1. そもそも冷凍焼けしたものって食べられるの?
そもそも冷凍焼けしたものは、食べても問題ないのかということが気になっている人が多いだろう。はじめに、冷凍焼けについて説明していこう。
どういう状態が「冷凍焼け」なの?
そもそも冷凍焼けとは、どのような状態を指すのか。それは、冷凍庫で保存していた食品が白っぽくなったり、変色したりしている状態である。特にお肉でいうと、くすんだ色になっていたり表面が乾燥していたりしたら、冷凍焼けの状態だといえる。
「冷凍焼け」=「腐っている」ではない
ここで誤解されやすいのは、「冷凍焼け」=「腐っている」ということ。冷凍焼けした食品は、品質は低下しているものの決して腐っているわけではないのだ。そのため、食べても体に大きな害はないといわれている。ただし、長期保存しすぎてひどく冷凍焼けしているものは、臭くなっていたり味が落ちていたりするため食べるのはおすすめしない。
冷凍したものは基本的に「腐らない」
そもそも、「腐る(腐敗)」という状態は、微生物が食べ物を分解して毒素を作る状態を指している。微生物は、基本的にマイナス12度以下では増殖しないとされており、冷凍庫に入れている食材は腐りにくい。
ただし、一度冷凍したものを間違えて冷蔵庫に入れたり、冷凍庫から頻繁に出し入れをしてしまったりすると、食品の温度が上がり腐る可能性もあるので注意が必要だ。
2. 冷凍焼けした肉の復活方法
少し冷凍焼けしたお肉であれば食べても問題がないことがわかったところで、実際に冷凍焼けしたお肉を美味しく食べる方法を紹介しよう。
冷凍焼けしたお肉の解凍方法
お肉は、冷凍焼けを起こすとパサついてしまうので、そのまま煮たり焼いたりしても食感が悪くなる。そんなときは肉の塩分の浸透圧を利用すれば、元の状態に近づけることができる。
冷凍焼けしたお肉は、お肉の3%の塩水に浸けて解凍するとよい。塩水は、ボウルかポリ袋などに入れ、その中にお肉を浸けて、2~3日冷蔵庫で寝かせる。
実際に塩水に漬けて解凍したお肉は、そのまま解凍したお肉よりも水分が戻ることで、ジューシーな肉質に近くなる。なおこの方法は、ひき肉には使えないので注意してほしい。
冷凍焼けしたお肉のおすすめの料理法は?
冷凍焼けしたお肉は、臭みなどが気になることがあるかもしれない。そういうときはカレー、シチューといったお肉にじっくり火を入れて作る料理にすると、パサつきが気にならないのでおすすめだ。
3. 冷凍焼けはどうして起こるの?冷凍焼けの原因
冷凍焼けしたお肉は、前章でも説明した通り復活方法があるのだが、これからはなるべく「冷凍焼け」しないように気をつけたい。
そもそも冷凍焼けとは、食材の「乾燥」と「酸化」によって品質が劣化する現象のことを指す。
冷凍庫に入れている食材の乾燥はなぜ起こる?
実は、冷凍庫は外よりも乾燥している。「冷凍庫内が乾燥している」といわれてもなんとなく実感がわかない人もいるかもしれない。では、製氷皿で作った氷をイメージしてほしい。製氷皿いっぱいに水を入れて、氷を作ったはずなのに、氷が完成したときには、少し小さい氷ができていないだろうか。これは乾燥していて水が奪われた証拠なのだ。
これは冷凍庫のなかで「氷が昇華する」ことによって起こる現象だ。氷が昇華するというのは、固体として存在している水分(氷)が、液体になる工程を飛ばして、気体になる現象のことをいう。冷凍庫内は乾燥しているため、この昇華の現象が起こりやすい。
食品が乾燥していると、水分が抜けるということなので、パサパサして品質が落ちている可能性がある。
食材が「乾燥」から「酸化」するメカニズム
食品が「乾燥」した部分は、冷凍庫内の空気に触れている状態だ。食品が乾燥すればするほど、空気が触れる部分が増える。するとタンパク質や油分の「酸化」が起こりやすくなるのだ。
酸化をすると、色が変わることがある。マグロを家の冷凍庫で保存していると生の状態とは違う色になる。そういった色の変化は酸化によって起きている。そして「乾燥」と「酸化」を繰り返し、「冷凍焼け」が起こってしまうのだ。
霜がついている食品、これも冷凍焼け?
勘がよい人は、霜がついている食品を見ると、もしかしたらこれも冷凍焼け?と思っている人もいるかもしれない。霜とは、一度冷凍された食材の温度が上がって、食品の表面の水分が再凍結してできている可能性が高く、これもまた「冷凍焼け」の原因のひとつである。
4. 冷凍焼けを防ぐためのポイント
それでは、お肉を冷凍焼けしないようにするには、何をすればよいのかを説明しよう。
1.空気になるべく触れさせない
冷凍する食品が空気に触れる体積が大きければ大きいほど、酸化は進んでしまう。よってお肉を冷凍するときは、できるだけ食品を、真空状態に近づけた状態にするのがよい。
お肉をなるべく真空状態で保存する方法とは?
お肉にぴったりとラップを巻いたあとに、ファスナー付き保存袋に入れてストローで空気を抜くなどの工夫により、真空状態に近づけることができる。
冷凍用の保存袋って冷蔵用と何が違うの?
スーパーで売られているファスナー付き保存袋には、実は冷蔵用(普通のタイプ)と冷凍用がある。そして冷凍用は「冷凍用」や「フリーザーパック」と表記されている。
冷凍用の保存袋は、低い温度でも耐えられるように約0.07㎜と厚めの作りになっていることが多い。また電子レンジで解凍するときに使えるという利点も兼ね備えている。一方で、冷蔵用(普通のタイプ)は、加熱ができないというものも多い。
2.買ってきた肉のパックをそのまま冷凍はNG
買ってきたお肉のパックは、そのまま冷凍庫に保存するのが手っ取り早い。しかしお肉のパックには、ドリップが出ている可能性があるので、そのまま冷凍庫に入れるのはNGである。
ドリップとは?
ドリップとは、お肉の水分やタンパク質、うまみが含まれており、そのまま臭みの原因になる。よって冷凍前には取り除く必要がある。
肉の入っているパック、これもNG!
またドリップだけではなく、お肉の入っているパック、これも断熱材の代わりになってしまうので、冷凍用の容器としてはNGだ。また、お肉の下に敷かれている「ドリップ吸収シート」も冷凍をするのは、不衛生だ。
お肉の正しい保存方法は?
まずはお肉からドリップ吸収シートを離して、お肉についているドリップはキッチンペーパーでふき取ってから冷凍しよう。
3.早く食べきる
とてもシンプルな方法だが、早く食べきれば、物理的に水分が昇華されることが少なくなるので、なるべく早く食べきるとよい。
よく「冷凍した肉は2ヶ月くらいまでが賞味期限?」といわれることが多いが、家庭で冷凍するお肉は、1ヶ月を目安に食べることをおすすめする。ひき肉は空気に触れる部分が多いので、2週間を目安にしてほしい。
また「豚薄切り肉」、「鶏もも肉」、「豚挽き肉」といった部位は、家庭内で使用頻度が高く、早めに食べきることができる部位だともいえるので、冷凍をするなら、それらの部位だけにしようと割り切るのもいいだろう。
豚薄切り肉の保存方法
ロース、肩ロース、豚バラなどの豚薄切り肉は、200gくらいを薄く広げて、ファスナー付き保存袋に入れて保存しよう。またこれらの部位は、たれにからめておいたり、酒や醤油などに漬けておいたりといった、下味後の冷凍も時短になって便利である。
また下味をつけておくことで、お肉から水分が昇華することを防いでくれるので、冷凍焼けの防止にもつながり、一石二鳥である。
鶏もも肉の保存方法
鶏もも肉を保存冷凍する場合は、肉1枚を2等分にして、包丁を入れて厚みが均等になるようにして、ファスナー付き保存袋に入れて保存しよう。鶏もも肉は、唐揚げ、親子丼など普段の料理でもよく使う部位であるため、冷凍すると意外と便利に使うことができる。
豚挽き肉の保存方法
豚ひき肉は、200gのファスナー付き保存袋に入れて薄くなるように空気を抜く。そのあとで菜箸などで4等分の線をつけておくと、小分けにして使うときも便利である。
4.冷凍庫を低温に保つ
冷凍庫の中の温度が上がったり下がったりすると、解凍と凍結を繰り返すことになる。そうすると食材の劣化は早く進む。
冷凍庫の開け閉めは最低限に
冷凍庫の温度の上がり下がり原因となるのは、冷凍庫の開け閉めだ。なるべく冷凍庫は開け閉めを最低限にすることが、肉の劣化を防ぐことになる。
また冷凍庫はある程度、食品が詰まっている状態の方が冷気が逃げにくくなり、効率よく冷えた状態になるので、冷凍庫の在庫管理も工夫をしてほしい。
温かい料理を冷凍庫にそのまま保存してはNG!
また温かい料理をそのまま冷凍庫に入れてしまうと冷凍庫の温度を上げてしまうので、きちんと粗熱をとってから、冷凍しよう。
5.食品を急速冷凍する
食品をゆっくりと冷凍すると食品の細胞が壊れる。細胞が壊れるとその分空気の通り道が増えるため冷凍焼けが起こりやすくなる。
冷凍庫に急速冷凍室がある場合は、そこに入れて急速に冷凍をするようにしよう。また急速冷凍室がない場合は、熱伝導率がよい金属製のバットの上にのせて冷凍庫に入れると早く凍らせることができる。
結論
冷凍焼けしたお肉は、塩水に浸けて解凍することでパサつきが軽減される。完全に元の状態に戻るわけではないが、おいしく食べられる状態に近づけることはできる。冷凍焼けを起こさないためには、お肉を買ってきたときのパックのままで冷凍するのではなく、保存袋に入れ替えて冷凍をしよう。
監修管理栄養士:藤井千晃
経歴:リクルート営業経験後、300本を超える栄養関連の記事の執筆・監修経験を持つ。温活・ダイエット・メンタルケア分野を得意とする。