1. 鰻の故郷はどこ?謎に包まれた鰻の生態

絶滅危惧種に指定されてしまった鰻。今後私たちが継続的に鰻の食文化を守っていくためには、どうすればいいのだろうか。そのためには鰻の生態を知り生育しやすい環境を整えること、乱獲を控えること、人工的な養殖技術の開発が必要だろう。知ることが守ることに繋がるのだ。
日本では万葉集の時代から「夏やせにはむなぎ(うなぎ)を獲って食べろ」という歌が残るほど、古くから鰻を食べる文化が育まれてきた。我々が食しているニホンウナギとは別種だが、ヨーロッパでもヨーロッパウナギが稚魚や成魚の状態で食されてきた文化がある。
しかしながら、その一方でつい最近まで鰻がどこで生まれているのか、どのように成長しているのかはほとんど分かっていなかった。かのアリストテレスでさえも「鰻は泥の中で自然発生する」と書き記しているほどだ。
それは、鰻の成魚や稚魚は川で採取されていたのに対して、卵がまったく発見されてこなかったことに原因がある。主に川や池の淡水で生活すると考えられている鰻だが、産卵から稚魚としてある程度の大きさになるまで海水域で生息することが分かった。それでも鰻の故郷ともいえる産卵場所は特定できなかったのだ。
日本では万葉集の時代から「夏やせにはむなぎ(うなぎ)を獲って食べろ」という歌が残るほど、古くから鰻を食べる文化が育まれてきた。我々が食しているニホンウナギとは別種だが、ヨーロッパでもヨーロッパウナギが稚魚や成魚の状態で食されてきた文化がある。
しかしながら、その一方でつい最近まで鰻がどこで生まれているのか、どのように成長しているのかはほとんど分かっていなかった。かのアリストテレスでさえも「鰻は泥の中で自然発生する」と書き記しているほどだ。
それは、鰻の成魚や稚魚は川で採取されていたのに対して、卵がまったく発見されてこなかったことに原因がある。主に川や池の淡水で生活すると考えられている鰻だが、産卵から稚魚としてある程度の大きさになるまで海水域で生息することが分かった。それでも鰻の故郷ともいえる産卵場所は特定できなかったのだ。
2. 解明されてきた鰻回遊の謎

鰻の故郷を世界で初めて発見したのは日本のグループ
鰻の故郷となる産卵場所が特定されたのは2009年のこと。東京大学の塚本勝巳教授のグループが世界で初めて鰻の卵を発見した。鰻は遊泳力が弱いため当初は本州近海で産卵していると考えられていた。しかし鰻の卵どころか幼生であるレプトケファルスすら見つけることができない。研究を続けるうちに、鰻の産卵期が従来想定されていた冬ではなく、夏だと分かったことが産卵場所発見のきっかけになった。調査対象を日本から6000kmも離れた西マリアナ海嶺付近に変更、ついにそこで鰻の卵を見つけることができたそうだ。
産卵期の鰻は大変身
鰻は産卵期になると驚くべき変化を遂げることも分かってきた。産卵時期になったことを示すホルモンが分泌されると、鰻は昼夜問わず泳ぎ続けることができる「ナイトレストレス」となり、マリアナ海嶺まで6000kmもの距離をあの体で泳ぎ切るのだ。そして体中が精巣だらけ、卵だらけとなり産卵にいたる。産卵が終わるとその場で一生を終えることも分かった。
卵は1日半ほどで孵化
受精後1日半ほどで孵化した鰻は約6か月海流に流され浮遊し、日本近海へとやってくる。稚魚は5cmほどの「シラスウナギ」と呼ばれるサイズに成長し、日本の川を遡上。体の色も私たちがイメージする背が黒で腹が黄色い「黄ウナギ」となり5~10年ほど生活する。産卵できる準備が整うと川を下り、生まれ故郷のマリアナ海嶺付近へと戻っていくと考えられている。
3. 商業化はいつ?完全養殖への道

半天然半養殖の現状
現在日本産の鰻はほとんどが養殖されたものである。養殖と言っても卵から成魚までの完全養殖ではない。鰻の卵がなかなか発見できなかったことなど生態に謎が多く、これまで完全養殖は不可能だったのだ。そのため日本近海までやってきたシラスウナギを捕獲し、そこから養殖する形を取っている。しかしこのやり方だと稚魚の乱獲につながり鰻の資源保全にはならなない。絶滅危惧種に指定された鰻を保全し、今後も食卓に供給するためには完全養殖の技術が不可欠だ。
完全養殖への課題
一番の課題はシラスウナギに成長するまでだ。近年の研究から卵を安定して採取することはできるようになった。孵化してシラスウナギになるまでのレプトケファルスの時期の育成が難しいのだ。約半年におよぶレプトケファルスの時期は未だ解明されていないことが多い。水深100~200mの辺りで育つと考えられているが、何を食べているのか分かっていないのだ。分解中の動物プランクトンの死骸などを食べているのではないかと考えられているが、養殖で安価に再現できる餌が見つからない。そのため卵から育てて成魚まで成長する割合は5%ほど。1匹1,000円程度で提供できる商業化のラインはまだまだ遠いのが現状である。
結論
鰻が私たちのスタミナ源となっている理由は、その驚くべき生態に隠されたようだ。日本食ブームが世界で広がる中、鰻の消費量は世界レベルで増えている。完全養殖の技術やナマズを使った代替食の研究も進んでいる。古くからなじんできた鰻文化を後世に残すため、そして何より美味しい鰻を私たちが心行くまで楽しむため、今後の研究に期待したい。