳などいろいろな場所に使用できる点も便利だ。火の気に注意する、通気性を確保するといった注意点も正しく理解し、安全に使ってほしい。
(参考文献)
- 1:東京消防庁<安全・安心><日常生活における事故情報><消毒用アルコールは正しく取扱いましょう!>
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/nichijou/nichijou/arukouru.html