1. 歴史ある有能な家庭用樹木

かりんは今でこそのど飴として有名だが、庭があるのが当たり前だった頃は、一般的に親しまれている家庭用の木だった。
目で楽しむ
かりんの原産国は中国だ。薬用、観賞用として2000年の歴史がある。日本には平安時代に唐から弘法大師が苗を持ち帰ったことで伝わった。木肌が成長するとうろこ状になってきれいな模様が現れ、春には白やピンクのかわいい花が咲く。秋には紅葉も楽しめ、おまけに実が大変いい香りなので、庭木として愛された。
薬用、芳香剤として
中国の有名な古代薬学書「本草綱目」には、当時から既に「咳止め・利尿作用・鎮痛作用がある」と記されていた。後述するが、かりんには実際に多くの有効成分が含まれている。分析技術の乏しかった昔から、人々はその効能に注目していたのだろう。果実はあまりにいい香りがするので、衣服の香りづけや芳香剤として重宝された。
2. かりんの効能

かりんには、身体にうれしいさまざまな成分が含まれている。
抗菌・炎症作用のあるアミグダリンやビタミンC、タンニンなどのポリフェノール、クエン酸やリンゴ酸、ミネラル、そして食物繊維などだ。
抗菌・炎症作用のあるアミグダリンやビタミンC、タンニンなどのポリフェノール、クエン酸やリンゴ酸、ミネラル、そして食物繊維などだ。
喉のトラブルに
かりんといえばのど飴。かりんには抗菌・炎症作用がある「アミグダリン」、「トリペルテン化合物」が含まれ、のどのトラブルに役立つ。
免疫強化をサポート
かりんは抗酸化・殺菌・抗菌・抗炎症に作用するポリフェノール、βカロテン、ビタミンCを豊富に含み、免疫強化をサポートする。
健康維持に
かりんにはリンゴ酸やクエン酸が多い。これらは疲労物質である乳酸を分解しエネルギーに変換する。余分な水分を排出し、むくみの改善によいカリウム、食物繊維の一種であるペクチンも多いため、日常的に摂取すれば体調管理に役立つだろう。
3. かりんの食べ方

かりんの果実は生のままでは渋みが強く、ナイフの刃も立たないほど硬い。加熱すると渋みがなくなるほか、アルコール漬けにすれば栄養素が溶け出す。加熱や加工に向いている果物なのだ。
かりん酒のすすめ
有効成分がしみ出したエキスを摂取できるかりん酒。かりんだけではなく皮をむいたレモンを加えると、苦味を抑えててマイルドな仕上がりになる。かりんは皮ごと切って漬け込む。出来上がるまで6ヶ月ほどかかるが、素晴らしい香りの果実酒が完成する。生のかりん果実が手に入るなら、ホワイトリカーと氷砂糖を購入して自家製果実酒にチャレンジしてみよう。
ジャムなら子供にも
じつはかりんはジャムにすると、淡い黄色の果実からは想像もつかないほど美しい紅色になるのが特徴だ。かりん2個を皮ごといちょう切りにして、変色しないように30分以上塩水で渋抜きするのがポイントである。ひたひたの水で10~20分煮てからザルで種と実をすべて漉して取り去り、改めて砂糖150gを入れて煮詰めると出来上がりだ。煮込む際は、種からペクチンが出てきてジャムが固まるため、種は最初から取り去らずに一緒に煮るように注意しよう。
結論
喉にいいアミグダリンは加水・加熱でより効果を発揮する。かりんは生では食べられないが、加工すると香りのいい食品になる。完熟かりんが手に入ったらぜひ果実酒やジャムづくりをしてみよう。ちなみに、かりんと見た目や効能、香りがそっくりの「マルメロ」という果物があるが、マルメロの原産国は地中海で、その差は果実の表面に産毛が生えているくらいだ。かりんの表面はツルリとしているので、見分ける時は表皮の産毛を観察してみてほしい。