目次
- ※1.国立研究開発法人科学技術振興機構「アシタバの成分と系統育成」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku/58/12/58_12_999/_pdf
- ※2.小学館デジタル大辞泉「カルコン」 https://kotobank.jp/dictionary/daijisen/
- ※3.農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター「 アシタバの機能性に関する研究と特許出願の動向」 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010752866.pdf
- ※4.日本生薬学会「アシタバの成分(第5報) : 果実の成分および果実,根,葉におけるクマリン類,カルコン類の比較」 https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10757947_po_ART0009866623.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
- ※5.内科総合クリニック人形町「医師と考えるおすすめ青汁 目的別の正しい選び方」 https://ningyocho-cl.com/yasai/
- ※6.文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)野菜類/あしたば/茎葉/生」 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06005_7
- ※7.平凡社世界大百科事典「ビタミン」 https://kotobank.jp/dictionary/sekaidaihyakka/
- ※8※9.厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- ※10.国立研究開発法人科学技術振興機構「健常人および境界域糖尿病者に対する明日葉青汁の過剰摂取時の安全性評価」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/9/2/9_83/_pdf
1. 明日葉の効能とは

明日葉は江戸東京野菜のひとつとされている。八丈島や大島などの海岸付近で栽培されることが多い。明日葉は、伊豆諸島において薬草として使用されてきた伝統がある。それらの言い伝えをまとめてみよう。
伊豆諸島で伝わる効能
明日葉は、セリ科の多年草である。ここではまず、科学的なエビデンスに頼らない俗間の効能について紹介する。伊豆諸島では明日葉はさまざまなシチュエーションで活用されてきた。たとえば、明日葉の液を塗布して皮膚病や虫刺されの治療を行う、明日葉を食べて出産後の母乳の出をよくする、胃腸の調子を整えるなど民間治療薬としての効能が伝えられているのである。(※1)
2. 明日葉の研究されている効能

明日葉の効能については、民間伝承のみならずさまざまな研究が行われ明らかになっていることが多い。その研究結果のいくつかの中から、明日葉の効能について紹介する。
成分と効能
明日葉にはカルコンという物質が含まれている。(※1)カルコンは有機化合物のひとつであり、フラボノイドの合成に関連する物質である。(※2)以前より抗菌作用については認められていたが(※2)、近年の研究では抗アレルギー作用や抗腫瘍作用も動物実験で認められている。(※1)こうした効能を活用して、明日葉を原料とした特許の申請も少なくない。(※3)
いっぽう、明日葉の根にはクマリンという物質の存在も認められている。(※4)クマリンも抗菌作用がある物質であり、明日葉を使用した青汁を推奨する医療関係者もいる。(※5)明日葉は美味しいだけではなく、健康や美容に寄与する要素を多分に含む可能性が、研究によって明らかになりつつあるのである。
3. 明日葉の栄養と効能

明日葉は現在も研究中のテーマが多いものの、ビタミンやミネラルなどの栄養素にも恵まれていることを忘れてはならない。おひたしや天ぷらなどおかずにしても美味しい明日葉、すでに認められている栄養について見てみよう。
栄養成分と効果効能
文部科学省の食品成分データベースを参考に、生の明日葉100g当たりの栄養成分の量をリストアップする。また、その栄養によって得られる可能性のある効能についてもおさらいをしておこう。(※6)
・βカロテン 5300μg
明日葉には多量のカロテンが含まれている。カロテンはビタミンAの前駆体である。ビタミンAは皮膚や粘膜、骨や中枢神経を正常な状態に保つ働きをしている。(※7)
・食物繊維 5.6g
明日葉には食物繊維も豊富に含まれている。食物繊維は腸内の環境を整えるだけではなく、コレステロールや血糖値の上昇を妨げる働きも認められている。(※8)
・ビタミンK 500μg
明日葉はビタミンKも豊富な野菜である。ビタミンKは抗出血のビタミンと称され、血液との関連が深い。(※7)
・ビタミンC 41mg
野菜や果物に多く含まれるビタミンC。明日葉にもその存在が認められている。ビタミンCはコラーゲンの合成の必須要素であるだけではなく、免疫機能を強化する働きもある。(※7)
・カルシウム65mg
明日葉に含まれるカルシウムは、歯や骨の形成に必要なミネラルである。神経や血液内にも存在し、人体の正常な機能の保持を助けている。(※9)
4. 明日葉の摂取量と副作用

明日葉のさまざまな栄養は、ぜひ食生活にも取り入れたいところである。青汁の原料にもなる明日葉は、摂り過ぎによる副作用があるのだろうか。正しい摂取量はどのくらいになるのだろうか。
過剰摂取した場合
2012年に報告された研究では、健常者や軽度の糖尿病者を対象に、明日葉の青汁を過剰摂取した場合の副作用がテーマとなっている。それによると、明日葉との直接的な関連性は不明であるものの、口内炎や腸の不調、アレルギーが起こったことが報告されている。いずれもごく軽度であることから、研究の結論では明日葉の青汁を多量に摂取した場合も臨床上の問題はなく、安全性は高いと明記されている。(※10)とはいえ、明日葉をそのまま食べる場合も青汁で摂取する場合も、常識と節度を持つことが肝心である。
結論
伊豆諸島で生産される明日葉は、民間療法でも用いられてきた歴史がある。近年の研究で、カルコンやクマリンの有効成分が研究されているほか、ビタミンやミネラルも多く含むのが明日葉である。青汁の材料にもなるほど栄養に恵まれた明日葉であるが、摂り過ぎには注意して、適量を摂取するようにしよう。
(参考文献)