1. クラフトジンとは?
はじめに、クラフトジンとは一体どのようなお酒なのか、基本的な特徴から解説する。クラフトジンと名乗るための定義は存在するのか、また気になる味わいや香りについても知っていこう。
クラフトジンとは
クラフトジンとは、原料や製法、産地にとくにこだわって造られる、少量生産のジンのことを指す。クラフトという英単語が「工芸」や「職人技」という意味を持つように、蒸留所によって明確に異なる個性が特徴だ。クラフトジンと名乗るための定義についてだが、実はそこに決まった定義は存在しない。ジンの定義とは、主原料にジュニパーベリーを使用することと、アルコール度数が37.5度以上であることだが、それらの条件さえ守れば、ほかにどのような素材を原料に加えても問題なく、製法や産地の指定などもないのである。つまり、クラフトジンとは定義はないものの、「多様で個性的なジン」と認識しておこう。
クラフトジンの味わいや香り
ジンの原料に使用されるハーブやスパイス、果皮などは、ひとまとめにしてボタニカルと表現されるが、クラフトジンは、これらのハーブやスパイス類などをはじめ、蒸留所によって異なる特別なボタニカルを使用して造られることが多い。日本産のクラフトジンであれば、北海道の日高昆布や、和歌山の温州みかんなど、地域の特産品が原料に使用されることも珍しくなく、銘柄によって個性が光る味わいや香りを持つことが特徴だ。いろいろと飲み比べを楽しめることもクラフトジンの魅力といえるだろう。
2. クラフトジンは普通のジンとどう違う?
クラフトジンとは、どのようなお酒なのかということを知ってもらえただろうが、実際に普通のジンとの違いを聞かれると説明が難しいものである。本項では、クラフトジンと普通のジンとの違いについて、飲み方、原料の違いから見て詳しく解説していこう。
飲み方の違い
クラフトジンとは、口に含むと鼻に抜ける豊かなアロマが特徴だ。その芳香は、「飲む香水」と称されることもあるほどで、カクテルとして飲むだけでなく、ロックやストレートで飲むことも好まれている。ジン本来の香味をシンプルな飲み方で味わえることは、普通のジンとは異なる部分といえるだろう。
原料の違い
前項でも解説したように、クラフトジンとは普通のジンとは異なり、一般的に使用されるボタニカルのほかに、蒸留所独自の特別なボタニカルが原料に使用されることが多い。一般的に流通するジンの多くはロンドン・ドライジンという種類で、カクテルベースでもおなじみのジンである。クラフトジンの場合は、ほとんどのメーカーが使用しているボタニカルをすべて一般公開しているが、意外なことにロンドン・ドライジンの場合、ほとんどのメーカーが使用しているボタニカルを一般公開していないことが特徴だ。
3. クラフトジンはどのように造られる?材料などを紹介
本項では、クラフトジンの造り方や材料などについて解説する。前項までのクラフトジンについての解説に加え、クラフトジンとはどのように造られるのか、また使用されるボタニカルについても、よく理解しておいてほしい。
クラフトジンの造り方
クラフトジンとは、定義が存在しないことからもわかるように、実際に普通のジンと造り方に大きな違いがあるわけではない。しかしそれぞれには基本的な違いがあることを覚えておこう。わかりやすく解説すると、普通のジンは大規模な蒸留所で大量生産されることが一般的だが、対してクラフトジンの場合、小規模な蒸留所で少量生産されるのが一般的である。
クラフトジンの材料
クラフトジンに使用されるボタニカルは前述の通り、ジュニパーベリーはもちろん、さまざまなスパイスやハーブ、果皮などに加え、地域特有のボタニカルが使用されることが一般的である。では、ジンの原料に使用されるボタニカルにはどのような種類があるのかというと、コリアンダーやアニス、フェンネルなどの種子や、リコリスやアンジェリカなどの根、シナモンの樹皮や、オレンジやレモンの果皮など、非常に多くの種類がある。クラフトジンとは、これらのボタニカルのほかに、独自のボタニカルを加えた特別なジンなのである。
4. クラフトジンのおすすめ銘柄
クラフトジンとは少量生産であることを述べたが、実は銘柄は世界中で非常に多くの種類がある。このことから、はじめはどの銘柄を選べばよいのか悩んでしまうかもしれない。本項では、選びやすいよう日本産のクラフトジンにしぼり、おすすめの銘柄をいくつか紹介していこう。
サントリー「翠」
サントリーの製造するクラフトジンとは、日本産のクラフトジンを代表する銘柄として広く知られている。この「翠」は、同じくサントリーのクラフトジンである「六」と並んで人気の銘柄であり、和食とも馴染みやすい柚子、生姜、緑茶を原料に使用したさわやかな味わいが特徴だ。手軽に試しやすい価格帯と、クセのない香味なので、クラフトジンとはどのようなものなのかと興味がある人は、まず手にとってみよう。
中野BC「槙」
中野BCの「槙」は、和歌山県の冨士白蒸留所で製造されているクラフトジンの銘柄だ。「槙」と書いて「こずえ」と読む。和歌山県産のコウヤマキの葉や温州みかんの果皮など、地域特有のボタニカルを使用することにこだわって造られており、口当たりがよく上品な味わいに仕上がっている。
中国醸造「桜尾」
中国醸造の「桜尾」は、広島県で100年以上の歴史を持つ酒造メーカー、中国醸造が製造するクラフトジンだ。柚子やレモンなど、広島県産のボタニカルに加え、「桜尾」の象徴でもある桜の花も原料として使用されており、和の香りあふれる上質な味わいが特徴である。
結論
クラフトジンとは名前だけは聞いたことがあっても、原料の特徴や普通のジンとの違いなどについては、知らなかったという人は少なくないだろう。とくに香味に特徴があるので、普段ジンを飲まないという人もぜひトライしてみてほしい。蒸留所それぞれのこだわりを、じっくりと味わってみよう。