1. 水の賞味期限
市販のペットボトルの水に表記されている賞味期限は、どのように決められているのだろうか。
保存できる期間
ペットボトルの水の賞味期限は、製造日から2~3年を目安に設定されていることが多い。日付まで細かく記載されている商品もあるが、年月までの大まかな表記のものもある。基本的には、未開封の水は賞味期限を目安に保存できると思っておくとよい。
ペットボトルの水の賞味期限の意味
一般的に賞味期限とは、「美味しく食べることのできる期限」を示すもの(※1)だが、ペットボトル入りの水の場合は意味合いが異なる。ペットボトルの素材(ポリエチレンフタレート)には気体をごくわずかに通す性質がある。そのため、外部のにおいが水に移ることに加え、水が少しずつ蒸発することにより量が減ってしまうという問題が発生するのだ。商品に500mlで2%、2Lで1%を超えた量の誤差が出ると、計量法違反となってしまう。それを防ぐために、表示された容量を確保できる期限として賞味期限が記されているのである。(※2)
備蓄用の水が長期保存できる理由
備蓄用として販売される水は、賞味期限が5年以上ほどと長く設定されている。これは、ペットボトルの素材が通常より厚く気体透過性が低いからだ。複数のボトルが入るダンボール箱も、一般のものより厚く取手用の穴が開いていないため、におい移りがしにくい。5年ほどの長期保存を目的にするなら、備蓄用の水を購入すると安心だ。(※2)
2. 水が賞味期限切れになったら
保存していた水が賞味期限切れになってしまっても、飲めないとは限らない。賞味期限切れの水が飲めるかどうかは、開封前か開封後かによっても異なる。
開封前の場合
食品に表示される期限には「消費期限」と「賞味期限」の2種類がある。消費期限は総菜や生鮮食品などに記載されることが多いもので、安全に食べられる期限を示している。主に傷みやすい食品に示されているため、期限切れになると食べられなくなるケースが多い。一方、水や缶詰などに記載されている賞味期限は、美味しく食べられる期限を示すものだ。
開封前の水なら、賞味期限切れになってもすぐに腐ることはない。ただし、におい移りで味が落ちる可能性はあるだろう。(※1、2)
開封後の場合
賞味期限は開封前の食品に適用されるものだ。そのため、開封すると賞味期限は無効となる。ペットボトルの水は殺菌済みだが、開封すると空気に触れ雑菌が入ってしまう。賞味期限切れか否かに関わらず、開封後は速やかに飲みきる必要がある。(※1、2)
開封後の水は冷蔵保存し、1週間以内を目安に使いきろう。口をつけてしまった場合は雑菌が入りやすいため、翌日までには飲みきったほうがよい。
3. 水の正しい保存方法
水は正しい方法で保存すれば、賞味期限までは味や量がキープされ、賞味期限が切れてもしばらくは問題なく飲める。
冷暗所で保存
ペットボトルの水は、基本的に常温保存でよい。冷やして飲みたい場合を除き、冷蔵庫に入れておく必要はない。しかし、直射日光が当たる場所や高温の環境に長時間置いておくと、中身や容器が劣化してしまう。長期保存したいなら、窓際や車のなかに置きっぱなしにすることは避け、冷暗所で保存しよう。
強いにおいから離して保存
ペットボトルに入った水は、気体の透過によりにおい移りする可能性がある。そのため、賞味期限まで保存して美味しく飲むには、強いにおいを発するものとは離して保存するのがおすすめだ。備蓄用の水の場合は、ダンボール箱に入った状態で保存するとより効果的である。(※2)
結論
市販のペットボトルの水の賞味期限は、美味しく飲めるという本来の意味よりも、量を確保できる期限という意味合いで設定されている。そのため、賞味期限を過ぎてもしばらくは美味しく飲める場合も多い。未開封の水は冷暗所で常温保存し、開封したら早めに飲みきろう。また、備蓄用の水はボトルに特殊な素材が使われている。できればダンボール箱ごと冷暗所で長期保存し、いざというときに役立てよう。
(参考文献)
※1、2出典:農林水産省
※1:子どもの食育「消費期限と賞味期限」
※2:消費者の部屋「地震発生時等の防災備蓄用の水として、5年保存や7年保存、15年保存などの長期保存水が販売されていますが、これは通常販売されているペットボトル容器のミネラルウォーターとはどのように違うのですか。」
監修管理栄養士:小林里穂
経歴:管理栄養士養成施設を卒業後、栄養士資格・管理栄養士資格・栄養教諭資格を取得。学校給食センターでの勤務時に小・中学生に食育を実施した経験を活かし、栄養分野の記事執筆・監修を中心に活動中。