1. 静電気とは?
家のドアを開けるときや人の手に触れるときに、バチッとした静電気の痛みが走った経験は誰しもあるだろう。そもそも静電気とはどういった現象なのか、その対策方法をみつけるためにもまずは静電気のメカニズムについてみてみよう。
静電気とは止まっている電気のこと
すべての物質はプラスとマイナスの電子を持ち、バランスがとれた状態になっている。それが摩擦や接触などによって電子が移動してバランスが崩れ止まった状態で物体に留まるため、静電気が蓄積されてしまうのだ。
静電気が発生する原理
静電気は電子のバランスが崩れることによって、プラス、マイナスそれぞれの電子が過剰に帯電した「プラスの静電気」と「マイナスの静電気」になる。バランスが悪い電子は元のバランスに戻ろうとするため、プラス、マイナスが触れ合ったときに電子を移す放電という現象でバランスを戻すのだ。
2. 静電気が引き起こす弊害とは?
痛みをともなうような静電気は、家庭用コンセントの30倍にもなる3,000ボルトもの電気を帯電しているといわれている。そんな静電気は痛みを感じて不快なだけではなく、さまざまなトラブルのもとになるので対策が必要だ。
放電によって火災が発生する
消防庁の令和元年版消防白書(※1)によると、危険物施設で発生した火災の着火原因2位として静電気の火花が挙げられている。静電気が放電する際に生じる火花によって、引火してしまう恐れがあるのだ。ガソリンスタンドでも静電気除去シートなどの対策がされているのを見たことがある人もいるだろう。ガソリンや可燃性ガスのような燃えやすいものを扱う施設や、発火しやすい粉塵が発生する工場において静電気は命取りなのである。
ホコリや花粉を引き寄せる
精密機械の製造現場など、品質や衛生面を厳しく管理される環境においても静電気は大敵だ。人が感じないレベルのわずかな静電気でさえ、微細なホコリを引き付け、製品の品質を損ねてしまうため、対策が重要視されている。
3. 静電気をためないための対策
やっかいな静電気を発生させないためには、まず身体に帯電させないことが重要だ。静電気を未然に防ぐために静電気を蓄えやすい人の特徴と対策を紹介しよう。
部屋の湿度を上げる
静電気には乾燥対策が効果的だ。湿度が高ければ、空気中の水分によって自然と空中放電される。水は電気を通しやすく、湿度が高ければ高いほど放電されるため、部屋の湿度を上げて対策するとよいだろう。
摩擦が起こりにくい洋服を着る
静電気の原因のひとつである摩擦による帯電を減らすのも対策のひとつだ。静電気にはマイナスとプラスの電子があり、それぞれ帯電しやすい素材がある。たとえば、アクリルやポリエステルはマイナスに帯電しやすく、ナイロンやウールはプラスに帯電しやすい。相反する素材同士を接した状態で着用すると、摩擦によって静電気を発生させやすくなってしまう。そのため、重ね着の際には性質が同じ素材の洋服を着ることで静電気対策になるので、意識してみよう。
柔軟剤を使う
柔軟剤を使うことによって、含まれる界面活性剤が衣類の表面を滑らかにして摩擦を起こしにくくするため、静電気の対策になる。洗濯をしなくても、界面活性剤が入った静電気防止スプレーでも同様の効果が得られるのでおすすめだ。
金属を触る前に放電する習慣をつける
静電気が起こりやすい金属に触れる前に、身体にたまった静電気をゆっくりと逃がして放電しておく習慣をつけるのもよいだろう。電気を通しにくいコンクリートの地面やドアの面、壁などに手のひら全体で触れることで放電できるので、こまめに電気を逃がしておくとバチッとくることを防ぐことができる。
肌を保湿する
肌が乾燥しやすい人は静電気をためやすいので注意が必要だ。静電気を水分によって放電が促されるので、肌自体の保湿も重要である。外気に触れやすい手足や首、顔だけではなく、洋服に隠れる部分も冬場は乾燥しやすいため、お風呂上りなどにまとめて保湿するとよいだろう。
力を入れて身体を洗わない
力を入れて身体を洗うことによって、肌の皮脂膜まで落としてしまい肌の乾燥につながる。汗をかく部分や汚れやすい部分以外はシャワーで洗い流すだけでも十分に汚れを落とすことができるので、肌の乾燥を防ぐためには身体の洗い方も気を付けよう。
結論
静電気に乾燥と摩擦は大敵だ。静電気発生のメカニズムが分かれば対策方法も明確である。摩擦が起こりにくい服を着たり、肌の保湿をしたりするなど、手軽に試せる方法を紹介したのでぜひ試してみてほしい。静電気の痛みは些細なものかもしれないが、防げるのであれば痛みは避けたいところだ。生活の中でも乾燥と摩擦対策をして、不快な静電気を防ごう。
(参考文献)
※1出典:総務省消防庁「1.火災事故 | 令和元年版 消防白書 | 総務省消防庁」