1. 自給率は低いのに世界で一番大豆を食べる日本人?!

日本の食生活に大豆製品は欠かすことができない。豆腐や油揚げ、納豆などの大豆を加工した食品は毎日のように食卓に上るし、味噌・醤油などといった大豆から作られる調味料は家庭の必需品だ。夏になれば枝豆を食べる機会も増える。「畑の肉」とも呼ばれる大豆は古より日本人の貴重なたんぱく源だったのだ。
・日本人の年間大豆摂取量
これほど日常的に食べられている大豆。世界中どこでもそうだろうと思いがちだがそうではない。実は世界で日本人ほど大豆を食べている国民はいない。日本人が1年間で摂取する大豆の総量は8.19kg。これに対して比較的大豆を食べる中国でも3.96kg、世界有数の大豆生産量を誇るブラジルで3.28kg、日本最大の大豆輸入相手国のアメリカにいたってはわずか40gだ。これは日本人の1日平均摂取量にも及ばない数字だ。私たち日本人がいかに世界有数の大豆好きかがわかるだろう。
・大豆と日本人
大豆の原産地は中国だといわれている。日本に伝わったのは縄文時代。古事記にはすでに大豆に関する記述が見られる。そして、奈良時代以降は寺院を中心に大豆を使った食品技術が発達する。仏教が広く普及することで肉食が避けられ、たんぱく源としての大豆が広く普及することになったのだ。戦国時代には兵糧として味噌が非常に重要視され、鮮度が必要な豆腐が一般に食べられるようになったのは江戸時代。日本が持つ大豆文化は、その時代を反映しながら現在に受け継がれている。
2. 大豆の自給率はわずか7%

・世界中で大規模に生産される大豆
中国を原産とする大豆は、朝鮮半島や東南アジアに広がり、この地域では現在でも広く大豆が食用とされているが、欧米で栽培され食用になったのは16世紀になってからだ。現在では世界の大豆の生産量の80%以上をアメリカ・ブラジル・アルゼンチンで占めるほどとなった。世界の総生産量はおよそ3.5億t!総栽培面積は1.2億haだ。
一方で日本における大豆の生産量は約23万t、作付面積は15万haであり、世界における生産量としてはごくごくわずか。当然輸入に頼っている現状だ。日本で1年間に使われる大豆の需要量が約300万tなので、大豆の自給率は7%に過ぎない。
一方で日本における大豆の生産量は約23万t、作付面積は15万haであり、世界における生産量としてはごくごくわずか。当然輸入に頼っている現状だ。日本で1年間に使われる大豆の需要量が約300万tなので、大豆の自給率は7%に過ぎない。
・でも「国産豆腐」は多くないか?
自給率7%とは、これだけ大豆食品を食べる日本人からしたらショックな数字かもしれない。そして、「その割には『国産大豆を使った豆腐』が多くないか?」という疑問も生まれるかもしれない。
実際、スーパーに並ぶ豆腐には「国産」をうたったものが数多く並んでいる。ガイドラインによると、豆腐で「国産」と表示してよいのは国産大豆100%使用の物だけ。現実の自給率7%とこの皮膚感覚の違いは何なのだろうか。
実際、スーパーに並ぶ豆腐には「国産」をうたったものが数多く並んでいる。ガイドラインによると、豆腐で「国産」と表示してよいのは国産大豆100%使用の物だけ。現実の自給率7%とこの皮膚感覚の違いは何なのだろうか。
・大豆はすべてが食用になっているわけではない
実は、年間需要量300万tのうち、豆腐や納豆など食用で使われるのは30%以下。残りは油や飼料としての需要なのだ。実際私たちが「大豆製品を食べている」と認識している食用の自給率は24%。豆腐だけに限ると国産のシェアは26%、水煮や総菜煮豆などでは80%以上で国産の大豆が使われている。
3. 大豆の自給率を高める必要性

アメリカやブラジルなど世界で大規模に栽培されている大豆の90%以上が油糧や家畜の飼料として利用されている。近年バイオ燃料の原料としての利用量も増加しており、大豆の国際相場は高水準だ。
さらに人口超大国の中国・インドでの食用利用の増加に加え、大豆の健康効果に注目した欧米でも大豆や大豆製品を食べる人が増えている。
また、同量のたんぱく質を摂取するなら、牛などの動物性たんぱくよりも大豆の方が環境によいという側面もある。牛肉1kgを生産するために、大豆などの穀物を10kg必要するとあり、今後の世界的な食料需要増大をにらんで、たんぱく質を大豆から摂取しようとする流れはより大きくなるだろう。
以上の状況を考えると、現在同様の大豆食文化を日本で続けることは難しくなっていくことが予想されている。国産大豆の自給率を高めていくことが日本の農業政策において大きな課題となっているのだ。
さらに人口超大国の中国・インドでの食用利用の増加に加え、大豆の健康効果に注目した欧米でも大豆や大豆製品を食べる人が増えている。
また、同量のたんぱく質を摂取するなら、牛などの動物性たんぱくよりも大豆の方が環境によいという側面もある。牛肉1kgを生産するために、大豆などの穀物を10kg必要するとあり、今後の世界的な食料需要増大をにらんで、たんぱく質を大豆から摂取しようとする流れはより大きくなるだろう。
以上の状況を考えると、現在同様の大豆食文化を日本で続けることは難しくなっていくことが予想されている。国産大豆の自給率を高めていくことが日本の農業政策において大きな課題となっているのだ。
結論
国産の大豆は味がよく、消費者のニーズも高い。一方で供給が不安定で大手メーカーなどからの大量の需要に応えられないなどの課題もある。私たち消費者も、食卓上の小さな冷ややっこからグローバルな視点で農業問題に意識を向けたい。