1. サボテンにそっくりなテキーラの原料とは

テキーラは、日本から1万km以上も離れた場所にあるメキシコにゆかりのある蒸留酒である。テキーラという名前は、地名からとったものだ。メキシコのなかでは、ハリスコ州・ナヤリ州・タマウリパス州・ミチョアカン州・グアナファート州とたった5州しか、テキーラという名前を付けられる権利がない。
テキーラが製造されはじめたのは1700年代のことで、山火事のあとにある植物から豊潤な独特の香りが漂っていることが発見されたという説が有力だ。この植物が竜舌蘭(りゅうぜつらん)といって、英語では「アガヴェ」と呼ばれる。アガヴェの球茎には糖分が多く含まれており、球茎から絞り出された汁を発酵・蒸留させて作られたものがテキーラとなる。
2. テキーラの原料アガヴェとはどんな植物?

テキーラの原料となるのは、「ブルーアガヴェ」という品種である。ブルーアガヴェは6〜8年かけて生育し、大きなものでは直径70〜80cm、重さは30〜40kgにまで成長する。
ブルーアガヴェに適した生育環境は、海抜1500m以上、晴天日が年間250日以上とされている。本来ブルーアガヴェは長い葉を持つ植物だが、葉を切り落としたブルーアガヴェの根の部分は、見ためがパイナップルに似た様相であることから「ピニャ」と呼ばれる。
テキーラのラベルにはパイナップルのイラストが描かれているものも多いが、これはピニャに由来する。ちなみに日本で低GI値甘味料として知られる「アガヴェシロップ」も、テキーラと同様にアガヴェから抽出される。
ブルーアガヴェは大変大きな植物なので、ピニャを収穫するのもさぞかし大変そうな印象がある。ピニャの収穫は主に「ヒマドール」と呼ばれる農夫によって行われる。ヒマドールは「コア」と呼ばれる長い柄と鋭い刃が特徴の特殊な農具を用いて、1株あたりにつき、1分ほどで作業を終わらせてしまうそうだ。ヒマドールはテキーラ地方では昔から存在する歴史のある職業だ。親子代々で手技を伝えていくことで、テキーラの原料となるピニャの収穫が行われている。
3. テキーラの条件や製造方法

テキーラはブルーアガヴェが生育するのに長い年月を要するだけではなく、名乗れる地域が決まっているなど、条件が厳しい酒である。また、原料比率が51%以上と決められており、アガヴェの価値がテキーラの質を左右するといっても過言ではないだろう。
原料にブルーアガヴェを100%使用しているテキーラは「100% De Agave」と呼ばれるが、純度51%に砂糖やぶどう糖を加えて補糖されたテキーラは、かつて「ミクスト」と呼ばれていた。そのほか、熟成期間や貯蔵熟成の有無などによって、細かくタイプ分けされている。
ブルーアガヴェからテキーラを製造する工程は、主に次のとおりだ。まず、ブルーアガヴェから収穫したピニャを大きな斧で割り、圧力鍋で蒸すことでデンプンを分解し、糖分を抽出する。その後、液を発酵させて単式蒸留器で2度蒸留し完成だ。最後に樽に入れて熟成させる場合もある。2回の蒸留というのは、規定によって決められているため、行われなければテキーラと名乗れない。
結論
テキーラは生産地や原料の比率、製造方法などにおいて細かく規定されている。また、テキーラの原料となるブルーアガヴェは、伝統的なメキシコの農夫であるヒマドールの熟練した技によって収穫されるものだ。テキーラは喉が焼けつくような刺激的な酒で、カジュアルな飲み会でも盛りあがること必至である。テキーラが生まれた背景や原料について深く知ると、より楽しめるだろう。