目次
1. あんこうのどぶ汁の起源

かつて「常磐路のあんこう」で知られた茨城県の海沿いでは、浜にずらりと水揚げされたあんこうが並べられ、冬の風物詩と呼ばれていた。当時の漁師が、船上で調理する際に、貴重な水を節約するために、あんこうの肝と野菜の水分だけで作った料理があんこうのどぶ汁だ。鍋に溶けだしたあんこうの肝と野菜の出汁が「どぶろく」のように見えることから「どぶ汁」と呼ばれるようになったという説がある。
漁師料理
凝縮された野菜の旨みと、あんこうの肝の風味と味噌だけで味付けされた濃厚などぶ汁は、栄養満点で身体を温めるのにもうってつけだ。あんこうは身や皮、内臓などほとんど食べられる魚で「あんこうの七つ道具」とも呼ばれている。あんこうを余すことなく使った、漁師らしいワイルドな料理であるどぶ汁は、漁師の知恵と工夫が詰まった逸品といえるだろう。
2. あんこうのどぶ汁レシピ

漁師料理と聞くと難しそうなイメージがあるかもしれないが、あんこうのどぶ汁は簡単に家で作ることができる。ここではあんこうのどぶ汁の作り方と、作る際のポイントを説明しよう。なお、レシピにある具材だけでなく、冷蔵庫にある具材や旬の野菜を入れても美味しく仕上がるだろう。あんこうの肝とあんこうの食感がたまらない美味しさを引き立ててくれるあんこうのどぶ汁、ぜひその作り方をマスターして、献立に加えてほしい。
作り方とポイント
まず、土鍋にあんこうの肝を入れて中火で炒める。途中で酒とみそを加え、練りながらじっくり炒めよう。次に一口サイズに切った春菊や白菜、しいたけや長ネギなどの具材を加えて煮込む。水分が足りなければ、だし汁を加えるとよい。ぐつぐつ煮立ったらあんこうのどぶ汁の完成だ。
ポイントはあんこうの肝を炒る際に、酒を使って臭みを飛ばすことだ。また、基本的にはあんこうと野菜の水分だけで作るため、野菜をたっぷり入れて野菜の水分をしっかり出すようにしよう。旬の野菜などを使ってアレンジするのもおすすめだ。
3. あんこう鍋とどぶ汁の違い

あんこう料理として広く知られているあんこう鍋だが、実はあんこうのどぶ汁の方が歴史は長い。あんこう鍋と、あんこうのどぶ汁の違いをご存知ない方も多いだろう。
あるとき、あんこうのどぶ汁を商品化し、お茶の間に広めようと考えたところ、調理法が手間なことが引っかかった。そこで調理方法を簡略化し、割り下を加えて煮るだけと手軽にしたのがあんこう鍋だ。店によって割り下を変えることで、味付けのバリエーションが広がり、人々から親しまれるあんこう鍋となったのだ。
調理方法の違い
鍋で煮る点や材料など、似ている2つのあんこう料理だが、大きな違いは調理工程にある。あんこうのどぶ汁はあんこうの肝を鍋で煎って肝油にし、酒や味噌、野菜を加えてじっくり水分を出しスープを作る。一方あんこう鍋は割り下のスープに具材を加えるという、一般的な鍋と同じ調理方法だ。あんこうのどぶ汁と違い、あんこうの肝を煎ったり、じっくり水分を出したりする手間がないため、あんこう鍋の方が広く知られている。
結論
あんこうのどぶ汁についてご紹介したが、食欲をそそられただろうか?あんこうの郷土料理と聞くとややこしそうなイメージがあるかもしれないが、実は簡単に家で作ることができる。また、あんこうが手に入らない場合は、通販などであんこうのどぶ汁を購入してみるのもよいだろう。濃厚で温かいあんこうのどぶ汁で、心も身体も元気に過ごそう。
監修管理栄養士:渡邉里英
経歴:大学で栄養学を学び、大学院卒業後、医学関連出版社に就職。管理栄養士としての知識と医学雑誌の編集経験をもとに、オリひと食料理記事の監修に至る。