1. 猪肉と日本

猪肉は、その名の通り猪の肉だ。日本で食べられている猪肉の多くは、家畜ではなく、狩猟されたもの。このように狩猟された猪肉は、かなり古くから食べられていたことが文献などからもうかがえる。肉食の禁じられていた古来の日本でも里山では貴重なタンパク源として用いられていた。
牡丹鍋
牡丹鍋は、猪肉を使用した鍋のこと。江戸時代には庶民の味として親しまれていたようだ。牛鍋が大流行した際、より安価だったため、庶民に広がった。当時は山くじらと呼ばれていたとか。現在では兵庫県丹波篠山地方の郷土料理として知られている。猪肉のほかに、ごぼうや白菜、ネギ、山芋などを味噌ベースの出汁で煮込んで食べるものが基本。
猪肉の栄養
猪肉は、牛肉、豚肉など、一般的な食肉に比べ、カロリーが低く、タンパク質が多い。さらにビタミン類が豊富に含まれている。ビタミンB12に至っては、豚肉の4倍。鉄分も多く、現代人にぴったりの肉と言える。
2. 猪肉と豚肉

生物学的に言うと、豚と猪は同じ種。豚の学名はSus scrofa domesticus 。対して、猪の学名はSus scrofa。domesticusは「家畜化された」という意味なので、豚は家畜化された猪というわけ。猪を品種改良した結果、豚が誕生した。
イノブタ
猪と豚が交配した種、イノブタ。繁殖力が高く、里山を荒らすなど何かと話題を集めている存在だ。そもそも生物学的に同じ種であるという基準は、交配ができるか否かにあると言われている。イノブタは、現在家畜として飼育されていることも多い。
肉の味
実際、同じ種だというだけあって味わいも似ている。ただ、猪は豚に比べるとより濃厚で、食感も硬めで筋肉質。家畜と異なり、野山を駆け巡って生活してきたからこそ、このような味わいになる。また、野生なので個体差が大きい。狩猟後の下処理いかんで、臭みは異なるので、信頼できる業者やハンターから手に入れるといい。
3. 日本のジビエ

農作物被害
近年、森林伐採などで住むところを追われた鳥獣が里山に降り、農作物を食べ荒らすという被害が増えている。その代表格とも言えるのが、猪だ。昔よりハンターや鳥獣を日常的に食べて暮らす人々も減っている。このような理由で山から孤立した猪をいかに有効活用するかが議論されるなか、そのひとつの手立てとして、猪肉を食肉にすることが注目を集めているのだ。
町おこしの原動力に
野生鳥獣の食肉活用は、町おこしの原動力になる。農地を荒らす猪を狩猟して、販売することができれば一石二鳥。過疎化した山間部での継続的な収入源ともなりうるため、多くの地域で注目され、ビジネスモデルが展開している。
未来とジビエ
野生鳥獣を食べることは、食のバックボーンを感じる上でもとても重要。命をいただくという行為をより深く感じることができるのだ。食育という観点からも注目を集めており、野生鳥獣を解体し、食すイベントなども各地で行われている。
結論
実は同じ種である猪と豚。味わいも似ているので、猪肉は初心者にも取り入れやすいジビエだと言える。まずは、美味しいジビエを扱うレストランで食してから、自宅で調理してみるといいだろう。直売などはもちろん、通販でも購入することができる。