1. ウイスキーの原料はモルトかグレーンかによって違う

実は、ウイスキーの原料はひと通りではない。ウイスキーは大きくモルトウイスキーとグレーンウイスキーに分けられ、それぞれ原料が異なるのだ。具体的に見ていこう。
・モルトウイスキー
モルトウイスキーには、主に大麦が使われる。中でも、二条大麦と呼ばれる品種を使うのが一般的だ。二条大麦はビールや麦焼酎などの原料としても使われる、酒造向けの品種だといえる。水を吸わせた大麦を発芽させ、麦芽を作る。とくに重要な成分は、麦芽に含まれるでんぷんと酵素だ。この麦芽を発酵させて蒸留し、ウイスキーを作る。また、麦芽の乾燥時にピートという泥炭で加熱するため、独特の香りが付くのも特徴だ。したがって、モルトウイスキーは一般的に個性の強い香りがする傾向にある。
・グレーンウイスキー
一方グレーンウイスキーでは、麦芽は脇役として加えられる程度だ。主な原料は、とうもろこしを中心とした穀類だ。穀類もでんぷんを含むが、基本的に酵素を持たない。そのため麦芽を少量加え、麦芽の酵素を使って発酵させることになる。グレーンウイスキーは、モルトウイスキーと比べると香りが控えめな傾向にある。だからといって味気ないわけではなく、料理などとも合わせやすいことが多い。
2. ウイスキーは複数の種類をブレンドして作られることも多い

ウイスキーは、モルトのみ、あるいはグレーンのみで作られているとは限らない。銘柄によっては、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて作られている場合がある。むしろそちらのほうが多数だろう。複数のウイスキーを混ぜて作られたウイスキーはブレンデッドウイスキーと呼ばれる。しかし、ブレンデッドだからといって価値が低いわけではない。混ぜるウイスキーの種類や割合は、少し違うだけでも仕上がりの風味が大きく変わってしまう。また、配合は個々のウイスキーの出来などによっても変わりうる。したがって、それぞれのブランドの味を安定して出せるよう、専門のブレンダーが注意深く調合しているのだ。したがってブレンデッドウイスキーには、ブランドの味を実現するための職人技が使われているといえる。ブレンデッドウイスキーを飲む際には、調合の技や労力を想像してみても面白いかもしれない。
3. ビールを蒸留すればウイスキーになる、というわけでもない

モルトウイスキーの原料は二条大麦だと先述した。二条大麦はビールの原料でもある。では、ビールを蒸留すればウイスキーと似たような酒を作れるのだろうか。答えはNoだ。最大の理由は、ウイスキーの造り方にある。ウイスキーは発酵した麦芽を蒸留したあと、樽に詰めて熟成する。モルトかグレーンかによって使う樽の状態は異なるものの、樽詰め自体は共通している。この熟成は何年もかけて行うもので、熟成によってウイスキー独特の風味や色が付くのだ。また、同じ銘柄でも熟成の年数によってランクが変わってくる。このように、ウイスキーに熟成は欠かせない。したがって、単にビールを蒸留したからといってウイスキーを再現するのは不可能だ。個人で年単位の熟成をするのは現実的でない。また、蒸留したビールはあまり美味しいものでもない。ビールが余ったからといって蒸留するのはおすすめしない。やるにしても、あくまで実験程度に考えておこう。
結論
ウイスキーの原料はひと通りではなく、大まかにはモルトかグレーンかによって異なる。また、ウイスキーは複数の種類をブレンドして作られることが多いため、両者を銘柄単位で区別するのも難しい。しかしブレンドは職人が注意深く行っており、決して価値が低いわけではないのだ。銘柄ごとの風味の違いなどを存分に楽しみたい。
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