1. アボカドの黒い斑点や筋は食べられる?
アボカドはメキシコ、そして中央アメリカ原産。常緑高木になる果実で、「森のバター」と呼ばれるほど、栄養豊富(※1)なことでも知られている。バターの名の通り、脂肪分が多いが、この脂肪は不飽和脂肪酸(※2)と呼ばれるものが中心。体内で生成できないものもあるので、食事から取り入れる必要がある。さらに、葉酸などのビタミン、ミネラル、食物繊維などがバランスよく含まれていることから、スーパーフードと呼ばれているのだ。
しかし、いざアボカドを食べようと切ってみると、黒い斑点や筋が見られるということは少なくない。このような場合、どうすればよいのだろうか。
しかし、いざアボカドを食べようと切ってみると、黒い斑点や筋が見られるということは少なくない。このような場合、どうすればよいのだろうか。
アボカドの黒い部分は食べられる
アボカドの断面に黒い斑点や筋があったとしても、廃棄する必要はない。黒い斑点や筋があるというだけなら、傷んでいるわけではないからだ。また、斑点や筋などの黒い部分はアボカドの組織で有害なものではないため、食べても問題ない。ただし、筋が多く食べづらい、見た目が気になるという場合は調理に工夫するとよいだろう。裏ごしすれば、筋を取り除くことができる。潰してペースト状にすれば、黒い斑点は気にならなくなる。
アボカドの中身の黒い斑点や繊維の正体
アボカドにできる黒い斑点や筋は、アボカドの組織が酸化により変色したものだ。種に栄養を運ぶ維管束という部分で、収穫後追熟する過程で酸化が進み褐変するのである。黒く褐変するのは、アボカドに含まれるポリフェノールという抗酸化物質(※3)が原因だ。色素成分であるポリフェノールは、酸化すると褐変する性質をもつ。そのため、ポリフェノールを含むほかの果物などにも同様の現象が見られることがあるが、食べても問題はない。
食べられるアボカドと腐ったアボカドの見分け方
黒い斑点や筋が入っているだけで、果肉の色がキレイなら腐っているわけではない。しかし、次のようなアボカドは腐っている可能性が高いため、廃棄したほうがよいだろう。
- 果肉全体が黒くブヨブヨしている
- 異臭がする
- ヘタ部分にカビが生えている
- 種が簡単に取れ、弾力がなくドロッとしている
アボカドが黒い場合、斑点や筋の部分のみが黒いのか、果肉自体が黒いのかをよく見分けることが大切である。傷んだアボカドの場合、追熟が進み過ぎた結果、果肉全体が黒くなっていることがほとんどだ。異臭やカビ、崩れるほど柔らかいといった状態は腐敗が進んでいる証拠のため、すぐに処分しよう。
2. 表面が黒いのが食べごろサイン!上手なアボカドの選び方
収穫後、しばらく追熟させることでアボカドは食べごろを迎える。しかし、追熟が進み過ぎると褐変し黒い斑点や筋が増えてしまう。できれば、黒い筋などが入らないちょうどよい食べごろを見極めたいところだ。そこで、アボカドの最適な熟し度合いを見極めるポイントをいくつか確認しておこう。
ポイント1.外皮の色みを確認しよう
国内では、「ハス種」というアボカドが最も多く流通している。熟すと外皮が鮮やかな緑色から次第に黒っぽく変色していくのが特徴のため、外皮の色みで判断することができる。濃い緑色から黒になったタイミングが食べごろだ。さらに、時間が経つと追熟が進み過ぎてしまうため、早めに食べよう。ちなみに、スミフル社のプレミアムリッチアボカドのように、食べごろが色みでわかるシールを貼付している商品もある。
ポイント2.ヘタの沈み具合を確認しよう
アボカドは未熟な段階では水分量が多く、果肉にハリがあるためヘタも飛び出している。そこから追熟が進むと、果肉の水分量が減っていきハリが失われ、ヘタが沈んでいく。このヘタの沈み具合から食べごろを見極める際には、外皮とヘタの間に少し隙間ができ始めているか確認しよう。ただし、ヘタが簡単に取れるほど隙間のあるものは熟し過ぎている可能性があるため、早めに食べたほうがよい。
ポイント3.握ったときの硬さで確認しよう
弾力がなく、手に取ったときに硬いアボカドはまだ未熟な状態だ。追熟が進むと果肉が次第に柔らかくなるため、軽く握っただけでも弾力を感じることができる。触ってみて弾力があったら、食べごろと判断してよい。ただし、スーパーや八百屋などで商品を強く握るのはNGだ。傷つけないように優しく触れる、あるいは食べごろ前のものを購入し自宅で追熟させるとよいだろう。
3. アボカドを食べごろにする追熟方法
スーパーや八百屋で食べごろ前の未熟なアボカドを購入し、自宅で追熟する場合、どのような方法が効果的なのだろうか。アボカドを追熟させる方法には、「丸のまま追熟する方法」と「切ったものを追熟する方法」の二つのパターンがある。それぞれの方法について、詳しく見ていこう。
丸のままアボカドを追熟する方法
アボカドは低温に弱いため、冷蔵庫など5℃以下になる場所は避け、常温(18~24℃程度)で追熟させるのが基本だ。3~7日ほど置いておけば、鮮やかな緑色から黒くなり、食べごろを迎えるだろう。追熟を早めたい場合は、ヘタを取り除く、リンゴやバナナなどエチレンガスを発する果物と一緒に置くといった方法も併用するとよい。
切ったアボカドを追熟する方法
アボカドを切ってみたら、まだ熟れていなかったということも意外とある。その場合は、切った状態で追熟することもできる。断面の変色を防ぐためにレモン汁を絞り、表面にラップをしよう。そのまま保存用袋に入れて「丸のまま」と同様に常温保存すればOKだ。
食べごろになったアボカドが黒くなるのを防ぐ保存方法
未熟な状態のアボカドを冷蔵庫に入れると黒くなってしまう。これは低温障害によるものだ。低温に置かれることで酵素の働きが活性化し、ポリフェノールが生成されることが原因といわれている。
しかし、食べごろになったアボカドであれば、冷蔵保存することで追熟を抑えることができる。乾燥を防ぐために保存用袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保管すれば3~5日ほど保存可能だ。アボカドをさらに長期保存したい場合は、冷凍するとよい。皮をむき種を取り、一口大に切る。レモン汁をかけてラップで包んでから、フリーザーバッグに入れよう。冷蔵庫で解凍し、ソースやディップとして使うことができる。
しかし、食べごろになったアボカドであれば、冷蔵保存することで追熟を抑えることができる。乾燥を防ぐために保存用袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保管すれば3~5日ほど保存可能だ。アボカドをさらに長期保存したい場合は、冷凍するとよい。皮をむき種を取り、一口大に切る。レモン汁をかけてラップで包んでから、フリーザーバッグに入れよう。冷蔵庫で解凍し、ソースやディップとして使うことができる。
4. 半分に切ったアボカドが黒く変色する理由
身体によくて美味しいアボカドだが、カットして放っておくと、切り口が黒く変色してしまう。これは、酵素的褐変と呼ばれる現象だ。植物には、フェノール物質など、褐変反応の基盤となるものが含まれている。空気に触れることによって、細胞内にあるポリフェノールオキシダーゼという酸化酵素と反応し、黒や茶色に変化してしまうのだ。
原理としてはごぼうやレンコン、りんごなどが空気に触れて変色するのと同じである。褐変は酸化なので、イコール腐敗とはいえないが、やはり美味しくはない。褐変部分は、取り除いて食べるのがおすすめだ。ただし、果肉が全体的に黒っぽく変色しているものや異臭のするもの、柔らかすぎるものなどは、腐敗の可能性があるので思いきって処分しよう。
5. 切ったアボカドが黒くなるのを防ぐ方法
褐変を防ぐには、いくつかの方法が存在する。食材によってその方法は異なるが、アボカドの場合は、食材の切り口を酸性に変化させ、酵素の働きを低下させる方法が有効だ。具体的には、レモンやライムなどの酸の強いかんきつ類、酢などを用いるのが王道である。
カットしたアボカドなら
カット面の果肉部分に、レモンやライムの絞り汁を加え、ラップでしっかりと表面をカバーして冷蔵庫で保存しよう。こうすれば黒い色に変色することを抑えることができる。熟れているアボカドであれば、1~2日で食べきってしまうことをおすすめする。
ディップにしたアボカドなら
アボカドといえば、ディップにしたワカモレが有名だ。このワカモレの変色を防ぐ方法もカットしたアボカドと同じである。潰されているので、表面積が非常に大きくなっていることもあり、より変色のスピードは早い。黒くなっている部分を取り除くなどしてから食べるといいだろう。日持ちするものではないので、できるだけ早く食べきるのが正解だ。
6. アボカドを食べたら種から栽培してみよう
アボカドを食べたあとに残る種を使って、アボカド栽培をすることができる。寒さに弱いため、気温が20℃程度に安定する5~6月頃に始めるとよいだろう。水耕栽培も可能だが、鉢植えで発芽させる方法が簡単でおすすめだ。鉢と軽石、培養土を用意して始めよう。
種まき
アボカドを食べて残った種は、果肉をしっかりと落としておこう。また乾燥に弱いため、できるだけ早く植えよう。鉢底に軽石を敷き培養土を入れたら、種を植える。このとき、必ず種の尖っているほうを上、平らなほうを下にして植えるのがポイントだ。また、種の頭が少し見えるようにして土を被せよう。発芽まで時間を要するが、乾燥を防ぐために根気よく水やりを続けていく。
発芽後
アボカドは日光を好むため、日当たりのよい場所で育てよう。土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える。ただし、湿気が多いと根腐れを起こすため、風通しをよくしながらタイミングを見て水やりすることが大切だ。また、茎や葉が大きく育ってきたら、成長に合わせて大きな鉢や庭に植え替えをするとよい。ただし、根っこが弱く傷つきやすいため、植え替えの際には丁寧に扱おう。
アボカドの病気
葉の部分が黒くなる、炭そ病と呼ばれる病気が有名だ。枝が密集し風通しが悪くなると起こりやすい。炭疽病は治療ができないため、黒い病斑のできてしまった葉は、すべて取り除いて処分しよう。全体に広がらないうちに早めに発見、対処することが大切だ。適度に剪定し、風通しをよくしておけば防ぐことができる。
結論
アボカドに見られる黒い斑点や筋は、アボカドの組織が追熟により褐変したものであるため、食べても問題ない。果実全体が変色していないか、においや感触などほかに異変がないか見極めることが大切だ。酸化しやすい果物のため、保存の仕方や褐変を防ぐための工夫をおさえておくとよいだろう。
(参考文献)
※1 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」果実類/アボカド/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07006_7
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット「抗酸化物質」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html
※1 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」果実類/アボカド/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07006_7
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット「抗酸化物質」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html
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