1. 正山小種(ラプサンスーチョン)ができるまで

一般的な紅茶とはまったく違う個性的な香りが、正山小種(ラプサンスーチョン)の最大の特徴である。クセになる人続出の甘くスモーキーなフレーバーはどのようにして生まれたのだろうか。
■武夷山の厳しい環境で育った茶葉
正山小種(ラプサンスーチョン)に使われる茶葉は、中国福建省にある武夷山(ぶいさん)で育った「武夷菜茶」と呼ばれる品種だ。標高が高く岩や石が多い武夷山は、茶葉の生育にとっては厳しい環境である。標高が高いため昼夜の気温差が激しく、昼間日光を浴びて作られた養分は夜間の寒さに耐えるため消費することなく蓄えられるのだ。つまり、正山小種(ラプサンスーチョン)の原料は厳しい環境で培われた成分をしっかりと蓄えたすばらしい茶葉なのである。
■松の薪で燻す独特の製法
5月上旬頃に茶葉が摘み取られ、正山小種(ラプサンスーチョン)が作られる。茶葉を揉捻・発酵させるのはほかの紅茶と変わらないが、「釜炒り」という工程を挟むのが独特だ。高熱を加えることで、正山小種(ラプサンスーチョン)ならではの豊かな香りが生まれる。その後、松の木を燃やした炎で乾燥させることで、松の精油が茶葉に染み込みスモーキーなフレーバーがプラスされるのだ。ほかの高級茶は強火で乾燥を行うのに対し、正山小種(ラプサンスーチョン)は強火の後「文火」と呼ばれるわずかな炎でじっくりと時間をかける。この製法こそが、美味しい正山小種(ラプサンスーチョン)の持つ龍眼のような甘い香りと松の薫香を生み出すといわれている。
2. 正山小種(ラプサンスーチョン)の由来

正山小種(ラプサンスーチョン)という名前に落ち着くまで、呼称がいろいろと変化してきた。名前の由来には諸説あるが、有力なのは、「小種」とは武夷山に自生する茶葉の原料の名称であること。そして「正山」とは、正山小種(ラプサンスーチョン)の生産地である武夷山・桐木村を示すこと。
正山が付くようになったのには、正山小種(ラプサンスーチョン)の人気が出るにつれ、別品種の茶葉を燻しただけの劣悪品がほかの地域で作られるようになった背景がある。桐木村で作られたものを内山小種、そのほかの地域産のものを外山小種と区別するようになった。その後さらに劣悪品と正規品を区別する意味で、内山から正山へと変わっていったのである。
正山が付くようになったのには、正山小種(ラプサンスーチョン)の人気が出るにつれ、別品種の茶葉を燻しただけの劣悪品がほかの地域で作られるようになった背景がある。桐木村で作られたものを内山小種、そのほかの地域産のものを外山小種と区別するようになった。その後さらに劣悪品と正規品を区別する意味で、内山から正山へと変わっていったのである。
3. 正山小種(ラプサンスーチョン)の歴史

正山小種(ラプサンスーチョン)が紅茶の起源ではないかという説がある。そもそも正山小種(ラプサンスーチョン)の原料は、武夷岩茶とよばれる高級な烏龍茶の原料でもあった。その茶葉で紅茶が作られるようになったのは、清朝時代のこと。茶屋に軍が侵攻してきたため烏龍茶の製造が中断され、茶葉が湿ったまま酸化してしまった。そこで当時薪として使われていた松を燃やし、室温をあげながらフライパンで茶葉を炒ってどうにか乾燥させようとしたのだ。その結果、松の煙と精油を吸収したまったく新しいお茶が誕生したのである。
茶屋の人々は想像もしなかっただろうが、その後、正山小種(ラプサンスーチョン)は貿易商から注目を集め、イギリス皇室の献上品にまでなったのだ。
茶屋の人々は想像もしなかっただろうが、その後、正山小種(ラプサンスーチョン)は貿易商から注目を集め、イギリス皇室の献上品にまでなったのだ。
結論
正山小種(ラプサンスーチョン)は原料も製法も独特なものであることをお伝えしてきた。ただ燻しただけの類似品とは違い、正規の正山小種(ラプサンスーチョン)はスモーキーフレーバーが控えめで甘みがしっかりと伝わるそうだ。高級茶ゆえに値は張るが、せっかく試すならぜひ正規のものをゲットしたい。
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