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醸造アルコールはどんなもの?日本酒に入れられるのは理由があった!

醸造アルコールはどんなもの?日本酒に入れられるのは理由があった!

投稿者:ライター 岡本優美(おかもとゆみ)

鉛筆アイコン 2021年11月 4日

醸造アルコールと聞くと、何を思い浮かべるだろうか。醸造アルコールを混ぜてあると聞くと敬遠する人も一定数いそうだ。しかし醸造アルコールはそれ自体に何の害もないお酒である。むしろ、醸造アルコールを入れることによるメリットも多い。醸造アルコールについて正しい知識を持つことで、よりお酒選びに詳しくなろう。

  

1. 日本酒の添加物「醸造アルコール」とは

まず、醸造アルコールとはどのようなものか、本来の意味や材料などを紹介しよう。また、意外な使い途についても紹介する。

醸造アルコールとは?

醸造アルコールの定義は、「アルコール度数45度以上の食用エタノール」である。材料はサトウキビから砂糖を作るときの搾りかすや、とうもろこし、米などの糖度の高い農作物だ。酵母などを入れて発酵させた原料を絞って原酒を作る。それを蒸留して作られるため、いわゆるスピリッツと同じ分類だ。無味無臭で純度の高い、エタノールらしいお酒である。

醸造アルコールの利用法

醸造アルコールは主に日本酒とチューハイに入っていることが多い。特に、チューハイのお酒の成分は基本的に醸造アルコールだ。また、日本酒に入れられることもある。パック酒だけでなく、吟醸酒などにも入れられることが多い。また最近では、77度の消毒用アルコールとしても使える醸造アルコールが販売されている。これは消毒用にも使うことができるお酒だ。

2. 日本酒に醸造アルコールを使用する目的

日本酒の成分表記をよく見ると、醸造アルコールが入れられているものがある。さらによく見ると、パック清酒などだけでなく、大吟醸にも入っていることに気づくだろう。日本酒に醸造アルコールを入れるきちんとした理由を紹介しよう。

醸造アルコールは伝統的な製法

江戸時代から、日本酒に他のお酒を入れるということが行われてきたというのは前述の通りである。「柱焼酎」という製法で、日本酒の質を均質化するためにも醸造アルコールは必要であった。伝統的な製法の日本酒が醸造アルコールを使う方法なのである。しかし海外ではアルコール強化のお酒は別物とされることが多い。そのため同じ日本酒として受け入れられにくいという現状もある。

醸造アルコールは吟醸酒の香りを守る

純米酒以外の日本酒は、醸造アルコールが入っている。つまり醸造酒や吟醸酒、普通酒が相当する。吟醸酒は大吟醸など、一般的に高価で美味しいとされるお酒が含まれる。この吟醸酒の美味しさは醸造アルコールのおかげだ。「吟醸香」というフルーティで華やかな特有の香りは日本酒特有のものなのだが、水には溶けずアルコールには溶けるという性質を持つ。そこで日本酒のもろみを絞る前に醸造アルコールを混ぜて絞ることで、香りが溶け込み吟醸香がしっかり残るのだ。

醸造アルコールの利点いろいろ

日本酒に醸造アルコールを混ぜて絞るという行為には、他にもさまざまなメリットがある。醸造アルコールは純度が高いため腐りにくい。また合成アルコールではなく食用アルコールなので、体に悪いものは入っていない。さらに度数を上げて辛口にしつつ、香りには一切影響しないという優れものなのである。

3. 醸造アルコールは頭痛や悪酔いの原因になる?

醸造アルコールに対する悪い印象を持つ人は多い。これは醸造アルコールで日本酒を水増ししていた時代の名残りである。醸造アルコールが頭痛の原因ではないことや、どうしてお酒を飲んだら頭痛がするのかを紹介しよう。

醸造アルコールの古今

醸造アルコールの悪いイメージができたのは、第二次世界大戦中に作られた「三増酒(さんぞうしゅ)」やメタノールで作られた「バクダン」である。三増酒は今までの米の量で今までより3倍の清酒を作ることができるとして作られた。糖類や調味料、醸造アルコールなどを大量に混ぜ込むことで戦時中の物資不足を解消しようとしたのである。またメタノールは現代では禁止されている。失明の危機があるが、戦後の貧困の中で飲まれてきたお酒なのである。

三増酒時代の醸造アルコール

三増酒は第二次世界大戦中の物資の少ない時代に生まれ、戦後の経済成長の中でもまだ発展していた。1960年代に米の消費量が前年度よりも減少するまで、米は余ることが少なかったのである。そのため米が余った1960年代になって純米酒の復興運動が起こるようになっていた。そもそも醸造アルコールなど、不要なものを大量に入れることで品質が落ちることはメーカーも把握していた。そのため1980年代には日本酒消費の減少もあり、品質を向上させたいと考えたメーカーが次々と三増酒を廃止したのだ。最終的に、三増酒というジャンルのお酒がなくなったのは平成に入ってから。2000年代には生産中止となり、今では販売されていないのである。

頭痛の原因は醸造アルコールではない!

醸造アルコールが入ったお酒を飲むと頭痛がしたり、悪酔いしたりするという俗説があるが、実際は間違いだ。お酒を飲んで頭痛がするのは主に飲み過ぎによるものが多く、アルコール分解に体が追いついていないことが多い。また悪酔いも自分の許容量を超えて飲むことが原因であることも多い。醸造アルコールが入ったお酒が、頭痛の直接の原因ではないのだ。お酒を飲んで頭痛がしやすい、という人は空腹を避けてアルコール吸収を抑えよう。また水を飲むことも大切だ。飲み方に気をつけることでお酒を飲んで頭痛がするという症状は抑えられるのである。

結論

醸造アルコールは、添加物という名称も相まってよい印象を抱かない人が多い。実際、戦時中から戦後1960年代にかけては粗悪な品質のお酒に大量に使われていた。しかしさらにさかのぼって江戸時代には、品質安定化のために入れられていた。醸造アルコールを入れる方法は柱焼酎という伝統的な製法なのである。醸造アルコールはむしろ添加した方が香りがよい場合もある。醸造アルコールの表記を毛嫌いせず、一度飲んでみてほしい。
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  • 公開日:

    2020年11月11日

  • 更新日:

    2021年11月 4日

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