目次
1. マグネシウムとは

マグネシウムは人体に必要なミネラルの一種である。成人の場合、一般的に約20~30gが体内に存在する。そのうち約50~60%は、リン酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウムなどとして骨や歯に沈着している。残りの約40%は、筋肉、脳、神経に存在する。(※1、2)
2. マグネシウムの働き

マグネシウムは、リンやカルシウムとともに骨の形成に関わる栄養素である。また、体内にある300種類以上の酵素を活性化し、代謝などの働きを助ける役割をもつ。栄養素の合成や分解過程に関与しエネルギー産生を助ける働きや、神経情報の伝達、筋肉の収縮、血圧や体温の調整などさまざまな働きに利用される。(※1、2)
3. マグネシウムはどのくらい摂取したらいい?

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(※3)では、マグネシウムの1日の推奨量が下記のように定められている。
【成人男性】
- 18~29歳:340mg
- 30~64歳:370mg
【成人女性】
- 18~29歳:270mg
- 30~64歳:290mg
通常の食品からのマグネシウムの摂取に関しては、耐容上限量は設定されていない。サプリメントなどから摂取する場合は、成人1日あたり350mg(小児は体重1kgあたり5mg)が耐容上限量とされている。
4. マグネシウムが不足したらどうなる?

マグネシウムの摂取が不足すると、不整脈が生じやすくなる。不足が慢性的になると、虚血性心疾患、高血圧、動脈硬化症などを引き起こすおそれもある。また、骨の形成にも影響が出る。ほかにも、吐き気や筋肉のけいれん、神経過敏や抑うつ感などが生じたりすることもある。(※1、2)
5. マグネシウムを摂取しすぎたらどうなる?

マグネシウムを摂取しすぎても過剰症になることは稀である。それは、余剰分が尿中に排泄されるからだ。腎機能が正常であれば問題のないことがほとんどだが、腎臓に疾患があるなど腎機能が低下している場合は、過剰摂取により血中マグネシウム濃度が高くなることがある。症状としては、血圧低下や吐き気、心電図異常などが見られる。
また健康な人でも、サプリメントや主成分がマグネシウムであるにがりなどを摂取しすぎると下痢を起こすことがある。食品以外からマグネシウムを摂取する場合は、耐容上限量(※3)を守るようにしよう。(※1、2)
6. マグネシウムが多い食品

マグネシウムはさまざまな食品に含まれている。「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(※4~18)より、とくにマグネシウムの含有量が多い食品について、100gあたりの含有量と、一度に摂取する目安量あたりの含有量を紹介する。魚介類、藻類、種実類、野菜類、豆類の5カテゴリ別に見ていこう。
魚介類
マグネシウムは、干した魚介類に多く含まれている。食品に混ぜ込んだり出汁の材料として使ったりしながら摂取できる。一般的に食べられている魚介類のなかでは、下記の食品のマグネシウム含有量がとくに多い。
- 干しえび:520mg(100gあたり)、31mg(6gあたり)※4
- さくらえび(素干し):310mg(100gあたり)、19mg(6gあたり)※5
- かたくちいわし(煮干し):230mg(100gあたり)、14mg(6gあたり)※6
藻類
藻類はマグネシウムの含有量がとくに多い食品である。一度に食べられる量は少ないが、少量でも効率よくマグネシウムを摂取できるため、日常的に食事に取り入れるとよいだろう。
- あおさ(素干し):3200mg(100gあたり)、64mg(2gあたり)※7
- あおのり(素干し):1400mg(100gあたり)、28mg(2gあたり)※8
- 乾燥わかめ(素干し):1100mg(100gあたり)、22mg(2gあたり)※9
種実類
マグネシウムを含むナッツ(種実類)は種類が多く、スイカの種なども該当する。一般的に食べられるもののなかでは、下記の種実類のマグネシウム含有量が多い。
- かぼちゃの種(いり、味付け):530mg(100gあたり)、53mg(10gあたり)※10
- ごま(乾):370mg(100gあたり)、37mg(10gあたり)※11
- アーモンド(いり、無塩):310mg(100gあたり)、78mg(25gあたり)※12
野菜類
野菜類は一度に摂取できる量が多いため、マグネシウムを含むものを日常的に料理に使用するとよいだろう。一般的によく食べられるものでは、下記の野菜に多く含まれる。
- 切り干し大根(乾):160mg(100gあたり)、24mg(15gあたり)※13
- ほうれんそう(葉、通年平均、生):69mg(100gあたり)、14mg(20gあたり)※14
- ごぼう:54mg(100gあたり)、27mg(50gあたり)※15
豆類
大豆製品もマグネシウム含有量が多い。きな粉はお菓子作りなどに使用すると効率的にマグネシウムを摂取できる。湯葉や油揚げも料理に使いやすい食材である。
- きな粉(全粒大豆 黄大豆):260mg(100gあたり)、16mg(6gあたり)※16
- 湯葉(干し、乾):220mg(100gあたり)、22mg(10gあたり)※17
- 油揚げ(生):150mg(100gあたり)、30mg(20gあたり)※18
結論
マグネシウムはあおさなどの藻類をはじめ、さまざまな食品に含まれている。ほかのミネラルと一緒に摂取することで骨や歯の形成に役立つほか、代謝を助けるなど重要な役割を兼ね備える栄養素だ。サプリメントを併用する場合を除き過剰摂取のリスクも低いため、普段の食事から積極的に摂取しよう。
(参考文献)
※1出典:厚生労働省e-ヘルスネット「マグネシウム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-034.html
※2出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-mg.html
※3出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p309 マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
※4~出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
※4:魚介類/<えび・かに類>/(えび類)/加工品/干しえび
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10330_7
※5:魚介類/<えび・かに類>/(えび類)/さくらえび/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10325_7
※6:魚介類/<魚類>/(いわし類)/かたくちいわし/煮干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10045_7
※7:藻類/あおさ/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09001_7
※8:藻類/あおのり/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09002_7
※9:藻類/わかめ/乾燥わかめ/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09040_7
※10:種実類/かぼちゃ/いり/味付け
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05006_7
※11:種実類/ごま/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05017_7
※12:種実類/アーモンド/いり/無塩
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05040_7
※13:野菜類/(だいこん類)/切干しだいこん/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06136_7
※14:野菜類/ほうれんそう/葉/通年平均/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06267_7
※15:野菜類/ごぼう/根/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06084_7
※16:豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/黄大豆/全粒大豆
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04029_7
※17:豆類/だいず/[その他]/湯葉/干し/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04060_7
※18:豆類/だいず/[豆腐・油揚げ類]/油揚げ/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04040_7
※1出典:厚生労働省e-ヘルスネット「マグネシウム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-034.html
※2出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-mg.html
※3出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p309 マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
※4~出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
※4:魚介類/<えび・かに類>/(えび類)/加工品/干しえび
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10330_7
※5:魚介類/<えび・かに類>/(えび類)/さくらえび/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10325_7
※6:魚介類/<魚類>/(いわし類)/かたくちいわし/煮干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10045_7
※7:藻類/あおさ/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09001_7
※8:藻類/あおのり/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09002_7
※9:藻類/わかめ/乾燥わかめ/素干し
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=9_09040_7
※10:種実類/かぼちゃ/いり/味付け
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05006_7
※11:種実類/ごま/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05017_7
※12:種実類/アーモンド/いり/無塩
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05040_7
※13:野菜類/(だいこん類)/切干しだいこん/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06136_7
※14:野菜類/ほうれんそう/葉/通年平均/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06267_7
※15:野菜類/ごぼう/根/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06084_7
※16:豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/黄大豆/全粒大豆
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04029_7
※17:豆類/だいず/[その他]/湯葉/干し/乾
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04060_7
※18:豆類/だいず/[豆腐・油揚げ類]/油揚げ/生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04040_7
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