目次
1. 老酒とは?

「老酒(ろうしゅ/ラオチュウ)」とはどのようなお酒なのだろうか?中国でポピュラーだが紹興酒との違いがわからないという方もいるだろう。まずは老酒というお酒について解説する。
老酒とは長期熟成させた_酒のこと
老酒は、中国酒の中でも醸造酒にあたる「黄酒(ホアンチュウ)」のひとつで、その黄酒を3年以上熟成させたものを老酒と呼ぶ。なお中国酒にはほかに、蒸留酒にあたる「白酒(パイチュウ)」と、果実酒にあたる「果酒(カシュ)」がある。
老酒のアルコール度数
中国酒というと一般的にアルコール度数が高いが、老酒はその中でいうとアルコール度数が低めである。14〜18度程度のものが多く、ビールなどよりは高いが焼酎よりは低めなので比較的飲みやすい。
老酒の味わい
長い熟成期間を経た老酒は、琥珀色をしていて香りが強いのが特徴だ。味わいも熟成によって甘くてまろやかな、丸みのある味わいに仕上がる。
ラベルの「陳○年」の意味は?
中国酒のボトルに「陳5年」などと書かれたラベルが貼られていることがある。これは「5年熟成させた」といった意味になる。熟成期間が長いほど価値が高いとされるため、購入する際はラベルを見てみるとよいだろう。
中国では嫁入り道具のひとつだった?
中国では娘が生まれると老酒を仕込み、陶器の入れ物に入れて庭などに埋めておいた。その娘が嫁に行くとき、嫁入り道具のひとつとして持たせるという慣習があったとされている。
2. 老酒と紹興酒の違い

中国酒といえば紹興酒(ショウコウシュ)を思い浮かべる方も多いはずだ。日本でも有名なお酒だが、老酒とはどのような違いがあるのだろうか?
紹興酒は浙江省紹興市で醸される黄酒
老酒も紹興酒も酒という意味では同じだが、浙江省紹興市で作られる黄酒のみを紹興酒と呼ぶ。仕込む際にさまざまな薬草を使い、名水と呼ばれる湖の清水を使用するのが紹興酒の特徴だ。漢方薬としても扱われることも多い。
老酒とも紹興酒ともいえるお酒がある
黄酒を3年以上熟成させたものが老酒、ということは黄酒を3年以上熟成させた、浙江省紹興市で作られる紹興酒もまた老酒なのである。
紹興酒の歴史
中国酒は黄河文明の頃にはすでに存在していたとされており、当時の遺跡からは醸造に使っていたであろう青銅器なども出土している。黄河文明の時代から長い歴史を持つ中国酒だが、その中でも紹興酒は古くから有名なお酒であったようだ。
「臥薪嘗胆」の四字熟語で有名な『呂氏春秋』という歴史書には長江にお酒を投げ入れたという描写があるが、春秋・戦国時代のそれが紹興酒だともいわれている。そのため紹興酒は老酒の中でも王様と呼ぶにふさわしい存在なのである。
3. 老酒の美味しい飲み方

老酒を美味しく飲むための方法も紹介しておこう。
そのまま飲む(常温またはぬる燗)
日本では老酒を冷やしたり氷を入れたりして飲むことも多いが、中国では常温かぬる燗で飲むことが多い。老酒の風味を味わうためだ。温度が低いほど老酒の風味が薄れる。逆をいえば、老酒の風味が苦手なら冷やしたり氷を入れたりすると飲みやすいかもしれない。
また熟成が進むほど味も濃くなる。浅いものは常温で飲んだほうが風味を感じやすく、熟成が進んだものは冷やしても風味が薄まりにくい。
割って飲んでも美味しい
干し梅を入れて飲む方法は有名だが、ほかにもスライスした生しょうがやレモンスライスを浮かべて飲む方法も中国で人気である。割り材にウーロン茶をはじめとする中国茶やビールを使うこともある。
ちなみに老酒を炭酸水で割ると「ドラゴンハイボール」と呼ばれるカクテルになり、シークヮーサーなどの柑橘類の果汁を入れても楽しむことができる。
老酒に氷砂糖を入れるのはマナー違反?
日本では老酒、とくに紹興酒に角砂糖を大量に入れて飲む方法が広まっている。これは、日本に中国酒が輸入された明治時代の保存技術や運搬が関係している。保存方法や運搬方法が未発達だったため、輸入途中の劣化が著しく風味が失われることが多かった。
また中国酒は当時の日本人にとってクセが強いお酒だったようで、砂糖はそれを軽減するために入れられていたとされている。保存技術や運搬技術が発達した現代では、輸入の際に風味が落ちることは少なくなった。
老酒をはじめとする醸造酒には本来の甘みが備わっているので、氷砂糖を入れるのはマナー違反ではないが、ぜひ砂糖を入れずに風味を味わいながら飲んでみていただきたい。
4. 紹興酒の美味しい飲み方

せっかくなので、紹興酒の飲み方についても触れておきたい。
ストレートでもカクテルにしても美味しく飲める
常温またはぬる燗でそのまま(ストレートで)飲む方法が一般的だろう。その高い香りと深い味をダイレクトに楽しめる。ほかにも、砂糖漬けの梅干しを入れて飲んだり、レモンを入れて辛さを抑えたりするといった飲み方もある。
カクテルにするなら、烏龍茶で割った「ドラゴンウォーター」や、カシスソーダで割ってカットレモンを加えた「チャイナカシス」、ソーダで割った「上海ハイボール」などがおすすめだ。
5. 老酒と紹興酒、ぜひ飲み比べてみては?

紹興酒以外の老酒と紹興酒の違いは醸造場所と使用する原料(主に水)である。同じ黄酒ではあり老酒に分類される紹興酒もあるなどややこしいが、ぜひ機会があれば一般的な老酒と紹興酒を飲み比べてみてはいかがだろうか?違いを楽しむなら常温のストレートがおすすめだ。
結論
「老酒」とは、中国酒のひとつである醸造酒「黄酒」を熟成させたものである。その老酒の中でも、特定の地域で作られたものが「紹興酒」だ。老酒にはさまざまな飲み方があるが、まずは本来の風味を楽しむため常温かぬる燗でそのまま飲んでみよう。