1. 脂肪と脂肪酸って何?
脂肪と言うと、太るというイメージが強いが、タンパク質・炭水化物と並ぶ三大栄養素であり、人間が生きていくために欠かせない栄養素のひとつでもある。体内に取り込まれると、効率のよいエネルギー源として使われる。科学的には脂質と呼ばれるが、意味合いとしては同じ。一般的に、油脂・脂肪酸・グリセリン・コレステロールなどを総称して脂肪(脂質)と呼ぶ。
脂肪の特徴
世の中に存在するものの源は、元素である。脂肪は炭素・水素・酸素からなる物質で、特徴としては、水に溶けない化合物であるという点がある。脂肪のなかでも、油脂の原子構造は、1つのグリセリンに3つの脂肪酸が結合した状態で、トリアシルグリセロールと呼ばれている。これは、悪者扱いされがちな中性脂肪のことである。過剰摂取の問題点ばかりが取り上げられるが、トリアシルグリセロールは、体を健やかに保つために欠かせないものである。
脂肪酸とは
脂質の大部分、90%を占めるのが脂肪酸である。炭素が鎖状に結合した形をしているのが特徴である。前述の通り、グリセリンには脂肪酸が3つ結合すると考えられているが、この組み合わせで脂肪の特徴、性質が決まる。
2. 脂肪と脂肪酸の違い
脂肪が脂質全体を総称する言葉であるのに対し、脂肪酸は、脂肪を構成する要素の大部分である。ここが最大の違いと言える。脂肪は、脂肪酸なしでは脂肪になり得ないということになる。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
健康意識の高い人であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれない、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸。炭素の繋がりが一重構造のものを飽和脂肪酸、二重構造をもつものを不飽和脂肪酸と呼ぶ。飽和脂肪酸に比べて、不飽和脂肪酸は融点が低いことで知られている。飽和脂肪酸は鎖の長さによって、短い方から短鎖・中鎖・長鎖に分類される。不飽和脂肪酸は、二重構造が1つだけの一価不飽和脂肪酸と、それ以上の多価不飽和脂肪酸に分類される。
n-3系とn-6系
えごま油やDHAなどとともに、話題に上ることの多いn-3系とn-6系は、多価不飽和脂肪酸をさらに細かく分類したものである。二重結合の場所によって、呼び名が異なる。特に、体内で合成されないn-3系のα-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、n-6系のリノール酸、アラキドン酸を必須脂肪酸と呼んでおり、バランスのよい摂取が求められている。
3. 脂肪と脂肪酸のトリビア
バランスが重要
脂肪の摂取には、脂肪酸のバランスが重要だと言われている。これは、脂肪酸によって体に与える影響が異なるためである。推奨されているバランスは、脂質全体で考えると、総エネルギー数の20%以下。飽和脂肪酸に限って言えば、総エネルギーの7%以下が目安だ。不飽和脂肪酸のなかでも、n-6系は10g前後、n-3系が2g前後と推奨されている。この場合の前後の差異は、年齢や性別によるものである。肉や油脂だけでなく、魚や乳製品など、偏りなくさまざまな食材を摂取することで、自ずとバランスがよくなる。
具体的な食材は?
飽和脂肪酸の多い食材として知られるのが、バターだ。バターは短鎖脂肪酸の酪酸と、長鎖脂肪酸のバルミチンサン酸が多く含まれている。一価不飽和脂肪酸は、一般的に過多になりがちなオレイン酸。具体的には、オリーブオイルやキャノーラオイルなどである。多価不飽和脂肪酸のなかでも、リノール酸は植物油に多く含まれ、α-リノレン酸はえごま油や亜麻仁油に多く含まれている。
結論
脂肪とは脂質のことで、油脂・脂肪酸・グリセリン・コレステロールなどを総称する言葉であり、脂肪酸とは、その脂肪を形作る要素である。油は生活習慣病の的であるという発想は、いささか古いものになりつつある。バランスよく脂肪酸を摂取することこそ、真の健康に繋がるのだ。
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