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日本酒の【火落ち菌】ってなに?見つけ方や具体的な対策方法を紹介

日本酒の【火落ち菌】ってなに?見つけ方や具体的な対策方法を紹介

投稿者:ライター 森本泰斗(もりもとたいと)

鉛筆アイコン 2021年11月 1日

日本酒の火落ち菌という言葉を聞いたことがあるだろうか。火落ち菌とは、日本酒にとって悪影響を及ぼす菌のことを指し、全国の蔵元ではこの火落ち菌を繁殖させないためにさまざまな対策がとられている。本記事では火落ち菌についての基本的な解説をはじめ、火落ち菌の見つけ方や具体的な対策方法も紹介する。日本酒用語の基礎として、しっかり押さえておこう。

  

1. 火落ち菌とは?

はじめに、火落ち菌とは一体どのような菌なのか、基本的な特徴を詳しく解説する。火落ち菌が繁殖することで日本酒はどのように変化するのか、確認していこう。また本項では火落ち菌の種類や、日本酒造りの期間に食べてはいけない食品について、そして人気漫画から見る火落ち菌についても紹介する。

火落ち菌とは

火落ち菌とは特殊な乳酸菌の一種であり、とくに日本酒やワインを好み生育するという特性がある。普通は日本酒を含め、お酒にはアルコールが含まれているためほとんどの細菌は繁殖しにくいとされているが、この火落ち菌だけは別物なので繁殖を防ぐために細心の注意が必要なのだ。火落ち菌が日本酒に入り込み、繁殖すると「火落ち」という現象が起こる。火落ちが起こると日本酒が白濁したり、酸味があまりに強くなることに加え火落臭とも呼ばれる独特な特異臭が発生したりと、とても商品にはならないほどの品質劣化が起こってしまうのである。

火落ち菌の種類

火落ち菌は発酵形式により、数種類に分かれていることも特徴だ。アルコールへの耐性から順位をつけて解説すると、ホモ型真性火落菌、ヘテロ型真性火落菌、火落性乳酸菌と分かれている。ホモ型真性火落菌の場合、なんと25%ほどのアルコール度数の中でも生育できるなど、非常に厄介な種類となっている。

日本酒造りの期間にNGの食べ物とは

蔵元で働く蔵人が、日本酒造りの期間中に決して食べてはいけない食品があることをご存じだろうか。代表するものが、まず納豆である。納豆が持つ納豆菌は、石鹸や熱湯では全て洗い落とすことができず、もし麹に繁殖してしまった場合なかなか殺菌ができずに日本酒の質を大きく下げてしまうという。次に、ヨーグルトやキムチなどの発酵食品類だ。これらには非常に多くの乳酸菌が含まれており、火落ち菌もまた、含まれるうちのひとつであるといえる。ヨーグルトなどを食べることが火落ちの直接的な原因とは限らないが、日本酒造りは普段の食べ物にも気を遣うほど、厳しい環境で行われているということをよく理解しておこう。

人気漫画にも登場

石川雅之氏による人気漫画「もやしもん」の中でも、火落ち菌は登場する。主人公は「菌が見える」という特殊能力を持っており、日常生活で漂うさまざまな菌を肉眼で確認できるという設定だ。主人公が種麹屋の息子という設定もあり、さまざまな日本酒に関するストーリーが漫画内で紹介されている。火落ち菌が登場する回では、火落ち菌が日本酒に与える悪影響についての解説に加え、火落ちが原因によって蔵元が受ける大損害のエピソードなども描かれている。しかし特筆すべきは、登場する菌の可愛さである。火落ち菌もこれだけ厄介な存在でありながら、漫画内ではどこか憎めないタッチで可愛く描かれているのだ。興味があったらぜひ一度読んでもらいたい。

2. 火落ち菌はどうやって見つける?

火落ち菌は目に見えるものではないので、繁殖が始まってからではもう手遅れになってしまうものだ。では、どのようにして火落ち菌を見つけているのだろうか。本項では火落ち菌の見つけ方をふたつ紹介する。

昔ながらの方式「呑み切り」

呑み切りとは、貯蔵タンクの呑口から少量の日本酒を採取して健全な状態で貯蔵されているかということを検査したり、日本酒の味わいや香りに変化がないか調べたりする、昔ながらの方式である。火落ち菌が繁殖しやすい6月から7月頃にかけて、「初呑み切り」とも呼ばれる1回目の呑み切りが行われた後は、気温が下がり始める10月頃まで月1回ほどのペースで呑み切りを行うのが一般的だ。また、この期間内でなくても日本酒の質に疑問が生じた場合や、調合試験をする際などを対象に不定期で呑み切りが行われることもあり、これを「間呑み切り」という。呑み切りは日本酒用語でも重要な言葉である。よく覚えておきたい。

3. 火落ち菌への具体的な対策は?

最後に、火落ち菌の具体的な対策方法について解説していこう。火落ち菌を確実に殺菌することも、日本酒造りにおける重要な工程のひとつなので、しっかりと確認しておきたい。

衛生面の改善

火落ち菌の繁殖を防ぐ対策方法の前提として、まず日本酒造りの環境の改善が挙げられる。もともと日本酒は木樽を用いて仕込み、貯蔵が行われていたが木製である故に火落ち菌が繁殖しやすく、また一度菌が住み着くと完全に殺菌することが非常に困難であったという。現在は、ホーロータンクやステンレスタンクなど衛生面、機能面ともに優れたもので仕込みや貯蔵が行われているので、貯蔵中に火落ち菌が繁殖する例はほとんど見られなくなったのである。

「火入れ」で火落ち菌を殺菌

火入れとは、火落ち菌を殺菌するための重要な工程である。火入れといっても沸騰するほどの温度で火にかけるわけではなく、60度から65度あたりの温度に調整して行われる。火入れを行うことにより日本酒の発酵を抑制し、火落ち菌を死滅させるのである。火入れのタイミングは日本酒の貯蔵前と瓶詰め前の2回であり、流通するほとんどの日本酒が採用している。ちなみに火入れの回数や有無によって日本酒の種類が変わり、貯蔵前の1回だけ火入れを行うものを「生詰め酒」、瓶詰め前の1回だけ火入れを行うものを「生貯蔵酒」、一切の火入れを行わないものを「生酒」という。こちらも含めて覚えておきたい。

結論

火落ち菌という言葉はなんとなく聞いたことはあっても、これだけ日本酒に大きな悪影響を及ぼす菌であることは知らなかった、という人は少なくないだろう。火落ち菌を含め、さまざまな雑菌を繁殖させないよう注意を払いながら、丁寧に日本酒造りは行なわれているということをよく頭に留めておこう。
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  • 公開日:

    2021年2月 5日

  • 更新日:

    2021年11月 1日

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