1. トラピストビールとは

はじめに、トラピストビールとは一体どのようなビールなのか、また一般的なビールと何が違うのかという点について知っていこう。トラピストビールには特別な定義が存在するが、大きく種類分けするとエールビールに分類される。ここではエールビールについての解説も含め、トラピストビールについて詳しく解説する。
エールビールとは?
ビール党の人ならエールビールと聞いてピンとくるかもしれないが、日本で流通しているビールは、その大半がラガービールである。エールビールとラガービールの大きな違いは発酵方法であり、エールビールは「上面発酵」で造られるが、ラガービールは「下面発酵」で造られる。発酵温度が高い上面発酵は伝統的なビールの製法であり、大量生産には向いていないもののビール本来の個性的な味わいが楽しめる。対して下面発酵は発酵温度が低いため雑菌が繁殖しにくく、一定の品質を保って大量生産が可能となっているのだ。テレビコマーシャルでも映し出されるように、日本でのビールのイメージは「のどごし」が重視されているが、エールビールは「味わい」を重視したビールと覚えておけばわかりやすい。
トラピストビールの定義がすごい!
トラピストビールとは、ベルギーで誕生したビールである。ベルギーは古くからビールの製造が盛んな国であり、ベルギービールというブランドとして世界中のビールファンから愛飲されている。では、トラピストビールとはどのような種類なのかということだが、トラピストビールは、なんと修道院で造られるビールなのだ。歴史は深く、11世紀頃には造られていたという。しかしただそれだけではなく、驚くべきはその定義である。トラピストビールを名乗るための定義とは、まず修道院の敷地内で醸造していること、次にトラピスト会修道院の修道士自らが醸造、もしくは醸造の監督をしていること、そして営利目的ではなく、利益は修道院の運営に使い、余った分は慈善団体に寄付すること、以上の3つである。一般的なビール造りとはかけ離れた定義が存在することも、トラピストビールの特徴だ。
アビイビールとの違いとは?
アビイビールは、トラピストビールと同じく「修道院ビール」の一種ではあるが、実は似て非なるものである。アビイビールとは、民間の醸造所が修道院伝統の製法を用いて造るビールのことを指す。同じ種類であっても、混同してしまわないよう注意しておこう。
トラピストビールの味わい
トラピストビールの味わいは濃厚で、酸味が強めであることが特徴だ。この理由とは、二次発酵である。トラピストビールは、瓶の中でも発酵熟成が続いているビールなのだ。アルコール度数は平均的に高めで、9度から11度あたりとなっている。
2. トラピストビールのブランドと種類

ここではトラピストビールのブランドと種類をいくつか紹介する。通販をはじめ、さまざまなトラピストビールが日本でも購入可能なので、いろいろと試してお気に入りの味を見つけてみてはいかがだろうか。
シメイ
シメイはスクールモン修道院で製造されているトラピストビールのブランドだ。トラピストビールの中でもとくに名の知れたブランドなので、目にしたことがあるという人もいるかもしれない。シメイの最高峰とも称される濃厚なコクが特徴の「シメイ・ブルー」をはじめ、シメイの中で最も歴史が深い「シメイ・レッド」、ホップの使用量を数倍に増やして苦みとキレをプラスした「シメイ・ホワイト」などが販売されている。
ウェストマール
ウェストマールはウェストマール修道院で製造されているトラピストビールのブランドだ。トラピストビールの生産量では1位を誇る。原料の酵母には、幻のトラピストビールといわれる「ウェストフレテレン」と同じものが使用されていることが特徴だ。麦芽の香りと甘みが活きた「ウェストマール・ダブル」と、苦みと甘みのバランスよさで世界中のビール通を唸らせる「ウェストマール・トリプル」が販売されている。
オルヴァル
オルヴァルはオルヴァル修道院で製造されているトラピストビールのブランドだ。一般的にほかの修道院では、ひとつのブランドで数種類のトラピストビールを販売しているが、このオルヴァルは一種類のトラピストビールしか製造、販売をしていない。商品名は「オルヴァル」で、豊かなホップの香りと強めの苦みがある味わいが特徴だ。
3. トラピストビールの美味しい飲み方

最後に、トラピストビールの美味しい飲み方を紹介しよう。キリッと冷やしたビールののどごしを楽しむのは、日本でのビールの楽しみ方の定番だが、トラピストビールの楽しみ方は異なる。いつもとは違ったスタイルで、じっくりとトラピストビールを味わってみよう。
トラピストビールの飲み方
トラピストビールの美味しい飲み方の基本は、冷やし過ぎないこと。トラピストビールはのどごしを楽しむビールではなく、その濃厚な味わいをじっくりと楽しむビールである。冷蔵庫から出して、15分ほど常温で置いたくらいがトラピストビールの飲み頃。一気に飲み干さず、少しずつゆっくりと味わいながら楽しもう。
グラスにもこだわってみよう
せっかくトラピストビールを楽しむのなら、グラス選びにもこだわってみよう。ビールの種類によって専用のグラスがあることも、ベルギービールの特徴のひとつである。トラピストビールにふさわしいグラスは、聖杯型のグラスだ。キリスト教の神聖な杯である聖杯を模したグラスは、修道院で造られるトラピストビールにぴったりである。ぜひ本場の雰囲気も一緒に、トラピストビールを味わってみてほしい。
結論
トラピストビールには深い歴史があり、トラピストビールならではの製法で造られているということを、わかってもらえただろう。日頃からよくビールを飲むという人は、ぜひトラピストビールもビール選びの選択肢に加えてみてはいかがだろうか。日本のビールにはない味わいを、じっくりと楽しんでみよう。