1. 当たり年のワインってどういう意味?

ワインの当たり年・外れ年とは、そのワインを作るブドウの出来がよかった年かどうかで決められる。加えて、良いブドウかどうか=熟成に耐えうるワインかどうかを暗に示してもいる。ほかのお酒と違って原料のブドウがダイレクトにお酒になり、熟成による変化が楽しみの1つであるワインならではの用語だ。その収穫年が当たり年と呼ばれるためには主に2つの条件が必要になる。
当たり年の条件1・十分な日照量がある
ワイン用ブドウに限らず全ての農作物にいえることで、天気が良く十分な日照時間があった年は質の高いものが収穫できる。反対に雨や曇りの日が多かった年はブドウの糖度がしっかり上がらず、生産量そのものも落ちてしまう。チリのワインが安価でも美味しいといわれる秘密の1つは、安定して天気がよく降雨量もフランスの約半分とブドウ生育にとても適しているためだ。
当たり年の条件2・収穫期に雨が降りすぎない
恵みの雨もタイミングとその量によってはブドウ生産者を泣かせる要素になる。果実が実ってから降る雨はブドウの味を水っぽくしてしまったり、完熟を遅らせたりしてしまうのだ。湿度が上がると病気のリスクも上がるため、生産者達は天気予報を常にチェックしながら収穫期を見定めている。
2. ワインの当たり年を知りたい時は

そのワインが当たり年のものかどうかを知るには、ヴィンテージチャートを見て確認するのが一番簡単な方法だ。大手インポーターやワイン評価誌などはサイトで独自のヴィンテージチャートを載せていることが多い。例えば「イタリア 赤ワイン ヴィンテージ」などで検索するとヒットし、過去数十年分のチャートが確認できる。
ヴィンテージチャートから調べた当たり年の例・イタリア編
20州全てでワインを造るワイン大国イタリア。ここでは知名度の高い産地を2つ挙げよう。1つはイタリアワインの王バローロなどを造る北部の産地・ピエモンテ州。ここ10年ほどのチャートを見ると2016年と2010年が大変秀逸な年として挙げられている。もう1つ、スーパートスカーナと言われるモダンなスタイルの赤で注目を集めるトスカーナ。エリアとしてはピエモンテから離れているがこちらも2016年と2010年の評価が大変高い。南北に長いイタリアだが、過去10年を見る限りではよい年・難しかった年は国全体で似通っている。
ヴィンテージチャートから調べた当たり年の例・チリ編
日本でうなぎ上りに人気が出ているチリワインでは2015年、2013年が特によい年とされている。チリは他国に比べて大きく評価が下がる年が少ないのが特徴的だ。またチリに限らず南アフリカ、アルゼンチンなどワイン新興国では15年以上前のデータ(ワイン自体もだが)が手に入りづらいのもイタリアやフランスなどとの違いといえる。
3. 当たり年のワインを飲むときはここがポイント

冒頭にも書いたが、当たり年かどうかを気にする理由の大部分は「そのワインが長期熟成できるワインかどうか」という点だ。なので大前提として、早飲み用の安価なワインは当たり年かどうかを意識する必要はない。ここでは熟成向き・熟成された当たり年のワインをベストなコンディションで飲むためのポイントを紹介する。
まずは当たり年ワインを入手・ワインショップでの購入がおすすめ
今ではワインを買える通販サイトが山のようにあり、飲み頃の当たり年ワインを買うことは容易だ。しかしワイン初心者であればワインショップや百貨店にあるワイン売り場のプロにアドバイスを求めるのをオススメする。当たり年というのはあくまで指標のひとつであり、実際は造り手による違いも大きい。また自分好みのワインをいくつか伝えることで好みにあったスタイルを提案してもらうのもよいだろう。
ワインを静置して1週間ほど休ませる
当たり年の熟成ワインを買ってきたその日にすぐ開けるというのは厳禁だ。とくに熟成の進んだ赤ワインの場合はオリが舞ってしまうと味わいにネガティブな影響がでる。オリがないワインであってもたくさん動かされた直後のワインにはストレスがかかり、味が荒れてしまう。少なくとも開ける1週間前にはワインを立てた状態で静かに休ませよう。古いワインになればなるほどワインもデリケートになるので、休ませる時間を長くとるとよい。
必要であればグラスサイズを変えたりデキャンタする
開栓後少量を試して、若いなと感じるようであれば空気に触れさせるためのデキャンタをしよう。とくに当たり年のワインで飲み頃を迎えていないものは味が開くのに時間がかかるためデキャンタが有効だ。オールドヴィンテージのワインで硬さを感じる場合はグラスを大ぶりのものに変えてゆっくり飲むのがおすすめだ。空気に触れている液面が広くなるだけでもワインはゆっくり開いていく。
4. 当たり年ではないワインはどうしたらいい?

当たり年という言葉の反対語として外れ年という言葉がある。ブドウとワインの生産者にとって難しい年だったことは間違いないが、飲み手にとっては当たり年ではないことによるメリットもある。
飲み頃が早いので今すぐ楽しめる
当たり年ワインは長期熟成に耐えうるポテンシャルがある。しかし裏を返せばある程度飲み頃を待たないとそれを発揮できなかったり、デキャンタしないと飲みづらい硬さを感じる場合がある。これは逆に、当たり年ではないワインの場合は飲み頃のピークを早く迎える。専門店に行くと、当たり年ワインを選ぶならこれが良いが、今飲むならこっちが美味しいだろう...と平凡な年のワインを提案されるといったケースは多々ある。
価格が安い傾向がある
よいヴィンテージのワインはもちろん買い手がつきやすく価格が高騰しがちだ。逆にそうではない年のワインは当たり年のものより安く手に入りやすい。あえてよい生産者の平凡な年のワインを選ぶのも面白い。
結論
当たり年かどうかといったブドウの収穫年による違いは、ワインの世界をより楽しいものにしてくれる。よい年のものは飲み方や飲み頃を気をつけることでそのヴィンテージの素晴らしさをより深く味わうことができる。一方で当たり年でないといわれるワインも、飲んでみると意外に自分好みのことがある。ヴィンテージを意識することで、自分好みの熟成具合など新しい発見を楽しんでみてほしい。