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ドングリを食べて育つ山羊から作るチーズ【ケソ・イボレス】とは?

ドングリを食べて育つ山羊から作るチーズ【ケソ・イボレス】とは?

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:管理栄養士 藤江美輪子(ふじえみわこ)

鉛筆アイコン 2019年9月13日

スペイン西部の州、エストレマドゥーラ。ここで有名な食材といえば、なんといってもドングリを食べて育つイベリコ豚だ。スペインのみならず、フランス料理やイタリア料理でも注目される超高級食材である。その豚と一緒に育つ山羊がいる。今回は、その山羊ミルクから作られるチーズ、ケソ・イボレスについて紹介する。

  

1. スペインのチーズ、ケソ・イボレスとは

ケソ・イボレスは、円柱形で大きさは700g~1.2㎏と、家庭なら長く楽しめる量である。表面をオリーブオイルまたはパプリカを加えたオイルで拭くため、外側はオレンジ色をしているが、カットすると美味しそうなミルク色のチーズが顔を出す。
口あたりは柔らかく、脂肪分が高いためか、ねっとりとクリーミーな味わいで塩気が強い。山羊ミルクのチーズは酸味が強くなりがちだが、ケソ・イボレスにはほとんど酸味が感じられない。

ケソ・イボレスとは、スペインを代表する山羊ミルクを主原材料としたチーズである。チーズといえば、日本では牛乳を原材料にするものが一般的であるが、山羊のミルクからつくるチーズのほうが歴史は長く、古くから作られているといわれている。山羊は肉もミルクも独特のクセがあるので、チーズにしても山羊独特の味わいをもつものが多い。牛乳チーズは好きだが山羊チーズは苦手、という人はこのクセに苦手意識をもってしまうようだ。
しかしケソ・イボレスは、山羊特有のクセはほとんど見当たらない。見当たらないが、やはり玄人向けの味わいである。

クセがあるのはその香りだ。ハードタイプで販売されているが、熟成が進めば進むほど、水分は抜け、においが強くなっていく。口の中、舌で味わう分にはさほど感じないが、飲み込むときに鼻へ抜ける香りが、なかなか玄人好みの後味を残す。慣れるまでは驚くが、好きな人にはたまらない味わいである。
はっきりとした味わいのチーズなので、酒やイベリコ豚と合わせても決して引けを取らない強さがある。

2. ケソ・イボレスの産地、エストレマドゥーラ地方とは

ケソ・イボレスはスペイン西端部にある、エストレマドゥーラでのみ作られるチーズだ。エストレマドゥーラには多くの遺跡があり、ローマ美術を楽しむにはもってこいの場所だが、エストレマドゥーラはスペイン語で「とても厳しい」や、「末端の土地」などという意味がある。これは、エストレマドゥーラが厳しい気候の土地であることを表している。西側はポルトガルとの国境であり、夏は暑い太陽に照らされて乾燥し、場所によって平野は枯れ野になるという。
しかし、エストレマドゥーラの東北に位置するカサレス地方は、荒野の中にも小楢の木が茂る。ここでつくられるのが、ケソ・イボレスである。

ちなみに、この地でもっとも有名な食品は、世界中から注目を集めるイベリコ豚の生ハムである。イベリコというスペイン原種の足の黒い豚を、定められた育成法で育てあげ、うしろ足を原材料にした生ハムは、日本でも大変美味しく高価な食材として名高い。スペイン各地で黒豚の生ハムはつくられているが、最高級品として名高いのはこのエストレマドゥーラの物である。

イベリコ豚は、ベジョータとよばれるドングリを食べ、ドングリの林を走り回らせることで肉が締まり美味しくなる。豚が走り回るドングリ林で、山羊も一緒に育つ。秋には豚と一緒に仲良くドングリを食む様は微笑ましい。この山羊こそが、ケソ・イボレスの原材料のミルクを出してくれるベラタ種という山羊である。

3. 黒い山羊、ベラタ種とは

ベラタ種はエストレマドゥーラに生息している黒山羊で、立派な角と黒い長い毛足が特徴的である。この山羊のミルクなしにケソ・イボレスは存在しない。
ヨーロッパのチーズの品質表示に、MGという項目がある。これは「Matiere Grasse」のことで、水分を取り除いた固形分重量中に占める脂肪分重量の割合を表示したものである。少しわかりにくいが、チーズは熟成に従って水分量が変化するので、最初から水分を取り除いた脂肪分の割合が表示されているのである。
このケソ・イボレスの脂肪分の割合は52%ほど。山羊ミルクのチーズは45%前後が多いので、ケソ・イボレスの脂肪分の割合は高いほうであるといえる。脂肪分が高いと口溶けがよくなり、クリーミーな味わいになる。
この山羊は牧草も食べるが、豚と一緒にドングリもよく食べる。そのためか、一般的な山羊ミルクとは異なり、脂肪分やタンパク質の量が多くなるようだ。そのため、そのミルクを使ったチーズも、山羊ミルクのチーズとは思えないほどのものになる。
ケソ・イボレスは無殺菌の山羊ミルクをそのまま使い、凝固剤は子羊の胃のレンネット。伝統的な製法が守られている。
山羊は一年に一度出産する。3~5月頃の搾乳量が一番多く、このころに取れたミルクや、どんぐりをたっぷり食べたころに取れたミルクで作ったチーズが、もっとも旬だといわれている。
昨今は保存技術も輸送技術も改良され、あまり旬は意識されなくなってきているが、叶うのなら美味しいころのケソ・イボレスを味わってみたいものである。

結論

余談だが、「イベリコ」という名前を持つチーズもある。スペインではメジャーなハードタイプのチーズで、牛やヤギ、そして羊のミルクを混合してつくる。この場合のイベリコとはイベリコ半島、すなわちスペインを意味する。クセがなく食べやすいので、土産にも人気のあるチーズである。
スペインにはケソ・イボレスのほか、本当にたくさんの種類のチーズがあって、興味深い国である。
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  • 更新日:

    2019年9月13日

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