1. テキーラとは?原料はサボテンではなかった!
そもそもテキーラとはどういったお酒なのか、その定義を解説するとともに原料についても紹介しよう。
テキーラとは
テキーラが作られ始めたのは1700年代、実に300年もの歴史を持つお酒である。メキシコ・ハリスコ州、グアダラハラ市近郊の「テキーラ」という地域の地酒だ。すなわち世界的に認められた原産地呼称であり、テキーラ地域で作られたもののみが「テキーラ」を名乗ることができる。
原料はアガヴェという植物
サボテンやアロエが原料と思っている方も多いかもしれないが、テキーラの原料は「竜舌蘭(リュウゼツラン)」と呼ばれる植物のひとつ「アガヴェ」である。正式名称を「agave azul tequilana weber」、メキシコでは「Maguey」、英語では「Blue Agave」などという。単に「アガヴェ」とすることも多い。
サボテンでできたテキーラはあるのか?
テキーラは糖分の高い原料から作られる。アガヴェは「アガヴェシロップ」という製品があるほど糖分が高いためテキーラに適している。一方のサボテンは本来、非常に糖分が少ない植物である。香りも糖分も少ないサボテンはテキーラには適さないというわけだ。したがってサボテンを原料とするテキーラはないということになる。
サボテンやアロエ、パイナップルが原料といった勘違いが広まった理由
テキーラの原料はサボテンやアロエ、あるいはパイナップルであるという誤った認識が広まった理由として、アガヴェの生育地や姿がそれらと似ていることが挙げられる。アガヴェはいわゆる「多肉植物」でありサボテンやアロエも仲間である。これらの植物はいずれも乾燥地に生育し耐暑性が高いのが特徴だ。似ているため誤った認識をされたと考えるのが自然だろう。
2. テキーラの原料「アガヴェ」について詳しく解説
テキーラの原料となるアガヴェについてもう少し解説しよう。
アガヴェとは
上述のようにアガヴェは多肉植物の一種で、日本では竜舌蘭(リュウゼツラン)と呼ばれることが多い(厳密には竜舌蘭の一種がアガヴェである)。アガヴェにも種類があり、テキーラの原料となるのは「agave azul tequilana weber(アガヴェ・アスール・テキラーナ・ウェーバー)」という1品種のみである。英語では「Blue Agave(ブルーアガヴェ)」といい、一部の地域以外で育ててはいけないという法律が制定されている。それほどテキーラの基準は厳しいもなのだ。
ちなみにアガヴェは、60年育て続けてもたった1度しか花が咲かないといわれており、他品種との交配を避けるため「株分け」といった方法で育てられる。
ちなみにアガヴェは、60年育て続けてもたった1度しか花が咲かないといわれており、他品種との交配を避けるため「株分け」といった方法で育てられる。
テキーラに使用するのはアガヴェの「茎」
テキーラはの原料となるのはアガヴェの茎の部分である。葉を削ぎ落とすとまるでパイナップルのような形になることからメキシコでは「ピニャ」と呼ばれている(スペイン語でパイナップルを意味する言葉)。ピニャを粉砕して搾ることでできる糖蜜に酵母などを加えて発酵させ、2回以上蒸留していったんアルコール度数を60度以上にする。その後、加水してアルコール度数を下げていくといった製法が採られている。なおテキーラのアルコール度数は、おおよそ35〜55度の間と法律で定められている。
3. 原料がアガヴェ100%のテキーラは「プレミアムテキーラ」という
テキーラにもいろいろな種類があるが、中でもアガヴェ100%のものをプレミアムテキーラと呼んでいる。
プレミアムテキーラとは
アガヴェは収穫までに約6年という長い歳月を必要とする。そのアガヴェだけで作るとなるとかなりの時間や手間がかかることから、プレミアムと名付けられている。混ぜ物をしないプレミアムテキーラは、アガヴェの風味を存分に味わえるのが特徴だ。
4. トウモロコシもテキーラの原料になるってホント?
お伝えしているようにテキーラの原料はアガヴェである。だが成長速度が遅く、100%アガヴェだけで大量生産するは難しいのも現実だ。そのためトウモロコシを使用することもある。
トウモロコシを使用したのが「ミクストテキーラ」
アガヴェとトウモロコシの糖蜜を使用しているテキーラがミクストテキーラだ。とはいえ基準では51%以上アガヴェを使わなければならないため、トウモロコシはあくまで補佐的な原料である。したがってトウモロコシのみのテキーラはないので安心してほしい。
ミクストテキーラの特徴
ミクストテキーラにはさまざまな風味付けができる。たとえばバニラやイチゴなどのフレーバーが付いたもののほか、シトラス風味でスッキリ飲むことができるテキーラもある。お好みで風味を選べるうえ、アガヴェのクセが少ないので飲みやすいのが特徴だ。アガヴェだけが原料のテキーラよりも安価なものが多いことから、テキーラがどんなものか少し飲んでみたいという方にもおすすめできる。
5. 「虫」が入っているテキーラがある?
「テキーラには虫が入っている」という話を聞いたことがあるかもしれない。だが実際のところそのようなテキーラはない。あるとすれば、テキーラの親戚で虫が入ったお酒「メスカル」であろう。
メスカルとは
アガヴェを主原料とするメキシコの蒸留酒の総称を「メスカル」という。すなわちテキーラもメスカルのひとつということになる。だがのちに原産地呼称「テキーラ」が認められたことから、現在ではテキーラを除く蒸留酒の総称をメスカルとするのが一般的だ。
ブルーアガヴェ以外を使えないテキーラに対し、メスカルはブルーアガヴェを含めた50種類以上のアガヴェを使って醸造することができる。またテキーラがアガヴェを搾って糖蜜を作るのに対し、メスカルはアガヴェを加熱して発酵させる。そのためスモーキーな風味に仕上がるのが特徴だ。加えて瓶詰めや醸造の際、唐辛子や虫などを入れてもよいとされている。
ブルーアガヴェ以外を使えないテキーラに対し、メスカルはブルーアガヴェを含めた50種類以上のアガヴェを使って醸造することができる。またテキーラがアガヴェを搾って糖蜜を作るのに対し、メスカルはアガヴェを加熱して発酵させる。そのためスモーキーな風味に仕上がるのが特徴だ。加えて瓶詰めや醸造の際、唐辛子や虫などを入れてもよいとされている。
虫が入っている理由
メスカルの中に入っている虫は「グサーノ(芋虫)」と呼ばれている。一説には生きた虫を入れて即死させ、そのアルコール濃度が本物であることを証明していたといわれている。昔はほぼ水のような偽物が売られていたこともあったため、本当にアルコールかどうか証明するために入れていたということだろう。一方、幸運のチャームとして入れているという説もある。グラスにメスカルを注いだ際、グサーノが入ればその人に幸運が訪れるといわれることもある。
虫はどうすればいい?
メスカルに入っている虫は食べても体に害はない。ただし苦いため好まない方も多い。そもそも見た目から口に入れるのは躊躇する方も多いだろう。ただしメキシコでは珍味として食べられており、中には唐辛子や塩とともに乾燥させた虫が入った調味料もあるほどだ。とはいえ日本人には馴染みのない食べ物のため、無理に食べたり飲み込んだりしなくてもよい。
結論
テキーラの原料は「アガヴェ」と呼ばれる植物のひとつだ。サボテンやパイナップル、アロエなどと似ているが異なるため覚えておこう。テキーラは原産地呼称が世界的に認められており、蒸留方法やアルコール度数などかなり厳しい条件のもとで作られたお酒である。テキーラを飲む機会が訪れたら、ぜひこうしたことも思い出してみてほしい。