目次
- 1. 「酸化した油」には毒性がある
- 2. 酸化した油を摂取するリスクとは?想定される健康被害
- 3. 酸化した油の特徴と見分け方
- 4. 油が酸化してしまうのを防ぐ方法は?
- 5. 酸化した油の正しい廃棄方法
- 6. 油の保管方法に気をつけて期限内に使い切ろう
- ※1:酸化した油を食べるとどのような影響がありますか_|お客様相談窓口|植物のチカラ 日清オイリオ
https://www.nisshin-oillio.com/customer/faq_detail.html?id=4000171&category=852 - ※2:さいたま市 健康科学研究センター サイエンスなび/食用油の劣化について
https://www.city.saitama.jp/sciencenavi/kurashi/001/p008623.html - ※3:京都市:資源物(てんぷら油など)の拠点回収
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000000674.html
1. 「酸化した油」には毒性がある

そもそも酸化した油とはどういった状態なのか、なぜ酸化してしまうのかといった基本的なところから解説していこう。
酸化した油とは
未開封の状態であれば酸素に触れることはないが、一度でも開封すれば酸素に触れる。ボトルなどに酸素が入ってしまうためだ。酸素のみならず熱や光、そのほか微生物などによって劣化することもある。したがって保管場所や保存方法なども大切になってくる。
酸化するとどんな状態になる?
詳しくは「見分け方」でお伝えするが、油が酸化すると分解が起こり、においや味、色などに変化(劣化)が現れるほか、なかなか消えない泡が発生することもある。分解された物質たちが結合することで重合物(分子量が大きい化合物)となり、粘りが出てくることもある。もちろん栄養価も低下する。
毒性を持つ「過酸化脂質」が作られる
酸化した油から、毒性を持つ過酸化脂質という物質が作り出されることがある。口にすることで、後述するような健康被害をもたらすおそれも生じるため、酸化した油、劣化した油は極力、口にしないように注意することが大切だ。とくに、揚げ物などに一度使った油は酸化しやすい。繰り返し使用する場合は一段と注意が必要だ。
酸化した油を再利用する方法はない
基本的に一度酸化した油は元には戻らないと思っておこう。酸化を抑える業務用の還元装置はあるが、ご家庭で使用するのは現実的ではない。たとえば揚げ物と一緒に梅干しを2個ほど投入する方法ならご家庭でも実践できるかもしれない。だがあくまで長持ちさせられる可能性がある程度なので、すでに酸化した油や何度も使った油は早めに処分するようにしよう。
2. 酸化した油を摂取するリスクとは?想定される健康被害

酸化した油、劣化した油を摂取した場合、どのような健康被害が想定されるのだろうか?
胸焼けや胃もたれといった症状が現れる
酸化した油を摂取した場合、気分が悪くなったり胸焼けがしたり、胃もたれしたりすることがある。
食中毒のような症状を招くこともある
異臭がするほど酸化した油(劣化した油)を摂取したケースでは、下痢や嘔吐など食中毒のような症状が現れることがある。
【肝臓に負担がかかる、動脈硬化のリスクが生じるおそれも】
酸化した油を分解するため肝臓に負担がかかり、血管にもダメージを与えることがある。ひいては動脈硬化といった、深刻な病気のリスクも高くなる。こうしたことからも、酸化した油は摂取しないように心がけるべきだろう。
普通に口にできる程度であれば問題ない?
たとえば日清オイリオによると「普通に食べられる程度であれば直ちに害があるとは考えられない(※1)」とのことなので、どの程度酸化しているかにもよるだろう。酸化した油でも、多少であれば体が毒素を分解してくれる可能性がある。だが素人ではなかなか酸化の「程度」を判断することが難しい。適切に判断するためにも、酸化した油の見分け方を覚えておくことが大切だ。
3. 酸化した油の特徴と見分け方

酸化した油を摂取することによる健康被害を回避するためには、その油が安全に使用できる状態であるかを見極める力が必要になる。酸化した油を見分ける4つのポイントを解説しよう。(※2)
色が濃くなる
油の種類によって程度に差があるが、基本的に新しい油には透明感がある。色が濃くなるのは酸化が進んでしまっている証拠と捉えよう。鍋などに注いだとき、底が見えづらいと感じたら使用せず、すぐに処分するなどしよう。
異臭がする
見た目で分からなくても嗅覚で判断できることがある。加熱した際「不快な油臭さ」を感じた場合、酸化した油であることが考えられる。もったいない気持ちもあるかもしれないが、直ちに調理を中断し廃棄しよう。
泡がなかなか消えない
食材を油の中に入れると周りに泡が発生する。正常な油であればすぐに消えるはずだが、なかなか泡が消えないときは酸化した油であると判断しよう。細かい泡が長く生じている場合などはとくに、酸化がかなり進んだ状態なので使用しないほうが賢明だ。
粘り気が強くなる
正常な油はサラサラしていて粘り気も強くない。不自然な粘りを感じた場合、酸化していると考えてよいだろう。粘り気は冷めたときのほうが分かりやすいので、使用前など容器に移し替えるタイミングでチェックしておきたい。
4. 油が酸化してしまうのを防ぐ方法は?

油の酸化を完全に防ぐことは難しいが、工夫次第で少しでも酸化を遅らせるといったことは可能だ。たとえば次のようなポイントを押さえておこう。
空気に触れないようにする
空気に触れると酸化が進むため、ボトルであればキャップを閉じる際に中に入った空気を押し出す(ボトルを軽くつぶすようなイメージ)などしよう。揚げ物に使った油を保管する場合は、空気に触れにくい口が小さい容器などを選び、しっかりふたを閉めることが大切だ。容器の中に空気が溜まっているのもよくない。口切りでちょうどくらいの容器を選ぶこともおすすめしたい。
光や熱を避けて冷暗所で保管する
直射日光はもちろんだが、蛍光灯といった照明の光でも酸化が進んでしまうことがある。とにかく「光」は極力避けるといった工夫が必要になってくるだろう。同じように熱も酸化を加速させる要因となる。コンロの近くなどは使いやすいが、温度が上がりやすい。万が一燃え移ったときも非常に危険だ。面倒かもしれないが、安全を最優先して冷暗所に保管するようにしてほしい。
開封済みの油は期限内にできる限り速やかに消費する
一度開封した油は、どうしても酸化してしまう。「空気に触れさせない」「光や熱を避ける」といったことももちろんだが、やはり開封済みの油は期限内に、それもできる限り早いうちに使い切るのがベターだろう。
揚げ物に使った油を繰り返し使うなら何回まで?
揚げ物に使用した油は一度で廃棄せず、繰り返し使用するというご家庭も多いだろう。だが上述のように一度でも使用すれば酸化が始まる。変色や異臭、粘りなどが見られなければ使えるかもしれないが、それらが認められなかったとしても酸化が進んでいることは想定できる。
まったく品質に問題がなく、安全に使用できることが確実と分かるのであれば2〜3回ほどは使えるかもしれないが、そうでないときはその都度、新しい油を使うなどしよう。
5. 酸化した油の正しい廃棄方法

酸化した、していないに限らず、油には適切な廃棄方法がある。この機会におさらいしておこう。
新聞紙や布に染み込ませて捨てる
ビニール袋や牛乳パックに新聞紙または布などを敷き詰め、酸化した油を流し込んで染み込ませる。油は十分に冷ましてから流し込むこと、自然発火を防ぐための水も一緒に入れることなどがポイントだ。最後に、輪ゴムやガムテープを使って口をしっかり閉じて「燃えるごみ」に出そう。
市販の油凝固剤で固めて捨てる
市販の油凝固剤で固形にしてしまえば、そのまま「燃えるごみ」に出せる。凝固剤を溶かす必要があるため、酸化した油が熱い状態のうちに投入しよう。ただし詳しい使用方法は商品によって異なる。詳しくはパッケージなどの説明書きをご確認いただきたい。
廃食用油の回収を利用する
自治体によっては廃食用油を無料回収している(※3)。お住まいの自治体のホームページでチェックしてみよう。
流しにそのまま捨てるのは絶対にNG
「少量だから」「面倒だから」などと、シンクの排水口に酸化した油をそのまま流してしまうことだけは絶対に避けよう。冷えて固まると排水管が詰まるおそれがあるし、環境にも悪影響をおよぼすおそれがある。上述した方法を参考に、適切に廃棄してほしい。
6. 油の保管方法に気をつけて期限内に使い切ろう

酸化した油を摂取することによって想定される健康被害や、酸化しているかどうかの見分け方などを解説してきた。劣化した油を摂取して健康被害を招くのを防ぐためにも、油は適切に保管すること、そして期限内のできる限り早いうちに消費しきることを心がけよう。
コスパを優先して大ボトルの油などを購入してしまうと、期限内に使い切れないこともある。コスパの点は低下するかもしれないが、期限内に使い切れるサイズのボトルを購入するといったことも検討しよう。
結論
酸化した油から毒性の強い「過酸化脂質」が生まれる。摂取するとさまざまな健康被害をもたらすリスクが生じるため、少しでも異常を感じたときは速やかに処分しよう。使うたびに見た目やにおい、粘度などをチェックすることで酸化の度合いを判断できるようになるはずだ。保管方法にも気をつけ、期限内に使い切るようにしよう。
(参考文献)