1. 工夫と手間でうまれた逸品
干し芋は国内生産量の8割以上が茨城で生産されている。
しかし、実はその発祥はお茶で有名な静岡県の前崎地方だ。
しかし、実はその発祥はお茶で有名な静岡県の前崎地方だ。
難破船を助けたことがきっかけ
江戸時代中期、明和3年。静岡県沖で薩摩藩の御用船が座礁してしまった。静岡住人である大澤権右衛門親子が乗組員を救助したところ、お礼にさつまいも3種類の栽培方法を教えてくれたのだという。これが、静岡県でさつまいも栽培が始まったきっかけだ。さつまいもは痩せた土地でも育ち、収穫量が多く栄養が豊富である。しかし、傷みやすく保存が難しいことと、重くて輸送が大変なことが難点だった。
工夫を重ねて出来上がった
静岡県の人々はさつまいもの保存法を工夫して、干し芋の原型を作る。1800年台に生のさつまいもを切り分けて干す「白切り干し」から始まり、煮てから干す「煮切り干し」、1890年頃には蒸してピアノ線で薄くスライスする「蒸切り干し」となった。当初は干すだけだったが、食感や効率を求めて工夫を重ねた結果、今のような干し芋が出来上がったのである。第二次世界大戦で食料難が訪れると、さつまいもと干し芋製法が全国に広まり、最終的に茨城が干し芋生産の代表地となったようだ。
2. 干し芋の品種と製造方法
さつまいもには数多くの品種がある。干し芋は品種によって極端に仕上がりが変わるため、実は一般品種と異なる「干し芋用の品種」が多く加工されている。
干し芋でなければ本領発揮できない
水分が多く含まれている、適度な大きさと形のさつまいもが干し芋に最適だ。普段目にする一般的なさつまいもを干し芋にすることは、まずない。そんな国産干し芋の代表品種が「玉豊(たまゆたか)」だ。昭和35年に登場してから半世紀以上、玉豊より干し芋向きの品種はなかなかないとまで言われている。その他には「いずみ」「にんじん芋」「ほしキラリ」など、普段目にしない品種名が並ぶ。ちなみに、焼き芋でも干し芋でも美味しいのは「安納芋」だ。購入する時は品種名も見てみよう。
手間のかかる製造法
芋掘りの後のさつまいもは保管庫で熟成される。製造会社にもよるが、最低1か月は熟成することが多いようだ。サイズ別に選定し、蒸気で蒸し上げる。ここからピアノ線でスライスし、並べて乾燥させるまで全て手作業だ。機械乾燥もあるが、天日干しなら約1週間丁寧に干し上げる。乾燥した芋特有の豊かな風味が味わえる「平切り(通常スライス)」、歯ごたえが楽しい「角切り」、しっとりした食感と濃厚な甘みが凝縮した「丸干し」と、形状もさまざまである。
3. どう食べる?アレンジ自在
そのまま食べても美味しいが、干し芋はアレンジして食べるのも楽しい。さっと炙ると柔らかさや香ばしさが増す。
お菓子に使う
甘くて美味しい干し芋に少しだけ手間を加えよう。チョコレートを溶かして干し芋にかけ、冷蔵庫で冷やせば「干し芋チョコ」の完成だ。ホワイトチョコやビターチョコもおすすめである。焼き菓子に混ぜても美味しいので、おやつのホットケーキに混ぜて焼いてみよう。さつまいものビタミンB1、ビタミンC、食物繊維をプラスできる。
料理に使う
実は味噌汁の具として好相性。甘みが加わるため、油揚げや豚肉など油分のある具に合う。粕汁などの濃厚な味付けにもおすすめだ。また、干し芋は天ぷらにしても美味しい。しょう油をつけると甘じょっぱくて美味である。
結論
干し芋は乾燥しすぎると美味しさが半減してしまう。もしそのまま食べるのに硬すぎるようなら、霧吹きで水を吹いて、トースターで軽く炙ってみよう。加熱すると驚くほど柔らかくなる。焼き干し芋にはバターも最高に合う。やけどに気を付けて食べてみてほしい。