1. フカ=サメ

映画ジョーズでおなじみのサメ。関西以南では、サメのことを
「フカ」、山陰地方では「ワニ」という。フカヒレとはつまりサメのヒレのことだ。
「フカ」、山陰地方では「ワニ」という。フカヒレとはつまりサメのヒレのことだ。
サメにも種類がある?
サメ類はとにかく種類が多い魚だ。世界で見れば350種とも、400種とも言われている。その中で人を襲うような獰猛な種類は約30種しかいない。普通の魚は骨が食べられない「硬骨魚類」なのでヒレはとても食べられないが、サメは「軟骨魚類」。骨格すべてが弾力に富んでいるため、大きなヒレも食用となる。
フカヒレ用の種類
これほど多い種類の中で、フカヒレに適しているのは約40種だが、日本を始め世界各国の産地・種属・色や形で実に細かく値段設定が変わってくる。日本で多くとれるのはヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメ、オナガザメ、メジロザメなどだ。色の白いフカヒレは「白翅(パイチー)」と呼ばれ、色の黒い「黒翅(ヘイチー)」よりも高級である。最高級の白フカヒレはメジロザメとされている。
2. なぜフカヒレは高いのか

フカヒレは高級だ。その理由には、食材そのものが希少であることに加え、歴史的な背景や食文化も関係している。
中国の食を支える高級品
中国には「参・鮑・翅」と称される三大珍味がある。干したナマコ、アワビ、そしてフカヒレのことである。有名な西太后も大好物で、最高格の中華宴席「満漢全席」にも必ず登場する食材だ。このため、高級品としての品質と価格を求められ続けている。日本における金箔やマグロのような感覚で、フカヒレはある程度高いことに価値がある。中国ではフカヒレをご馳走することが、対人関係での誠意の示し方のひとつであるそうだ。
生産量が少ない
サメ本体から採れるヒレは8枚だが、本体全量に対してわずか0.5~1%しかない。皮・肉・骨を取り除き、繊維質のみを取り出す作業は非常に手間が掛かる。その後で20日ほど天日干しして、「原鰭(ゲンビレ)」の出来上がりだ。
3. 中華料理のすべてが凝縮

フカヒレは高級食材だが、それでも食べる人が後を絶たない。
フカヒレ料理には中華料理の技術や、料理人のプライドが凝縮しているのだ。
フカヒレ料理には中華料理の技術や、料理人のプライドが凝縮しているのだ。
姿煮こそがフカヒレの真髄
形をそのまま残したフカヒレは特に高級品だ。糸状に崩れた「散翅(サンチー)」は安価で、フカヒレスープやフカヒレラーメンでも使われる。しかし、フカヒレの真の美味しさは、姿煮を食べなければ分からないとされている。ゲンビレから食べられる状態まで持って行くのに1週間はかかり、この手間と技術がフカヒレの美味しさに反映しているのだ。
熟練の料理人がつきっきり
フカヒレ本体の支度には、紹興酒や香味野菜を使って煮たり冷ましたりを繰り返す必要がある。この途中で中骨や薄皮を取り、下ごしらえだけで丸3日はかかる。さらにフカヒレを煮込むためのスープは別に作る必要がある。豚肉や鶏肉、各種香辛料で丁寧にとられたスープをフカヒレの繊維1本1本にじっくりと丁寧にしみ込ませる。この工程には高度な中華料理の技術が必要で、熟練の料理人がつきっきりで行うのだそうだ。
結論
今では面倒な前処理をすべて終わらせた状態で、冷凍や乾燥させたフカヒレも多い。例えそれを使っても手間がかかる料理である。
一流の料理人は、フカヒレを料理することに人一倍神経を使い、技術とプライドをかけて姿煮を作る。この過程がフカヒレ料理の値段に比例しているのだろう。数万円もする姿煮を食べる機会はなかなかないが、フカヒレはやっぱり中華料理の王様なのだ。
一流の料理人は、フカヒレを料理することに人一倍神経を使い、技術とプライドをかけて姿煮を作る。この過程がフカヒレ料理の値段に比例しているのだろう。数万円もする姿煮を食べる機会はなかなかないが、フカヒレはやっぱり中華料理の王様なのだ。