- ※1 出典 農林水産省「キャベツを調理して食べてみたら、異臭や苦みを感じました。栽培時に使用された農薬の影響なのですか。:農林水産省」 https://www.maff.go.jp/
- ※2 出典 公益財団法人長寿科学振興財団「ポリフェノールの種類と効果と摂取方法 | 健康長寿ネット」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/polyphenol.html
- ※3 出典 2016 公益社団法人日本農芸化学会「アブラナ科植物とその食害昆虫をめぐる化学生態」 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=708
- ※4 出典 名古屋大学大学院生命農学研究科食品機能化学研究室「イソチオシアネートによるがん予防の可能性 ─細胞増殖の選択的制御とその分子機構─中村 宜督」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jems/26/3/26_3_253/_pdf/-char/ja
1. キャベツが苦い原因について
そもそも、キャベツの苦みはどうして出てしまうのだろうか。
苦み成分が原因
キャベツには、ポリフェノールやイソチオシアネートなどの辛みや苦みを生じる物質が含まれている。これらの物質が保管中に増加することによって異臭を感じたり、食べたときに苦いと感じたりすることがあるのだ。(※1)
・ポリフェノール
買ってきてすぐは無かったのに、いつの間にか黒ずみや黒い点が現れたことはないだろうか。ほとんどの植物には、光合成を行うときにできる苦みや色素の成分であるポリフェノールという成分が含まれている。(※2)葉に黒い斑点や黒ずみがあったとしても、葉から汁が出ていなければ、ポリフェノールが酸素に触れることで黒く変色した可能性が高い。食べても問題ないが、苦いためそこだけ取ることをおすすめする。
・イソチオシアネート
キャベツのようなアブラナ科の野菜には、イソチオシアネートと呼ばれる成分が含まれている。しかし、野菜の中にそのまま存在している訳ではない。葉を虫や動物などが食べ細胞が壊れることで、酵素と辛味・苦み成分の素(グルコシノレート)が反応し、イソチオシアネートは生まれるのだ(※3)。そしてさらに空気に触れて酸化するほどこの成分が増え、苦みが段々と強くなるという仕組みを持つ。これは、必要以上に虫や動物などの外敵に食べられないよう、自分の身を守るための防衛機能として備わっているもの。千切りキャベツやしばらく放置した使いかけのキャベツを苦いと思うことが多いのも、この防衛機能のためなのだ。
2. キャベツが苦いときも食べられる?
苦いキャベツにあたってしまうと、このまま食べても大丈夫だろうかと不安になる方も多いだろう。
腐っていなければ大丈夫
カットしたキャベツの保存期間が長いほど酸化が進み、苦みが増すことが分かっていただけただろう。苦いのは天然の苦み成分であり腐っているわけではないので、食べても有害ではない。むしろイソチオシアネートは発がん物質の毒素をなくし、排泄を促す働きが注目されている(※4)。そして、ポリフェノールは活性酸素などの悪い物質を無害にしておさえてくれる強い抗酸化作用を持つ。(※2)苦いから食べないほうがよいなんてことはない成分なのだ。
3. 苦いキャベツにしない方法
苦みの原因や、苦いと感じても腐っていなければ食べられることが分かったところで、いかに苦みを抑えながら食べられるかが気になるところだろう。ここからは、キャベツの苦みを和らげるための方法を紹介する。
食べる分だけとる
理想をいえば、包丁を入れたキャベツはその日のうちに食べきるのが望ましい。しかし、かさのあるキャベツは余りがちなため、翌日以降に持ち越しているのが現実だろう。キャベツの細胞に刺激をできるだけ与えないためには、今日食べる分だけを切るようにする。また、キャベツを切るときは外側から葉を1枚ずつめくって使うとよい。こうすれば残ったキャベツには切った断面が残らないため、イソチオシアネートの発生が抑えられる。切り口が空気に触れる面積を最小限に抑えるメリットも。
切ったらすぐ使う
キャベツは時間の経過とともに酸化し、苦みが増していく。そして、細かく切れば切るほど酸素に触れる面積が増えるので、酸化が早まりより苦いと感じやすくなる。そのため、カットするのはできるだけ食べる直前に行うほうがよいだろう。また、切れ味の悪い包丁でキャベツを切るのはおすすめしない。「切る」というより「潰している」ので、イソチオシアネートがより多く発生してしまうからだ。買ったばかりの新鮮なキャベツは優先的に千切りなどの生食用にして、残りは苦いと感じにくい炒め物などの加熱調理用にするという方法もおすすめだ。
水にさらす
キャベツの苦み成分であるポリフェノールやイソチオシアネートは、水に流れ出る性質をもつ。(※2)そのためカットしたキャベツを、水にさらしたり流水で洗い流したりすることで、苦みを抑えられる。また、キャベツを刻むと切り口からは水分が飛んでいってしまう。水にさらすことで水分を補えシャキシャキ感が増すので、サラダなどに生で食べる際はとくにおすすめだ。ただし、キャベツに含まれるビタミンUやビタミンCなども水に溶けやすく、水にさらし続けるとこれらの栄養成分まで流れ出てしまうので注意してほしい。5分程度を目安にし、さらしすぎないようにするとよいだろう。
結論
キャベツの苦いと感じる原因である成分と、苦みを抑える方法を紹介した。購入するときは、キャベツを手に取り虫に食われた跡がないキレイな状態のものを選ぶとよいだろう。葉の色が変色したものも避けたいところ。すでにカットされたキャベツを選ぶ場合は、店頭に並んだばかりの新鮮なものにするなど簡単にできることばかり。ぜひ取り入れていってほしい。
(参考文献)