1. たけのこの主な栄養価

文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には、「生たけのこ」や「茹でたけのこ」などの栄養価が収録されている。このうち、生たけのこ100gあたりの栄養価は以下のとおりである。
- エネルギー:26kcal
- たんぱく質:3.6g
- 脂質:0.2g
- 炭水化物:4.3g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸: 0.04g
・一価不飽和脂肪酸:0g
・多価不飽和脂肪酸: 0.09g - ビタミン
・βカロテン:11μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.7mg
・ビタミンK:2μg
・ビタミンB1:0.05mg
・ビタミンB2:0.11mg
・ナイアシン:0.7mg
・ビタミンB6:0.13mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:63μg
・パントテン酸:0.63mg
・ビオチン:0.8μg
・ビタミンC:10mg - ミネラル
・ナトリウム:0mg
・カリウム:520mg
・カルシウム:16mg
・マグネシウム:13mg
・リン:62mg
・鉄:0.4mg
・亜鉛:1.3mg
・銅:0.13mg
・マンガン:0.68mg
・ヨウ素:4μg
・セレン:1μg
・クロム:0μg
・モリブデン:2μg - 食物繊維:2.8g
(・水溶性食物繊維:0.3g)
(・不溶性食物繊維:2.5g)
2. 調理法別のたけのこの栄養価の特徴

たけのこの栄養価は調理方法によっても変化する。文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には、茹でたけのこ、たけのこの水煮缶詰、たけのこの塩蔵(塩抜き)の栄養価も収録されているため、それぞれの調理方法の栄養価の特徴についても確認しておこう(※1)。
茹でたけのこ
たけのこを下茹でして使うことが多い。茹でてもあまり栄養価は変化しないが、ビタミンB群やビタミンCなど水溶性ビタミンが流出してしまう。また、カリウムも100gあたり470mgと少なくなってしまう。一方、水分量は減り、カロリーは30kcalに増えて、食物繊維は3.3gに増える。変化しない栄養素のほうが多いが、一部流出してしまう栄養素があることは覚えておくとよいだろう。
たけのこの水煮缶詰
たけのこの加工食品の一つに「水煮缶詰」がある。水煮缶詰に加工されると、たけのこの特徴的な栄養素であるカリウムや食物繊維が少なくなってしまう。特にカリウムは生のままなら520mgであるが、水煮缶詰になると77mgまで減ってしまう。また、マンガンなどを除けば、ほぼ全ての栄養素が減少傾向になっている。水煮缶詰は、生よりも栄養価が全体的に低いと覚えておくほうがよい。
たけのこの塩蔵(塩抜き)
たけのこの塩蔵とは、いわゆる「メンマ」である。メンマにするとたけのこの栄養価は著しく悪くなってしまい、ビタミン類はほぼ全く含まれない状態になる。また、ナトリウムは360mgに増加するが、カリウムは6mgに減少するなど、ミネラル類も全体的に減少傾向となっている。ただし、食物繊維は増える傾向にあり、メンマにすると2.8mgから3.5mgへと増加するようだ。
3. たけのこの特徴的な栄養素・成分を5つ紹介

たけのこは、炭水化物・脂質・脂溶性ビタミン(A・Dなど)は少ないが、たんぱく質・ミネラル類(カリウムや亜鉛など)・食物繊維などは多く含む。また、たけのこには抗酸化作用のある「ポリフェノール」が含まれていることが関係している。このような、たけのこの栄養素・成分を紹介する。
その1.チロシン
チロシンとはたんぱく質を構成する非必須アミノ酸の一種であり、体内ではフェニルアラニンから生成される。上記の一覧にはないが、たけのこには100gあたり180mgのチロシンを含んでいる。チロシンは甲状腺ホルモン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどの分泌に関与しており、感情や神経機能の調節などに役立つとされている。また、このことから「集中力を高める」といわれている(※2)。
その2.パントテン酸
パントテン酸とはかつて「ビタミンB5」と呼ばれていた、ビタミンB群の一種である。たけのこは100gあたり0.63 mgのパントテン酸を含んでおり、これはアスパラガス(0.59mg)やオクラ(0.42 mg)などよりも多く含んでいる(※1)。パントテン酸は体内ではエネルギーの産生、脂肪酸の合成・代謝などに関わっており、身体の機能を調整するための役割を担っている(※3)。
その3.カリウム
カリウムはミネラル類の一種で、体内では主にナトリウムの排出などの役割を担っている。また、浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経伝達などにも関与しているといわれている(※4)。たけのこは100gあたり520mgのカリウムを含んでおり、これはカリウムを多く含むことで知られているジャガイモ(410mg)などよりも多くなっている(※1)。
その4.食物繊維
たけのこのシャキシャキとした食感は、食物繊維が多いからといわれている。実際、たけのこの食物繊維は100gあたり2.8gであり、特に不溶性食物繊維は100gあたり2.5gとなっている。不溶性食物繊維の正体はセルロースと呼ばれる物質で、植物の細胞壁に多く含まれるものである(※5)。セルロースのような不溶性食物繊維には、その文字のとおり「水に溶けにくい」という性質がある。
その5.ポリフェノール
たけのこには機能性成分である「ポリフェノール」が多く含まれている。富山県農林水産総合技術センターの調査によると、たけのこは100gあたり65mgのポリフェノールを含んでいたそうだ(※6)。ポリフェノールは抗酸化物質の一つであり、体内では活性酸素を取り除く働きなどがある(※7)。なお、たけのこの裏面が青色になっている場合があるが、これはアントシアニンなどによるものだ。
4. たけのこのえぐみの正体は「シュウ酸」など

たけのこは生だとアクやえぐみが強い食品であるが、この正体はたけのこに含まれる「シュウ酸」や「ホモゲンチジン酸」などである(※8)。それぞれのえぐみ成分の特徴についても理解しておこう。
その1.シュウ酸
シュウ酸は、ほうれん草に多く含まれることで知られているえぐみ成分である。成長して竹になると消滅するが、たけのこの状態だと含んでいるとされている。そんなシュウ酸はえぐみ感を与えるだけでなく、鉄分の吸収を阻害する働きもある(※9)。通常は、茹でたり水にさらしたりすることでシュウ酸を取り除くことができるため、しっかりと下ごしらえをしておくことが重要になる。
その2.ホモゲンチジン酸
ホモゲンチジン酸は、たけのこに多く含まれるチロシンが変化することで生成されるえぐみ成分である。たけのこのえぐみ成分として、ホモゲンチジン酸は非常に有名である。ホモゲンチジン酸は単なる水ではなく、食用の重曹などでアルカリ性にした水を使うことで取り除くことができる。
結論
古くから食べられてきた春の山菜「たけのこ」。炭水化物や脂質が少なく低カロリーであるにも関わらず、たんぱく質・ミネラル類(カリウムや亜鉛など)・食物繊維などの栄養素が豊富なのが特徴となっている。調理方法によって栄養価が変わってしまうので、その点に注意しながら料理に使うようにしよう。
【参考文献】
- ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm - ※2:国立健康・栄養研究所「チロシン」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail621lite.html - ※3:国立健康・栄養研究所「パントテン酸」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail592lite.html - ※4:国立健康・栄養研究所「カリウム」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail575lite.html - ※5:国立健康・栄養研究所「食物繊維」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail583lite.html - ※6:富山県農林水産総合技術センター「とやまの農産物の抗酸化力評価(改訂)」
http://taffrc.pref.toyama.jp/nsgc/shokuhin/webfile/t1_dfb81c37440b8cce4aa4383f8ca2e97f.pdf - ※7:厚生労働省e-ヘルスネット「抗酸化物質(こうさんかぶっしつ)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html - ※8:くっきんぐるうむ「たけのこ料理と京都」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/23/3/23_263/_pdf - ※9:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
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