目次
1. 世界のコメと日本のコメの品種をおさらい!

バスマティライスを正しく理解するためには、まずコメの品種(群)を理解しておく必要がある。世界三大穀物の一つに数えられる「コメ」には、大きく「ジャポニカ種」「インディカ種」「ジャバニカ種」という三つの品種群がある。それぞれの違いについては以下のとおりである(※1、2)。
- ジャポニカ種:楕円形で粘り気があるコメ。日本などで作られており、世界の生産量の約20%を占めている
- インディカ種:細長く粘り気が少ないコメ。東南アジアなどで作られており、世界の生産量の約80%を占めている
- ジャバニカ種:大粒で粘り気が少ないコメ。ジャワ島や南米で作られているが、生産量は少ない
三種類あるコメの品種のうち、日本で多く食べられているのは「ジャポニカ種」と呼ばれるものだ。また、ジャポニカ種などはデンプンの性質によって「うるち米」と「もち米」に分けられる。日本人が普段食している「コシヒカリ」や「あきたこまち」などは、ジャポニカ種のうるち米に分類される。
2. バスマティライスとは?

バスマティライスとは、インド北部とパキスタンの一部地域だけで生産されているインディカ種の高級香り米である。バスマティ(Basmati)はヒンディー語で「香り(=Bas)」と「充満している(=Mati)」という意味があり、非常によい香りがすることから「香りの女王」という異名が付いている。また、炊き上がり後には2倍近くまで細長く伸びるという特徴がある(※3)。
ジャスミンライスとの違いは?
インディカ種で有名な品種の一つに「ジャスミンライス」がある。こちらは主にタイで作られているコメであり、バスマティライスとは主要な原産国が異なる。また、ジャスミンライスも、バスマティライスと同じく香り米の一種である。しかし、二つの香りは全く異なり、ジャスミンライスは花のようなフローラルな香りがして、バスマティライスはナッツのような香りがするといわれている。
バスマティライスの生産量と輸出量
バスマティライスはインドやパキスタンの一部地域でしか作られていないため、その生産量は非常に少なくインドでいうと「全体の1%程度」といわれている(※3)。また、やや古いが農林水産省の「主要国の農業情報調査分析報告書(平成26年度)」によれば、インドは2013年度に約300万トンのバスマティライスを輸出しているそうだ。主な輸出先は西アジア諸国となっている(※4)。
3. バスマティライスの栄養価と糖質量について

バスマティライスはコメの一種であるが、日本人が普段食べているジャポニカ種とは栄養価が異なるのだろうか。そこでバスマティライスの栄養価の解説とジャポニカ種との糖質量の比較をしてみよう。
バスマティライスの栄養価
文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」にはインディカ米の栄養価は記載されているものの、バスマティライスの情報は掲載されていない。そこで米国農務省の「FoodData Central Search Results」を参考に、100gあたりのバスマティライスの栄養価を確認してみよう(※5)。
- エネルギー:356kcal
- たんぱく質:6.67g
- 炭水化物:80g
- ミネラル
・カルシウム:22mg
・鉄:0.89mg - 食物繊維:2.2g
ジャポニカ種との糖質量の違い
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には糖質量が収められていないが、日本でよく食べられているコメ(精白米/うるち米)の糖質量はおおよそ77.1g(炭水化物量-食物繊維量)である(※6)。一方、バスマティライスの糖質量はおおよそ77.8gとなっている。同じ環境で計測されていないため一概に言い切ることは難しいが、バスマティライスのほうが糖質量は若干多いかもしれない。
4. バスマティライスの正しい炊き方とポイント

バスマティライスなどのインディカ種を炊く主な方法には「炊飯器を使う方法」「鍋を使う方法」の二種類があるそうだ。以下で紹介しているのは比較的簡単にできる「炊飯器で炊く方法」である。
- バスマティライスを軽く水洗いする
- 30分程度バスマティライスを水煮浸しておく
- 水を切ったバスマティライスを炊飯器に入れる
- 通常通りの目安まで水を入れてご飯を炊く
- 炊き上がったら軽くかき混ぜて完成
ポイント1.コメは研ぎすぎない
インディカ種は、ジャポニカ種のように水でゴシゴシと研ぐ必要はない。この主な理由は「ぬか臭さがないから」だが、ほかにも「コメの香りが飛んでしまうから」「コメが割れてしまうから」なども関係している。汚れが付いていることがあるので、サッと軽く水で流すだけでよいだろう。
ポイント2.あらかじめ水に浸しておく
バスマティライスなどのインディカ種の欠点は、炊飯器で炊くと芯が残りやすいことだ。そのため、軽く水洗いをしたら、きれいな水に30分ほど浸しておくのがポイントになる。ジャポニカ種に比べるとやや面倒だが、美味しく炊き上げるためにも行うようにしよう。
ポイント3.炊き方はジャポニカ種と同じ
実際の炊き方は、ジャポニカ種と同じである。水を入れる量も通常の目盛り通りで問題ないため、たとえば三合分のバスマティライスを研いだら、お水も三合の目盛りまで入れよう。また、炊き上げは通常の「白米モード」などでよい。あとは炊き上がるまで待つだけでバスマティライスが完成する。
5. バスマティライスの美味しい食べ方

インディカ種であるバスマティライスは、粘り気が少なくパサパサとした食感が特徴。そのため、カレーやビリヤニといったスパイスの効いた味の濃いものと一緒にたべるのがおすすめだ。
食べ方1.カレーライス
バスマティライスは産地である北インドの料理と特に合うので、バターチキンやパラクパニール(ほうれん草と白チーズカレー)などと一緒に食べるのがおすすめだ。バターやチーズなどの乳製品を使用した濃厚なカレーは、バスマティライスによく絡むため美味しく食べることができる。
食べ方2.ビリヤニ
ビリヤニ(インド式の炊き込みご飯)にも、バスマティライスがよく合う。大きな専用鍋を使って作るのが基本だが、自宅で作るのなら家庭用の普通サイズでも作ることができる。マサラ(スパイスと具材を合わせたもの)とバスマティライスを交互に重ねていき、ふっくらと蒸すのがポイント。最後にミントやサフランなどをかければ、香り豊かなインド式の炊き込みご飯「ビリヤニ」の完成だ。
6. バスマティライスのおすすめ品

バスマティライスにはインド産とパキスタン産があるが、日本にはインド産のほうが比較的多く流通している。そんなインド産の中から特に人気の高いバスマティライスを二つ紹介しておこう。
LAL QILLA「バスマティライス1kg」
LAL QILLA(ラルキラ)は、インドにあるAmar Singh Chawal Wala社が手掛けているバスマティライスのブランドである。伝統的なバスマティライスとして知られており、豊かな香りと味わいが特徴となっている。初めて食べるなら、まず試したいバスマティライスだと言えるだろう。
Kohinoor「バスマティライス Extra Flavour 1kg」
Kohinoor(コヒノール)はインドにあるKohinoor Joy社が手掛けるバスマティライスである。「Extra Long」「Extra Fine」などいくつかの種類があるが、日本では「Extra Flavour」が多く流通している。ナッツのよい香りが特徴で、バスマティライスらしい味を楽しむことができる。
結論
インドの高級香り米である「バスマティライス」。カレーなどのスパイスの効いた料理と合わせることで、本場の味を楽しむこともできる。家庭用の炊飯器で炊くこともできるため、炊き方自体はとても簡単。ぜひ一度、自宅で試してみてはいかがだろうか。
【参考文献】
- ※:農林水産省「第5章 アジアにおけるコメ輸出規制実施の影響」
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/h21/pdf/h21_asia5.pdf - ※1:農林水産省「外国の米の品種はどんなものがあるのですか。」
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0012/01.html - ※2:日本商品先物振興協会「商品特性」
https://www.jcfia.gr.jp/shouhin/shouhin3-31.html - ※3:BasmatiAssociates「Basmati Rice」
http://www.basmatiassociates.com/rice.htm - ※4:農林水産省「主要国の農業情報調査分析報告書(平成26年度)」
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/pdf/h26_india1.pdf - ※5:U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE「FoodData Central Search Results」
https://ndb.nal.usda.gov/fdc-app.html#/food-details/942178/nutrients - ※6:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/