1. ビオチンの働きと1日の推奨摂取量

ビオチンは、オランダのケーグルという研究者によって発見された水溶性ビタミンである。ビオチンはビタミンB群に属しており、「ビタミンH」と呼ばれていたこともある。現在では「ビタミンB7」と呼ばれることもあるが、ビオチンという呼び方が一般的だ。ビオチンは水やアルコールに溶けやすいが、光や熱には安定する性質を持つ。生体内ではたんぱく質と結合して存在しており、たんぱく質が消化されるときに遊離し、空腸から吸収される。 ビオチンの働きには次のようなものがある。
ビオチンの主な働き
- エネルギー産生を助ける
- 皮膚や粘膜の健康を維持する
- 爪や髪を健康に保つ
ビオチンの推奨摂取量は不明
ビオチンの1日の摂取目安量は、成人男女とも50μgとなっている。国民健康栄養調査ではビオチンに関する項目がなく、日本人の平均摂取量は不明である。
2. ビオチンを含む食べ物や飲み物

ビオチンは次のような食材に多く含まれている。
- 植物性食品 (きのこ類、ナッツ類、酵母)
- 動物性食品 (レバー、卵黄、ししゃも、あさり )
ビオチンはたんぱく質と結合して存在しているため、分解も破壊も起こりにくいビタミンである。普通の食生活では不足が起こりにくいが、卵白に含まれている「アビジン」という糖タンパクはビオチンと強く結合する性質があるため、消化管内でのビオチンの吸収を妨げてしまう。卵を加熱するとアビジンが変性するため影響を抑えられるが、生卵を長期で大量に摂取し続けている場合はビオチンの欠乏症が起こるリスクがある。1日3食のバランスを意識して、規則正しい食生活を心がけていこう。
3. ビオチン不足と感じたら?

ビオチンはさまざまな食品に含まれており、腸内細菌でも作り出せるため、バランスのよい食生活を送っていれば不足することはほぼない。しかし、遺伝的な要素でビオチンの働きに関わる酵素が不足している場合、ビオチンが不足してしまうことがある。ビオチンの欠乏症は、免疫不全症や内分泌系、胃腸症状、皮膚症状など多岐にわたる。ビオチンは糖代謝の補酵素であり、欠乏すると代謝がうまく行われなくなってしまう。乳酸が蓄積して乳酸アシドーシスを起こす場合もあるので気を付けよう。 具体的なビオチンの欠乏症には次のようなものがある。
ビオチン欠乏症の症状
- リウマチ
- シェーグレン症候群
- クローン病
- 糖尿病のリスクが高まる
- 食欲不振
- 皮膚炎
- むかつき、吐き気
- 胸部の痛み
ビオチンの不足を防ぐために
ビオチンは不足も過剰も起こりにくい栄養素である。ビオチン不足の原因としては、先天性のものと医原性のものがある。先天性の場合はビオチンの吸収に関わる「ビオニチターゼ」や、ビオチンを取り込む反応を介する「ホロカルボキラーゼ合成酵素」の欠損によって起こる。医原性の場合は、抗菌薬や抗てんかん剤の長期服用などが原因として挙げられる。このようにビオチンの欠乏症が起こる場合は遺伝的な問題が隠れている可能性があるので、身体に異常を感じたら速やかに病院を受診するようにしよう。
結論
ビオチンは水溶性ビタミンの一種である。糖の代謝に関わったり、皮膚や粘膜の健康を維持したりと重要な栄養素だ。ビオチンはさまざまな食品から摂取できるので、不足についてはそれほど心配はいらないが、ビオチンの吸収を阻害する成分を含む生卵白の摂りすぎには気を付けよう。
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