1. 醤油の原材料

醤油は、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込み醤油、白醤油の5種類に分けられる。どの種類の醤油も使われる材料はほぼ同じで、大豆・脱脂加工大豆、小麦、食塩が基本材料だ。そのほかに、食材をプラスすることもある。配合量や仕込み方法を変え、特色のある醤油が造りだされるのだ。
大豆
植物性食材のなかで、大豆はタンパク質を多く含んでいることはよく知られている。醤油を熟成する過程で、麹菌がタンパク質を分解すると、旨味成分であるアミノ酸が造られる。これが、醤油の旨味となる。
脱脂加工大豆
丸のままの乾燥大豆は100g当たりタンパク質33.8%、脂質19.7g含む。大豆は、醤油、味噌、豆腐に使われるほか、大豆油としても使われる。脱脂加工大豆は、丸のままの大豆から油を搾って残ったものを加工したものだ。タンパク質量が多いため、熟成過程でアミノ酸が多く作られ、丸のままの大豆よりも旨味が高くなる。
小麦
小麦は炭水化物が主成分で、醤油の甘味とコクを作りだす。小麦のデンプンが麹菌によって分解されるとブドウ糖に変わる。さらにブドウ糖が乳酸や酢酸、アルコールに変化し、味をまろやかにしたり、香りを良くしたりするのだ。
食塩
塩辛さのもとである食塩は、味に影響を与えるだけでなく、微生物の働きを抑える。漬物などの保存食に使われるのもこのためだ。
麹をまぶした大豆・小麦と食塩水を混ぜることで、醤油の熟成に必要な微生物だけが働き、おいしい醤油となるのだ。
麹をまぶした大豆・小麦と食塩水を混ぜることで、醤油の熟成に必要な微生物だけが働き、おいしい醤油となるのだ。
その他
甘味や旨味などをプラスするために、米から作られた甘酒や、大麦などの糖類、大豆タンパク質を塩酸で分解したアミノ酸液、調味料や保存料などの食品添加物が使われる。
2. 醤油造りの基本「本醸造方式」

醤油の中で生産量の多い濃口醤油は、3つの方式で製造する。
本醸造方式、混合醸造方式、混合方式だ。このうち、8割以上が本醸造方式で造られており、醤油造りの基本となっている。
本醸造方式、混合醸造方式、混合方式だ。このうち、8割以上が本醸造方式で造られており、醤油造りの基本となっている。
もろみ造り
まず、原材料の大豆を蒸し、小麦を炒る。大豆:小麦が約1:1になるように混ぜたら、種麹を加えて、大豆と小麦の麹を造る。
タンクで、麹と濃度の高い食塩水を混ぜる。
タンクで、麹と濃度の高い食塩水を混ぜる。
熟成
もろみをかき混ぜながら、約6~8カ月寝かせる。麹菌、酵母、乳酸菌の働きで、大豆タンパク質、小麦の糖質が分解され、熟成が進む。熟成が進むにつれて、もろみは粥状になり、色が濃くなっていく。
圧搾
粥状になったもろみを一定の分量ずつ布で包み、それをいくつも重ねていく。大豆や小麦のカスが取り除かれ、液体が分離されるのだ。さらに圧力を掛けて、絞りだすのが一般的。これを生揚げ醤油(きあげしょうゆ)、または生醤油(きじょうゆ)と呼ぶ。
清澄
絞り出した液体は、タンクの中で3~4日休ませて、油や沈殿物を取り除く。脱脂加工大豆を使った場合は、大豆から油が取り除かれているので、表面に油が浮いてくることは少ない。
火入れ
主に殺菌を目的として熱を加える。酵素の働きも止めるため、これ以上熟成が進むことはなく、品質を安定させる効果もある。
また、色、味、香りを整える。火入れの作業で、醤油の製造過程は完了だ。
また、色、味、香りを整える。火入れの作業で、醤油の製造過程は完了だ。
検査・詰め
できた醤油は、品質を検査し、容器に詰めて出荷される。
3. そのほかの製造法

一般的な本醸造方式以外の醤油の作り方を紹介しよう。
■混合醸造醤油
もろみを造るまでは、本醸造方式と同じで、もろみへアミノ酸液・酵素分解調味液・発酵分解調味液をプラスして熟成させたもの。その後の製造方法も同じ。
■混合醤油
本醸造醤油か混合醸造醤油に、アミノ酸液・酵素分解調味液・発酵分解調味液を加えて造る。
■淡口醤油
兵庫県の播州龍野で生まれた醤油。淡口醤油とも呼ばれる。薄口と書くが、色が薄いという意味で食塩濃度は高い。素材の色を活かした煮物、薄い色に仕上げたい汁物などに使う。そのため、製品の色を薄くするために食塩水の量を多くし、熟成期間を短くしている。熟成を抑える分風味が落ちるため、甘酒を加えることもある。
■たまり醤油
中部地方で主に作られ、九州でも造られている。とろりとした液体が特徴だ。主な原材料は大豆で、小麦はわずかだ。大豆を蒸し、
味噌玉麹(みそたまこうじ)と呼ばれる麹を作ってから食塩水と混ぜる。熟成が進むにつれて底に液体がたまり、その液体をくみ上げて全体に回しかけながら、ほぼ1年間発酵・熟成させる。
味噌玉麹(みそたまこうじ)と呼ばれる麹を作ってから食塩水と混ぜる。熟成が進むにつれて底に液体がたまり、その液体をくみ上げて全体に回しかけながら、ほぼ1年間発酵・熟成させる。
■再仕込み醤油
山口県柳井地方が発祥。別名甘露醤油。色が濃く、ドロッとしている。仕込み水として食塩水を使うところを、生揚げ醤油を使って製造される。
■白醤油
愛知県三河地方で生まれた醤油。淡口醤油よりもさらに色が淡く、琥珀色をしている。主原料は小麦で、わずかに大豆が使われる。大豆は炒って皮を剥き、小麦は精白してから蒸す。他の醤油と基本的には同じ製造工程であるが、もろみを撹拌せず、圧搾もせず、加熱処理を行なわないのが特色。約3ヶ月間低温を保って熟成する。
結論
醤油は、本醸造方式で製造される濃口醤油が多く生産されている。そのほかに造られる醤油も、濃口醤油と製法は似ており、原料の配合を変えたり、熟成期間を短くしたりなどして造られている。それぞれの醤油は、色、味、形状に特色があるので、味比べをしてみるのも楽しい。