1. 酢をカレーに入れるとどんな変化が起こるか?

隠し味とは、入れたことがわからないけど入れるとコクが出る、甘みが増す、風味が良くなるなどの変化が楽しめ、全体の味を引き立てる調味料である。カレーにおいては具材を炒める前に入れるか、煮込む途中に入れるか 最後に入れるか隠し味の種類によって効果的なタイミングも変わってくる。
酢を入れるタイミング
酢は煮込むと酸味がやわらぐと実感している方も多いかもしれない。しかし実際は酢を加熱すると酸度は上昇する。酢の沸点は118度なので沸点100度の水分の方が早く蒸発し、酢酸濃度が上がるためである。だが、酢には非揮発性(蒸発しにくい)の糖類、アミノ酸が多く含まれており、これらの濃度が上昇することによって酸味がやわらいだと感じるのだ。このことから、カレーの隠し味として酢を使用する場合、酸味を残したければ火を止める直前の仕上げに、甘みや旨味を増したければ加熱途中に入れるのがベストタイミングと言える。ちなみに酢の主成分である酢酸は加熱しても栄養素は壊れない。
2. カレーにおける酢の効果

ここではカレーにおける酢の効果について解説しよう。
お肉をやわらかくする
酢の酸味にはお肉をやわらかくする効果がある。酸味によって肉のpH値が下がり、肉の繊維にすきまができることにより、水分の保持性が高くなるからである。また酸味はたんぱく質の分解酵素を活発にする。骨付き肉では骨と筋肉をつなぐ結合組織のコラーゲンが酸性化してゼラチン化が進み、肉離れがよくなる。
スパイシーさをやわらげる
辛み成分のカプサイシンは糖分でやわらぐ性質があり、酢に含まれる糖分で辛みがやわらぐと考えられる。
コクがプラスされる
酢は米などの穀物や果実をアルコール発酵させ、その後酢酸発酵して作られる。発酵過程で穀物や果物に含まれるたんぱく質がアミノ酸へ変化し、旨味へ変わる。カレーに旨味が加わることでコクがあると感じるのだ。
3. カレーに合う酢の種類とは?

酢はいろいろな原料から作られている。原料によってアミノ酸の量、香りが違ってくる。カレーに合う酢がどんなものかまずは酢の種類を探ってみよう。
穀物酢
米・麦・とうもろこしなどが原材料。酸味と旨味のバランスがよく、クセのない味わい。
米酢
米が主な原料。まろやかな甘みと旨味が特徴。
黒酢
主な原料は玄米。たんぱく質が多く含まれているので旨味の元となるアミノ酸の量が多い。長期熟成なので酸味がまろやか。
りんご酢
りんご果汁が原料。爽やかな甘い香りが特徴。水などで割ってそのまま飲むこともできる。
バルサミコ酢
ぶどう果汁を発酵させて作られているイタリア伝統の酢。樽などで長期熟成され、甘味、旨味が強い。サラダやデザートに用いてもよい。
ワインビネガー
ぶどう果汁が原料。さわやかな酸味が特徴でドレッシングなどにも使われることが多い。
4. おすすめカレー×隠し酢レシピ

カレーと酢のベストマッチを紹介しよう。
甘口カレー×りんご酢
甘口カレーをさらに引き立てるりんご酢。りんごの香りを楽しみながら、甘みも凝縮させたいので、火を止める5分前、ルーが溶けた頃に入れるのがおすすめだ。
辛口カレー×穀物酢
穀物酢はオールマイティにどんなカレーの隠し味にも使えるが、辛口カレーに入れて煮込むとより旨味が増し、コクがでる。辛み成分が足りないと感じる場合はチリパウダーを加えるとよいだろう。
スパイスキーマカレー×黒酢
キーマカレーは油分の多いカレーである。黒酢を加えることでさっぱり食べられ、旨味が増す。
欧風カレー×バルサミコ酢
欧風カレーにバルサミコ酢を加えるとデミグラスソースのような風味がでる。ビーフの塊肉も酢によってやわらかくなり、長時間煮込んだかのような味わいになる。
結論
カレーの隠し味に酢。調べてみるとカレーと酢の相性のよさに驚いた。酢を大さじ1杯加えるだけで栄養価や旨味もアップする。手軽な調味料の酢でいつものカレーを引き立て、自分好みのカレーにしてみてはどうだろうか?