1. 鴨肉と日本

鴨肉は、古くから日本で食べられてきた食肉のひとつ。日本語のことわざにも用いられていることから、親しみの深い鳥類だったことが良くわかる。ただ、仏教が伝来して以来、肉食禁止令が敷かれていた時代は、公に食べることはなかったが、一部の地域では貴重なタンパク質源として、食用にされていた。
鴨とアヒル
現在、鴨肉として流通しているものは家禽化したマガモ=アヒルとアイガモがほとんど。ちなみにアイガモは、アヒルと野生のマガモの交雑交配種のこと。そのほか、野生のマガモを狩猟して、販売しているケースもある。これは狩猟が解禁される冬限定だ。
食用以外の使い道
鴨は食用以外にも、ペット、羽毛採集、カルガモ農法用に家禽化されることも多い。ちなみに鴨の羽毛は、ダウンとしてアウターや布団にも活用されている。また、近年ではカルガモ農法に活用した鴨が最終的に食用として販売されるケースもある。そのほか、三大珍味としても知られる高級食材、フォアグラも鴨の一部。餌を大量に食べさせることで、鴨の肝臓を強制的に脂肪肝にしたものだ。
2. 鴨肉の注目栄養素

ビタミンB2
鴨肉はビタミンの含有量が他の食肉に比べて多い。なかでもB2は顕著だ。ちなみにビタミンB2は、エネルギー代謝に関与する栄養素で、皮膚や粘膜、爪、髪などの健康を保つ効果がある。
不飽和脂肪酸
脂肪は組成によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。普段良く食される牛肉、豚肉、鶏肉の脂肪の割合は、飽和脂肪酸が圧倒的に多い。対して、鴨肉は不飽和脂肪酸が比較的多く含まれている。この不飽和脂肪酸は、魚の油にも含まれる成分で、血液や血管の状態を健康に保つ効果があるとされており、体に積極的に取り入れたいもの。現状、日本人は脂肪酸の摂取量という意味では満たしているが、食事において不飽和脂肪酸の割合が少ないと思われる人は、脂肪酸バランスのよい鴨肉を牛肉、豚肉、鶏肉と置き換えるといい。
3. 上手な目利きと味わい

鴨肉は脂身が分厚いのが特徴。生肉の状態であれば、脂身が白く、厚みがしっかりとあるものを選ぶといい。赤身の部分は、ハリがあり鮮やかな色であると新鮮である印。また、ドリップが出ているようなものは避けること。丸のまま、買う場合はある程度の重さがあるものが吉。
融点の低さが美味しさのキモ
鴨は不飽和脂肪酸が多く含まれているため、融点が低い。我々人間の体温よりも低いので、口に入れるとすっと脂が溶けて、まろやかな味わいが広がる。さらに融点が低いので、冷製にしても脂が変に固まることなく、美味しく食べることができる。歯ごたえは、鶏肉よりも強く、赤身部分は噛めば噛むほど、旨味が感じられる。
保存はNG
鴨肉は傷みやすいため、長期保存はNG。どうしても保存が必要な場合は、できるだけ、火を通した状態で冷凍することが望ましい。必要な容量だけ購入するのがいいだろう。また、和食で使うなら国産、洋食で使うなら海外産と使い分けるといい。
結論
鴨は、不飽和脂肪酸が多く、とてもリッチな味わいが魅力。一見、難しく思われがちだが、和洋中どんな料理にも向いているので、デイリーに取り入れやすい。鶏、豚、牛と同じような感覚で、毎日の料理に使ってみよう。