1. 鉄の主な働きと推奨摂取量

鉄は体内に3〜5gほど存在している微量ミネラルだ。体内の組織や細胞に酸素を運ぶ「赤血球」を作る成分として欠かせない。身体のなかにある鉄のうち70%はヘモグロビンとして存在し、残りは肝臓などの組織に貯蔵されている。鉄が不足すると、赤血球中のヘモグロビンが減少して赤血球の数が減り、酸素の供給ができない状態となる。この状態が鉄欠乏性貧血だ。具体的な鉄の働きには次のようなものがある。
鉄の主な働き
- 血液中のヘモグロビンの主成分となる
- 筋肉中のミオグロビンの主成分となる
- 肝臓や骨髄、筋肉などにストックされる貯蔵鉄となる
鉄が体内に吸収される仕組み
食べ物から摂取された鉄は、十二指腸で吸収されて身体中へ運ばれる。多くはヘモグロビンとなり、肺の中で酸素と結合して血中に酸素をとり入れる役割を果たす。 各組織は酸素をとり入れて、エネルギー源として利用している。利用されたあとに生じる二酸化炭素も、ヘモグロビンによって肺に運ばれる。
鉄の推奨摂取量
鉄の1日の摂取推奨量は、30〜40代男性においては7.5mg、月経ありの女性では10.5mgが目安となる。 これに対し、成人男女の鉄の平均摂取量は7.8mgだ。男性は不足していないが、月経のある女性は不足しやすい傾向にあるようだ。
2. 鉄を含む食べ物

鉄は動物性食品と植物性食品に含まれている。動物性食品に含まれる鉄はヘム鉄といい、植物性食品に含まれる鉄は非ヘム鉄だ。鉄は身体に吸収されにくいミネラルだが、ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収がよいといわれる。
- 動物性食品...ヘム鉄
魚介類、レバー - 植物性食品...非ヘム鉄
きくらげ、のり
3. 鉄不足と感じたら?

鉄欠乏は、まず貯蔵鉄から減ってくる。この状態では症状のみられない鉄欠乏の状態である。さらに鉄が不足するとヘモグロビンが減り、酸素の供給が不十分となる貧血が起こる。鉄欠乏貧血は女性に起こりやすいが、食事の摂取量が少なかったりバランスが偏っていたりすると男性にも起こることがある。貧血の症状は「なんとなく具合が悪い...」と気づきにくいこともあるので、日ごろから自分の体調に目を向けて異常があった場合は早めに受診するように気をつけよう。さらに、胃潰瘍や大腸癌など、組織の出血を伴う疾患に罹患した場合も貧血を起こしやすい。鉄欠乏性貧血の症状は以下の通りである。
鉄欠乏症の症状
- 息切れ
- 頭痛
- 食欲不振
- 疲れやすい
鉄不足を防ぐために
鉄はビタミンCとともに摂取すると吸収されやすくなる。吸収のよいヘム鉄が含まれる動物性食品をとったり、ビタミンCの多い果物や野菜を一緒に摂取したりしよう。また、ヘモグロビンは鉄とたんぱく質が結合してできている。赤血球合成のために必要な葉酸やビタミンB12や葉酸も同時にしっかり摂取しよう。
鉄の過剰症
普通の食事をしていると過剰になることはほぼないが、サプリメントの摂取によって鉄沈着症を起こすことがある。また、胃の不快感や便秘といった症状も報告されている。
結論
鉄は不足すると貧血を起こす原因となる。男性よりも女性のほうが鉄不足になりやすいが、男性でも貧血を起こすこともある。普段から鉄の多く含まれる食品をとったり、吸収を高めるためにビタミンCと一緒に摂取したりと意識していこう。
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