1. 昆布の産地と種類
昆布は寒流が流れ込む海域で育つ。日本では北海道沿岸と、東北の太平洋沿岸に生育している。主な産地は北海道で、全国の昆布生産量の9割を占めている。昆布は生育している環境でサイズや適した調理方法などが異なるので、代表的な昆布の種類と特色を見ていこう。
真昆布(まこんぶ)
函館を中心に、松前から室蘭までの沿岸で採れる。生育水深は7~8m。昆布の長さ1~8m、幅10~30cmで幅広い。肉厚で、結納品などの飾りにも使われる。主な用途は、だし、塩昆布、おぼろ・とろろ昆布、佃煮などだ。上品な甘味のあるだしがとれる。
日高昆布(ひだかこんぶ)
道南の日高地方沿岸に生育する。別名三石昆布(みついしこんぶ)とも言う。生育水深は10~15m。昆布の長さ2~7m、幅6~15cmで細い。だしに使うほか、細くて火が通りやすいため昆布巻き、佃煮、おでんの昆布などに使う。
長昆布(ながこんぶ)
道南の釧路から東へ行った根室までの太平洋沿岸に生育。生育水深は15~20m。昆布の長さ15~20m、幅6~18cm。柔らかくて煮崩れしないため、佃煮、おでんの昆布、昆布巻きなどの加工用に使う。
羅臼昆布(らうすこんぶ)
知床半島の根室から国後島の辺りに生育している。昆布の長さ1.5~3mで幅20~30cmで幅広い。表面の色によって黒口、赤口に分けられる。柔らかいため、酢昆布、昆布締めに適していて、そのほかにだし、昆布茶にも使う。濃厚なだしがとれる。
利尻昆布(りしりこんぶ)
道北の利尻、礼文、稚内を中心とした海域でとれる。長さ1.5~3m、幅13~20cmで、真昆布と比べると幅が狭くてやや堅い。香りの良いだしがとれるため、だし昆布として主に使わる。そのほかに、塩昆布、おぼろ・とろろ昆布などにも使う。
細目昆布(ほそめこんぶ)
北海道の日本海沿岸で採れる。長さ0.4~1.5m、幅5~15cmの細身である。昆布は2年育ったころに収穫することがほとんどだが、細目昆布は1年目に収穫する。粘りがあるため、おぼろ・とろろ昆布、塩昆布、佃煮に利用される。
北海道以外の昆布
青森県の津軽海峡から、宮城県の気仙沼や牡鹿半島では、真昆布と細目昆布が生育している。加工用、だし用などに使われる。
2. 昆布の区分と等級
昆布は、さまざまな条件で等級が決まり価格が変動する。その条件とは、天然か養殖か、生育する場所、形状などだ。
天然と養殖
道南で採れる利尻昆布、羅臼昆布などの高級昆布は養殖が行なわれている。ロープへ種苗を着け、昆布が垂れ下がるように育てる。期間は天然物と同じ2年だ。天然物の昆布は、岩で擦られて傷が付くこともあるし、傷が付かないように表面のヌメリが多くなっている。養殖昆布は、傷が付かないように調整されているため、天然物よりも見た目がきれいな昆布となる。天然物よりも肉厚で柔らかいが、味はあっさりとしている。
生育する場所
昆布は環境による影響が大きく、生育する海域で品質に差が出る。昆布は葉全体で栄養を摂り込むため、昆布に適した環境の方が、生育がよいからだ。
形状
同じ産地の昆布であっても、色やサイズにばらつきがある。北海道では規格基準を定め、漁港によって基準にばらつきがでないような仕組みがある。検査項目は、葉の大きさ、質、傷などがあり、1級から6級までの等級に分けられる。等級が劣るからといって、品質が悪いとも言い切れない。だし用昆布の場合、肉厚であればよいだしが取れ、葉の長さや美しさは関係しないのだ。等級は1つの目安だが、使う用途に合わせて選びたい。
3. 昆布の収穫と加工
昆布は多年草で、2年かけて大きく成長する。細目昆布は例外で1年目に収穫される。生育した昆布は、収穫、乾燥、裁断などを経て出荷されていく。
収穫の方法
昆布のほとんどは7~9月に収穫し、この時期が昆布の旬と言える。船の上から、専用の器具を使って海中を覗き込み、昆布収穫専用の5~9mある先端にカギの付いた棒で昆布を巻き取る。
乾燥させる
収穫した昆布は海水で洗い、天日干しか乾燥機に掛けられる。天日干しの場所は、干場(かんば)と呼ばれる、石や熊笹の葉を敷き詰めた場所だ。昆布を干すときに砂利などが付かないように、このような干場を設けている。昆布は、乾燥機で乾燥するよりも天日干しにすることで風味がよくなる。
選別
乾燥した昆布は、昆布の種類や等級によって分ける。昆布の中には、穴が開いたものを見かけることもあるだろう。穴が開いていても出荷される昆布は、ウニが食べたものの可能性が高い。その場合、味には変わりがなく、安心して食べることができる。そのほかに、穴があく原因には、昆布が病気になった孔あき症などがある。昆布が穴だらけになるため商品価値がなくなってしまう。
裁断・包装
選別された昆布は、指定された長さにカットする。そして包装されて全国に出荷する。
結論
昆布の9割は北海道産だ。生育する海域で昆布の味や食感に特色がでる。さまざまな基準で選別された昆布は、包装後に出荷されて店頭へ並ぶ。昆布の種類を使い分けて、料理に活かしていきたいものだ。