製法ごとに味も変わる？圧搾ごま油・玉じめごま油・抽出ごま油の違い

比較的、近年になって誕生したのが抽出法という製法だ。これは、ごま油に限らず、よりコストをかけずに大量生産するために生まれた製法で、溶剤を用いてごまから油を溶かし出すやり方だ。溶剤が残留することはないが、香りや味わいは、圧搾ごま油などに比べて落ちるため、香料などがプラスされているものもある。これは本来のごま油ではないし、ご存知の通り、添加物は体にそうよくはない。安価なごま油を選ぶ際には、注意が必要だ。

残念ながら、抽出ごま油は、栄養素もほかのものに比べて低め。溶剤を使用すると、ごまに含まれる油分のほとんどを効率的に抽出することができるが、油分が多いが故にほかの栄養素が相対的に低くなってしまうのだ。また、一気に加熱、蒸留したごまを使用するので、熱に弱い栄養素のほとんどが破壊されてしまう。

圧搾ごま油は、その名の通り、圧をかけてごまから油を搾り取る方法で作られる。現在は、すべて機械でオートメーション化されているが、江戸時代にはすでに、この製法が行われていたと言われている。溶剤などを使わずに絞るため時間と手間がかかるが、その分、香り高く栄養分も豊富。ラベルに、圧搾や純正などと書かれていることが多い。

ごま油と言うと、一般的に黄金色に輝いた油を指すことが多いが、太白と言って、白いごま油も存在する。この色の差は、ごまを焙煎しているか否か。太白の場合は、焙煎せずに生のごまを絞って作られる。ごまの強い香りはなく、あっさりとした味わいで、天ぷら油に使われることでも知られている。また、製菓などにも向いている。対して、黄金色のごま油は、焙煎したごまを使用しているので香り高く、味わいにもコクがある。料理の仕上げや和え物などに使うと、その風味を存分に楽しむことができる。

圧搾ごま油の中でも特に希少なものが、玉じめ絞りと呼ばれる製法で作られた玉じめごま油である。これは、玉じめ機と呼ばれる機械を使用するもので、より低い圧力でゆっくりとごまから油を絞り出す方法。摩擦熱による油の変質がないので、ごま本来の美味しさが引き立つことが特徴だ。絞り出された油は、濾過するだけで食べられるほどクリア。色も琥珀色で美しい。

玉じめごま油を作っている精油店は、多くの工程を昔ながらの方法で行なっているところがほとんどである。まずは白ごまを精選して釜で炒るのだが、このときも薪を使って炒ることが多い。その後、ごまを細かく砕き、金輪に仕込んで蒸気に通す。ここからが玉じめ機の出番。鉄製の輪で作られた桶のようなものにごまを入れ、麻袋で包み、機械にセットする。下からの圧で桶が持ち上がり、上からぶら下がった石に押し付けられることで、ごまが絞られていく仕組みだ。絞られた油は、和紙で濾過することが多い。

この玉じめ製法で作られるごま油は、全国の年間生産量のわずか0.5%と希少なもの。他の製法に比べて価格も高いが、その分美味しさも格別である。澄んだ琥珀色は見た目にも美しく、味わいは一般的なごま油に比べて、より繊細だ。ごまの旨みや甘みを存分に感じることができるので、和え物や刺身につけるなどの生食から、炒め物、揚げ物まで幅広く活用できる。ただ、揚げ物に使う場合は、玉じめごま油だけでは高価になってしまうので、普段の油に数滴たらすだけで十分だ。

ごま油は家庭に欠かせない油のひとつだが、製法によって種類があることを理解しておきたい。ごま油の製法を知って厳選することは、美味しさはもとより、健康面にも欠かせない。ぜひ、美味しいごま油を手に入れて、日々の調理に活用したいものだ。