1. そもそもお屠蘇とは?
お屠蘇とは、屠蘇散と呼ばれる複数の生薬を漬け込んだ薬草酒のこと。屠蘇散の正式名称は、屠蘇延命散という。屠蘇散に含まれている生薬は、主に以下の通り。
白朮(ビャクジュツ)
オケラの根のことで、体内の水分を正常に調整する働きがあるとされ、漢方では、胃腸の調子を整える、利尿、止汗などに使われる生薬。
山椒(サンショウ)
その名の通り、サンショウの実のことで、炎症を抑える働きがあるとされる。漢方では、胃腸の機能を向上させたり、冷えの改善などに用いられる。
桔梗(キキョウ)
キキョウの根のことで、痛みをやわらげる働きがあるとされている。漢方では、扁桃炎などの緩和に用いられる。
肉桂(ニッケイ)
ニッキやシナモンのこと。血行促進、利尿、解熱、抗菌、鎮静など幅広い働き期待されており、漢方でも、食欲不振、冷えなど、さまざまな症状の改善に幅広く用いられる。
防風(ボウフウ)
セリ科植物の一種であるボウフウの根のこと。発汗や解熱の働きや痛みを抑える働きがあるとされ、漢方では、風邪による悪寒、頭痛、発熱、筋肉痛の緩和などに用いられている。
陳皮(チンピ)
みかんの皮のことで、胃腸の調子を整える、咳を鎮めるなどの働きが期待されており、漢方では、冷え性、肩こり、のどの痛み、せき、腰痛、消化促進、胃もたれの緩和などに用いられている。
2. お正月にお屠蘇を飲む意味
お屠蘇に、上記で紹介したような生薬が含まれていることを考えると、いかにも身体によさそうな酒であることは容易に想像できるだろう。同じく、屠蘇延命散という名称からも、飲めば延命、すなわち長生きしそうな酒であることも容易に想像できるのではないだろうか?
お正月にお屠蘇を飲むのは、年の初めに身体によいお酒を飲んで健康長寿を願うという意味ももちろんあるだろうが、ただ、それだけではない。
お正月にお屠蘇を飲む意味は、諸説あるが、お屠蘇の「蘇」は、災いや病をもたらす鬼のことを意味し、「屠」は、その鬼を打ち負かすことを意味している。そのため、無病息災を願うためにお屠蘇が正月に飲まれるという説が有力のようだ。
また、「蘇」には、蘇生する、すなわち「よみがえる」という意味もあるため、邪気が払われ元気になるために飲むという説もあるようだ。
そして、これらの説は、お屠蘇の歴史と深く関わっている。お屠蘇の歴史についてみていこう。
3. お屠蘇の歴史
お屠蘇の歴史は、いまからおよそ千七百年前の中国の三国時代にまでさかのぼる。三国時代の中国の魏の国に、華佗という名の名医がいて、その名医が、十数種類の薬草を漬け込んだ酒を飲んだことが、お屠蘇の始まりだといわれている。その酒は、邪気を屠り、魂を蘇らせるとして、屠蘇と名付けられた。それ以来、年の初めにこれを飲むと、その年の厄災が避けられ、福寿が招かれると伝えられることになった。そして、中国の唐の時代に、正月にお屠蘇を飲む習慣が定着したようだ。
日本には、平安時代の嵯峨天皇の頃に、和唐使として日本に訪れた唐の博士蘇明という人物によって、お正月にお屠蘇を飲むという習慣が伝えられ、宮中で儀式として定着していったようだ。
その後も、室町幕府や江戸幕府が、正月の儀式として継承した。やがてこの習慣は、庶民の間にも伝わることとなった。当時、年末に医者が薬代のお礼に屠蘇散を配ったとされ、庶民は、その屠蘇散を酒に混ぜて飲んでいたようだ。いまも、年末に薬局が屠蘇散を配るという風習が残っている地方もある。
結論
お正月にお屠蘇を飲む意味やお屠蘇の歴史について紹介した。厳密には、お屠蘇は、きちんとした作法にのっとって飲む必要があるようだ。これを機に、来たる新年には、作法にのっとってお屠蘇を飲んでみてはいかがだろう。
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