目次
1. チーズの食べ過ぎによる身体への影響

チーズは乳製品のなかでも水分が少なく、栄養成分が凝縮されている。たんぱく質や脂質が多く含まれ、カロリーも可食部100gあたり313kcalと高い(一般的なプロセスチーズの場合※1)。
そのため、食べ過ぎると摂取カロリーが多くなり、太る原因となるだろう。ほかにチーズを食べ過ぎると起こり得る症状、身体への影響にはどのようなものがあるか見ていこう。
チラミンによる生理作用
ナチュラルチーズに含まれるたんぱく質が熟成により分解、脱炭酸されることで生じるチラミン(アミンの一種)には、交感神経興奮作用がある。摂取し過ぎると、血圧の上昇や頭痛、嘔吐などを引き起こすため、チーズの消費量が多い欧米では注意喚起されてきた。チラミンの含有量はチーズにより異なり、チラミンの代謝活性も個人差がある。(※2)
いずれにしても、チーズの食べ過ぎはチラミンによる生理作用が引き起こされるリスクが高まると考えられる。
がんのリスクを高める
国立がん研究センターによる研究(※3)では、乳製品の摂取量が増えるほど前立腺がんのリスクが高くなるという結果が報告されている。そのため、チーズの食べ過ぎも前立腺がんのリスクを高める可能性があると考えられる。
しかしその一方で、チーズを含む乳製品は、骨粗しょう症や高血圧、大腸がんなどの疾患に関して予防的であることも報告されてきた(※3)。食べ過ぎは避けたほうが安心だが、チーズにはメリットもあるため、適度な摂取を心がけるとよいだろう。
2. チーズの食べ過ぎにならない量

チーズは一日にどのくらいまでの量なら食べ過ぎにならないのだろうか。明確な基準はないが、カロリー面から考えられる目安量を紹介する。
一日の摂取量の目安
チーズを間食として食べる場合、間食の目安カロリー(200kcal※4)に該当する重量は約60gである(※1)。ベビーチーズなら約4個分、スライスチーズなら約3枚半が目安だ。
日常的にチーズを食べる場合は、60g程度を上限にするとよいだろう。
チーズは脂質も塩分も多く、ほかの食品からも摂取することを考えると、過剰摂取にならないよう注意が必要である。一日に60gのチーズを摂取すると、脂質15.6g、食塩相当量1.7gを摂取することになるが、それぞれの摂取量の目安(脂質50g、食塩相当量6.5?7.5g未満)からも余裕のある数値だ。(※1、5、6)
3. チーズを食べ過ぎずに適量にするメリット

チーズは食べ過ぎに気を付けて適量を守れば、さまざまなメリットのある食品だ。嗜好品として風味のよさを楽しめるという機能性だけでなく、栄養面における機能性も期待できる。チーズの主な栄養と機能性についておさえておこう。
栄養と機能性 (※1、7、8、9)
良質なたんぱく質
チーズにはアミノ酸のバランスがよい良質なたんぱく質が豊富に含まれている(60gあたり13.6g)。さらに発酵の段階でアミノ酸やペプチドに分解され消化されやすく、吸収率もよい。効率よく筋肉を作るのに役立つ食品といえる。
豊富なカルシウム
チーズにはミネラルが多く含まれ、とくにカルシウム含有量が多い(60gあたり378mg)。チーズ中の乳糖や乳酸、ペプチドによりカルシウムの吸収が促されるため、吸収率もよい。 チーズを食べることでカルシウムを効率よく摂取でき、骨の成長や健康維持に効果が期待できる。
ペプチドによる抗酸化作用
チーズが熟成する過程で生成されるペプチドには、抗酸化作用があることがわかっている。とくに、熟成の進行したナチュラルチーズに多く含まれ、強い抗酸化作用が期待できる。抗酸化物質は活性酸素の発生や働きを抑制し、さまざまな疾病や老化を予防するのに役立つ。
結論
チーズは脂質が多く高カロリーな食品のため、食べ過ぎるとカロリーオーバーになり肥満のリスクが高まる。また、頭痛など体調を崩す原因となることもある。嗜好品として楽しむためにも、食べ過ぎには注意したい。日常的に食べるなら一日60gを目安にすると安全である。たんぱく質やカルシウムが豊富なチーズを適度に美味しく食べて、健康維持に役立てよう。
(参考文献)
※1出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/プロセスチーズ
※2出典:北海道立食品加工研究センター 報告 No.2(1996)ナチュラルチーズ中のチラミンの低減化(川上 誠 ・田村吉史)p21
※3出典:国立研究開発法人国立がん研究センター 乳製品、飽和脂肪酸、カルシウム摂取量と前立腺がんとの関連について
※4出典:厚生労働省e-ヘルスネット 間食のエネルギー(カロリー)
※5出典:医療法人徳洲会仙台徳洲会病院 スタッフブログ > バランスよく食べるコツ
※6出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ナトリウムの働きと1日の摂取量」
※7出典:独立行政法人農畜産業振興機構 乳製品で大きくなろう!
※8出典:井越 敬司(九州東海大学農学部)「乳発酵食品と健康―特にチーズと健康機能について―」
※9出典:聚楽内科クリニック 子供からお年寄りまで 毎日食べたいチーズの効能