目次
1. 脂質・脂肪の基本をおさらい

脂質制限についての解説に入る前に、まずは脂質について知っておこう。脂質とは炭水化物やたんぱく質と並んで、体内のエネルギー源や、細胞膜を構成する成分になるものである(※1)。植物油やバター、乳製品、肉・魚など多くの食品に含まれている。
脂質は摂取しすぎると肥満につながり、生活習慣病の原因にもなり得るため、脂質を摂りすぎている場合は脂質制限をする必要がある。一方で脂質が不足してしまうと抵抗力低下につながることもあるので、脂質制限のしすぎも避けるべきだ。
2. 脂質制限と糖質制限の違い

ここからは脂質制限だけでなく、ダイエット中の方がよく耳にするであろう糖質制限についても見ていく。どちらがより効果的かについては専門家の間でも意見が分かれているものの、どちらも効果は見込めるため、自分に合ったダイエットのやり方を選ぶようにしよう。
脂質制限ダイエットとは?
脂質制限ダイエットの大きな特徴といえるのが、カロリーを減らしやすいということだ。脂質1gごとのカロリーは9kcalで、たんぱく質や糖質の4kcalと比べても多い。つまり、脂質制限をするだけで普段よりも摂取カロリーを減らせるというわけだ。ノンオイルの調味料を使ったり、マヨネーズを控えたりするだけでよく、お腹にたまるごはんなどの炭水化物は食べられるので取り組みやすいといえるだろう。
糖質制限ダイエットとは?
糖質制限ダイエットは太る原因となりやすい、ごはんやパンなどを制限する方法だ。脂質は摂りすぎても皮膚や髪などの細胞になる可能性があるが、糖質は摂りすぎると確実に体脂肪になるため、糖質は脂質に比べて太る原因になりやすい。そのため、脂質制限よりも痩せやすいといわれている。主食を制限するダイエットなので、満腹感を得るために脂質やたんぱく質を過剰摂取しないよう注意してほしい。
3. 成人男性の脂質の必要量

ここでは、成人男性にはどれくらいの脂質量が必要なのか見ていこう。脂質制限の参考にしてほしい。
1日のエネルギーの20~30%を目安にする
18~69歳の成人男性の1日のエネルギー基本量は2,000~2,400kcalである(※2)。このエネルギー量のうち、20~30%を脂質のエネルギーから補うのがよいとされている。成人男性にあてはめると、1日の脂質目標量は60~90g程度。脂質量は油大さじ1杯で12g、赤身の肉100gあたりで5g、脂が多い部位の肉100gあたりで20gとなっている。
脂質制限中の脂質量に関しては、1日の摂取エネルギーの20%以下に抑えるのが好ましい。30~49歳の男性の場合、1日あたりの脂質量を60g以下に制限する必要がある。ちなみに市販の冷凍フライドポテト100gを揚げると、その脂質量は52.9g(※3)。簡単に食べられそうな量だが、その脂質量は脂質制限中の1日分の脂質量に迫る勢いだ。とくに油ものが好きな方は、普段食べるメニューを見直さなければならないだろう。
4. 脂質制限ダイエットの注意点

最後に、脂質制限ダイエットをしていくうえで注意しておきたいことについてまとめる。
その1.過度な脂質制限は控える
極端な脂質制限は、ホルモンバランスが乱れたり肌が荒れたりといった、身体の不調の原因となる場合がある。
もちろん、脂質量の多い脂身の肉や加工肉、インスタント食品、ファストフード、洋菓子、ナッツやチーズ、マヨネーズなどの摂取は控えておきたい。また揚げたり炒めたりといった調理法は避ける。さらに油を摂る場合には、オリーブオイルやアボカドなどに含まれる一価不飽和脂肪酸、青魚やえごまなどに含まれる多価不飽和脂肪酸といった良質な油を摂るようにしよう。
これらを意識して、適切な脂質制限に取り組んでほしい。
その2.糖質制限などと併用しない
「早く痩せたいから、脂質制限と糖質制限を同時にやってみよう」と考える方もいるかもしれない。理論上は同時に行うことも可能だが、糖質も脂質も制限してしまうと食べられる食材がかなり少なくなってしまう。そうするとバランスのとれた食事ができず、カロリーや栄養が不足するのだ。
一方で、ダイエット中に起こりがちな栄養の偏りや停滞期を解消するためにも、脂質制限と糖質制限を交互に行うのはよい方法だ。どちらが自分に合ったダイエット方法か見極めるという意味でも、まず交互に試してみるとよいだろう。
結論
脂質制限ダイエットは大幅にカロリーをカットできるため、効果的なダイエット方法だ。同じく効果的な糖質制限もうまく取り入れながら、過度にやりすぎることのないよう日々の食生活の中で脂質制限を行ってみてはいかがだろうか。
(参考文献)
※1出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「脂肪/脂質」
※2出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※3出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」