1. 食材の冷凍焼けとはいったい何?
冷凍焼けとは、食品を冷凍保存している間に、食品の水分が失われたり、酸化したりすることで、食品本来のみずみずしさや味、食感などが損なわれてしまう現象のことだ。冷凍焼けを起こした食品は、変色して、いかにも美味しくなさそうな見た目になっている。食べても問題はないが、見た目の印象通り、実際に美味しくない。
食材が冷凍焼けする理由
そもそも食品は、時間とともに水分が蒸発していく。冷凍してもわずかではあるがこの現象が起こるため、水分は少しずつ抜けていく。抜けたところに空気が入り込むため酸化も進むことになる。とくに家庭の冷凍庫は、開け閉めすることが多いため、その度に空気が入り込み、冷凍庫内の温度が上がって、元の温度に下がるまでに食品が溶けてしまう。溶けて再び凍ることを繰り返すことで、冷凍焼けが加速することになる。
冷凍焼けした食材の味やにおい
冷凍焼けした食材は、水分が抜けた状態なので、パサパサでかたい食感になるだろう。また食材の旨みや風味が逃げ、味も美味しくはない。冷凍焼けした食材で厄介なのが、においである。冷凍焼けの独特なにおいは、食材が酸化することで発生したり、冷凍庫のにおいやほかの食材のにおいがついたりなど複合的に組み合わさったものなのだ。
2. 冷凍焼けした食材は食べられる?
冷凍焼けした食材は、食感や風味などが落ちるものの、食べようと思えば食べられる。しかし注意が必要な点もあるため、食材の冷凍保存の目安とともに、冷凍焼けした食材を食べる際の注意点を紹介しよう。
食べられるが食中毒に注意が必要
冷蔵庫よりもかなり低温の冷凍庫に保管しているため、食中毒の原因となる菌がいたとしても活動しにくい状態である。しかし、冷凍焼けした食材の冷凍方法や保存中のコンディションが悪いと、冷凍庫で保存している食材でも食中毒を起こす可能性がある。なぜなら、食中毒の原因となる菌はただ活動しにくい状態にあるだけであって、死滅しているわけではないため、じわじわと食中毒の原因となる菌が増殖していることもあるからだ。食材にもよるが、おおよそ2~3週間を目安に調理して使おう。
3. 食材の冷凍焼けを防ぐ4つの秘訣
長期間冷凍保存すると冷凍焼けを起こしがちではあるが、方法次第で冷凍焼けを防ぐことは可能である。ここでは、冷凍焼けをできるだけ防ぐコツを紹介しよう。
コツ1:密閉する
保存する際に、しっかりと密閉して、食品に空気が入らないようにすることで酸化を防げる。冷凍焼けを防ぐには、専用の機器を使って真空包装するというのが最も理想的だ。専用の機器がない場合は、食材を保存袋に入れて、水を入れた鍋やボウルに保存袋をつけると、水圧で空気を抜ける。このほかには、ラップとアルミホイルを使っても、水分の蒸発と酸化を大幅に防ぐことが可能だ。方法はいたって簡単で、食品をラップで包んでから、さらにアルミホイルで包むだけである。
コツ2:急速冷凍する
急速に冷凍すればするほど、食品の細胞壁を破壊せずに凍らせることができる。食品は、凍らせる時間が長くなれば、大きくなった氷の結晶によって、細胞壁が破壊されてしまうのだ。家庭用冷凍庫でできるだけ急速に冷凍するには、食材をアルミに包む、アルミバットに並べるといった方法がよいだろう。アルミは冷気を伝えやすいため、アルミを使わない場合よりも速く冷凍できる。そのほかの方法としては、できるだけ食材を重ならないように平らにして冷凍保存したり、冷凍庫の開け閉めで温度の変化が起きにくい冷凍庫の奥に置いたりするのもおすすめだ。
コツ3:冷凍庫内は低温を保つ
冷凍庫の温度の目安は一般的に、-20℃から-18℃といわれている。この温度を保つためには、冷凍庫の開け閉めを極力減らす。食品は冷ましてから冷凍する。これらを心がけるだけでも冷凍庫内の温度上昇を極力抑えることができ、冷凍焼けを防げるだろう。
コツ4:保存期間はなるべく短くする
保存期間が長くなればなるほど、冷凍焼けが起きやすく、品質も劣化するので、冷凍保存してもなるべく早めに食べるようにしよう。家庭用冷凍庫は、開け閉めや保存している物の量などによって温度がつねに変動するため、長期保存には向かないのである。
4. 食材別の冷凍焼けを防ぐ方法
食材によっても冷凍の進み具合が違う。ここでは、食材別で冷凍焼けさせないコツを紹介する。また、美味しく食べるには解凍方法も重要だ。知らないと食材が水っぽくなることもあるため、解凍方法についても確認しておこう。
肉の冷凍焼けを防ぐ方法
肉の冷凍焼けを防ぐには、砂糖水につけるのが有効である。砂糖は水分と結びつきやすく、砂糖水が食材を覆うことで、食材の水分が逃げるのを防いでくれるのだ。水1Lにつき1gの砂糖を混ぜた砂糖水を使おう。解凍する際は冷蔵庫にうつして、時間をかけて解凍すると、ドリップが出にくい。
マグロなどの魚の冷凍焼けを防ぐ方法
冷凍焼けからマグロなどの魚を守るには、まずは下処理が必要だ。魚の頭や内臓などは傷みやすく、冷凍焼けのにおいの原因になる。冷凍する前に、これらを取り除いてから冷凍しよう。醤油やみりんなどの調味料で、味付けしてから保存するのもおすすめだ。調味料が食材の水分が逃げるのを防いでくれるからである。解凍は肉と同じように、冷蔵庫で解凍するか、ビニール袋に入れ氷水につけて解凍する方法もよいだろう。
うどんの冷凍焼けを防ぐ方法
生めんや茹でたうどんは、1人前など必要な分量にわけて、ラップして保存袋に入れれば冷凍可能だ。うどんの解凍は不要で、凍ったままお湯に入れたり、出汁つゆに入れたりして調理できる。
野菜の冷凍焼けを防ぐ方法
野菜の中でも水分や繊維が多いものは、解凍後筋っぽくなるため、冷凍保存には向かない。使いやすい大きさに切って、生のまま冷凍保存できる食材もあれば、一度茹でてから冷凍したほうがよいものもある。たとえば、きのこ類は生のまま冷凍でもよいが、キャベツやトマト、さつまいもなどは加熱したり調理したりしたあとに、冷凍したほうがよいだろう。解凍する場合は、電子レンジや流水で解凍したり凍ったまま使ったりもできる。
ごはんの冷凍焼けを防ぐ方法
ごはんを冷凍する際は、炊き立ての温かいごはんをラップで包んで、保存袋に入れて保存しよう。ごはんは、時間が経つにつれて水分が抜けて劣化するため、炊き立てのごはんの湯気ごと包むイメージで包むと、その水分が冷凍焼けから守ってくれる。解凍は電子レンジで温めるだけで、炊き立てのようなごはんを用意できるだろう。
5. 冷凍焼けしてしまった食材を美味しく食べる方法
どんなに注意していても、冷凍焼けしてしまうこともあるだろう。ただ、調理方法次第で美味しく食べられるケースもあるため、食材別に方法を紹介する。
冷凍焼けした肉を美味しく食べる方法
冷凍する機会の多い肉類は、それだけ冷凍焼けしやすい食材でもある。ただ、肉類が冷凍焼けした場合、以下のような方法を試すと、美味しく食べられるだろう。
- ポリ袋に、冷凍した肉の重量と同量の水と、重量に対して3%の塩を加えたものに、冷凍焼けした肉を入れて、よくなじませる。
- そのまま冷蔵庫で2~3日保管する。
保管している間に、浸透圧の働きで、抜けた水分が再び肉の中に戻り、みずみずしさが復活する。実際に調理してみると納得できると思うが、ふっくらジューシーに仕上がり、満足できる美味しさを実感できるだろう。冷凍焼けした肉は、パサパサした食感やにおいが気になる場合もあるため、カレーやシチューなどの煮込み料理に使うのがおすすめだ。
冷凍焼けした魚を美味しく食べる方法
基本的に生魚は、長期間の冷凍には向かず、肉のように冷凍前のように戻すのは難しい。そのため、冷凍焼けしてしまった場合は、煮魚やムニエル、フライなどにしよう。
冷凍焼けしたうどんを美味しく食べる方法
冷凍焼けしたうどんは、食感が悪くなり、においが気になる人もいるかもしれない。そのため、シンプルな味付けには向かず、味噌煮込みうどんや焼きうどんなど濃い味の料理にするとよいだろう。
冷凍焼けした野菜を美味しく食べる方法
食材にもよるが、冷凍した野菜を解凍すると、水っぽくなったり、繊維が壊れ食感が変わったりする。これに加えて冷凍焼けしてしまったのであれば、煮込み料理やスープに使うのがおすすめだ。
冷凍焼けしたごはんを美味しく食べる方法
冷凍焼けしたごはんを美味しく食べるには、電子レンジで解凍の途中に、ごはんに酒を小さじ1杯ほどかけ、さらに温めるとよいだろう。においやパサつきが気になるなら、リゾットやチャーハンなどに使うのがおすすめだ。
結論
冷凍焼けした食材は、通常よりも風味や食感が劣るが、食べられないわけではない。冷凍焼けした食材でも美味しく食べられる調理法を知らなければ、「美味しくない」と捨ててしまうかもしれないが、それではもったいない。冷凍焼けを防ぐ方法を知り、万一冷凍焼けした場合も適した調理法で食材を活用しよう。